生活の陽

功琉偉つばさ @WGS所属

生活の陽

ピピピッ ピピピッ


 目覚まし時計の無機質なアラーム音が静かな部屋に残酷にも鳴り響く。


ピピピッ ピピピッ


 朝がやってきた。そう私に言い聞かせてくる。


ピピピッ ピピピッ


 今日も新しい?一日が始まってしまう。私は眠くてだるい体を無理矢理にも起こそうとする。でも、まだ無理だ。スマホを探すために少し目を開けるとあさが来たという証拠を提示するように太陽の光が目に入ってきた。


「あと3分だけ…」


 アラームをスヌーズしてもう一回毛布を頭からかぶる。目に太陽の光が入ってしまわないようにしっかりとかぶる。


「もう少しだけ…もう少し…」


 と思っていても、学校に遅れてしまわないかと無意識にも少し焦ってしまう。そう思っているうちに


ピピピッ ピピピッ


 とまた無慈悲にも無機質な電子音が聞こえてくる。私はすぐにアラームを停止した。そして観念して体を起こした。そしてため息を付きながら思いっきり伸びる。カーテンを開けて陽の光を浴びる。どうやら今日も一日が始まってしまっているらしい。


 目にも耳にも障る目覚まし時計と化してしまったスマホで時間を確認する。少し乾いた目に画面の光が少ししみる。今は6時35分。大丈夫、まだしっかりと学校に間に合う。


 ベッドから目をこすりながら寝ていたいと言う体にムチを打って降りていく。そして『さっさと覚醒しろ』と言わんばかりの冷たい水で顔を洗う。タオルで顔を拭きながら前を見ると太陽の光が目に入ってくる。


 顔を洗うといくらか体が言うことを聞いてくれるようになり、朝ご飯を食べるためにリビングへと向かう。


「おはよう」


「おはよう」


 お母さんがもう起きて朝ご飯を作っていてくれていた。カーテンがすっかり開けられたリビングはとても明るかった。


 最初にお茶を一口飲んでからパンを食べる。それが毎朝のルーティーンとなっていた。朝の乾いた口でそのままパンを食べると喉が痛くなってしまう。


 リズムよくパンを食べ進め、食べ終わるとすぐに荷物の確認をする。課題や単語帳、端末などがしっかりカバンに入っているかを確認する。教科書は学校のロッカーに置き勉しているから大丈夫だ。こんなときにもレースのカーテンをすり抜けて入ってくる太陽の陽が眩しい。


 制服をしっかりと着て、カバンと定期券、そしてスマホとイアホンを持って今日も家を出る。


「行ってきます!」


 外に出てみると朝起きたときのだるい学校に行きたくない感じはほぼなくなっていて、新しい一日を体が歓迎しているようだ。


 電車に乗っていつも通り学校に行く。毎日同じなので特に話すことはない。同じサラリーマンに、同じおじいさんおばあさん。同じ制服を着た高校生…いつも同じ電車なのだけど全く話さない。そんな感じでいつも同じ時間に学校に着く。


 学校に着くと、


「おはよう」


から、朝の友達との会話が始まる。昨日のドラマの話や、今日の課題、今日の授業の体育が嫌な話をする。


 今日の1時間目は例の嫌な体育だ。まだ9時だと言うのに、太陽は高く昇っていて日差しがジリジリと痛い、暑い。それに今日の種目は長距離走、一年で一番憂鬱なひだ。こんな暑い中でしかも長距離を走るなんて信じられない。ここでの太陽は嫌な太陽。


 体育が終わって3時間のつまらない授業が終わって、昼休み。友達とお弁当を食べながら話に花を咲かせる。


「ねえねえ あのね〜」


賑やかな笑い声が響く。周りのみんなもそう、この時間が私が学校に来る意味。


 昼休みが終わるとまた憂鬱な授業。私の席は窓側なので、太陽の陽があったかくて眠くなってくる。ここでの太陽も嫌な太陽。ボカボカボカボカ…


 やっと学校が終わるとみんなで学校の帰りに甘いものを食べる。


「私このケーキ食べてみたかったんだ〜」


「え〜どうしよう。迷う〜」


「私これとこれとこれ!」


「そんなに食べたら太るよ〜」


「帰りは自転車だから大丈夫!」


そんな事を話しながら仲良く過ごす。そうだ、この時間も私が学校に来る意味。


 帰り道、少しずつ暗くなってきて、赤くなった夕日がとても綺麗。


「バイバイ」


「またね」


そう言い合いながら家に帰る。


電車〜の窓から〜みえる〜赤い屋根〜は…


そんな歌を思い出しながら電車に乗って真っ赤な空を眺めていく。


「ただいま」


「おかえり」


家に帰っていやいや学校の課題をやって、美味しいご飯を食べて、そしてあったかいお風呂に入って、そして寝る。


 夜は太陽もお休み。布団に入ると幸福な気分になる。また明日。起きるのはやっぱり辛いかも知れないけれど私達は太陽と一緒に生きている。生活の陽。


「あ〜あ、明日はどんな日になるかな〜」

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