5つの問い

真実の書

Mは、古びた書店の奥にひっそりと置かれた「真実の書」を見つけた。

その表紙には金箔で「どんな問いにも明確な答えを出せる」と書かれている。

興奮したMは、書店主からその本を買い取り、家に持ち帰った。

最初にMが尋ねたのは簡単な質問だった。

「今日の天気はどうなるか？」書を開くと、そこには「晴れ」と記されており、実際に青空が広がっていた。

次に、Mは「明日の株価はどうなるか？」と尋ねると、書は具体的な数値を答え、彼はその通りに利益を得た。

書の答えは、何もかもが正確で、彼の生活は次第に順調になっていった。

日が経つにつれて、Mは次第に難解な質問をするようになった。

「私の人生の目的は何か？」と書に尋ねると、書は「それは自分で見つけるべきだ」と返答した。

Mはその答えに困惑しながらも、書の言葉に従うことを続けた。

しかし、書の答えは常に明確であっても、その内容には疑問が生まれるようになった。

ある日、Mは「私が成功するためには何をすればいいのか？」と尋ねた。

書は詳細な計画を提供したが、その指示が現実とはかけ離れていることに気づいた。Mはその計画を試みたが、失敗を重ねるばかりだった。

彼は次第に、書の答えが必ずしも実行可能ではないことに気づくようになった。

その後、Mは書に「私が幸福になるためには何をすればいいのか？」と問いかけた。書は「自分の心を探ることだ」と答えた。

Mはこれまでの答えがすべて明確だったのに対し、この答えは新たな探求を促すものであった。彼はその言葉を胸に、自らの内面を見つめることを決意した。

最終的に、Mは「真実の書」を閉じ、自己探求の旅に出た。

書の明確な答えが、彼自身の成長を促す鍵となったことを理解した。

問いに対する答えが絶対的であっても、その答えをどう受け入れ、実践するかが重要であると学んだのだ。

真実の書が示す答えが、必ずしも人生のすべての答えではないということに気づいたMは、自分自身の価値を見つけるための旅を始めるのだった。