第5話 父親とのバッティング練習
幼稚園でのバッティング遊びがきっかけで、篠崎雄大はますます野球に夢中になっていた。父親と話したその日の夜から、彼は「もっと上手くなりたい」という強い思いを抱き続けていた。そして、ついに父親とのバッティング練習が始まる日がやってきた。
週末の朝、雄大は目を輝かせて早起きした。朝ごはんをさっさと済ませると、父親が外で待っているのを確認し、小さなグローブとバットを持って駆け出した。
「今日は本格的にやるぞ、雄大!」
父親は笑顔で息子を迎え、簡易的なティーバッティングセットを用意していた。それは、ボールをスタンドに乗せ、自分で打つ練習ができる道具だった。まだ幼い雄大には、動くボールを打つのは難しいので、この方法で基本的なフォームを身に付けることが狙いだった。
「まずは、このボールをしっかりと打ってみよう。無理に力を入れなくてもいいから、フォームを意識してね。」
父親の言葉に従い、雄大はバットをしっかりと握りしめた。彼の体はまだ小さいが、その目には真剣な光が宿っていた。息を整え、ボールに集中する。
「いくぞ…」
雄大はバットを振り下ろし、ボールに当てる。しかし、最初の一打はうまくいかず、ボールは力なくスタンドから転がり落ちただけだった。
「うーん…難しいな…」
雄大は少し悔しそうにしながらも、すぐに気持ちを切り替えた。父親は優しく彼の肩に手を置き、アドバイスを続けた。
「焦らなくていい。バットをもっと引いて、体全体で打つように心がけてみよう。」
そのアドバイスを受けて、雄大はもう一度構え直した。今度はバットを少し後ろに引き、体全体を使うことを意識して振り下ろす。ボールがバットに当たると、乾いた音が響き、ボールが勢いよく前に飛んだ。
「やった!」
雄大の顔には大きな笑顔が広がった。初めてボールをしっかりと打ち返せた瞬間だった。父親もその様子を見て満足そうに頷いた。
「そうだ、その調子だよ。これを繰り返して、どんどん上手くなろう。」
その日から、雄大と父親は毎週末、バッティングの練習を続けるようになった。まだまだ未熟なフォームでありながらも、雄大は少しずつ力をつけ、ボールを遠くへ飛ばせるようになっていった。彼の中にある「もっと上手くなりたい」という強い意志が、彼の成長を後押ししていた。
毎回の練習が終わる度に、雄大は「次はもっと上手く打てる」と心に誓い、新たな挑戦に胸を膨らませた。まだまだ道のりは長いが、雄大は一歩一歩確実に進んでいた。
夜、ベッドに入ると、雄大はその日打ち返したボールの感触を思い出しながら、満足感に包まれて眠りについた。夢の中でも彼はバットを振り続け、少しずつプロ野球選手への道を歩んでいく自分を描いていた。
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