第5話fragile
彼女は、いつになく落ち込んでいた。話しかけても、うんともすんとも言わず、ただ、遠くを眺めては、ブリーチされたその長い髪を、大きくかき上げて、また下を向いた。 きょうは、この辺にして帰ろう 今となっては、ずっと一緒に居てあげればよかったのに と思う。土曜日の朝、僕は彼女の家に向かった車の中では、大好きだったバンド、ニルバーナの、スメルズライクアティーンスピリット が流れていた。パトカーが2台彼女のマンションの前に、止まっていた。僕は、近くにあるコインパーキングへ車を止め、歩いて彼女の部屋までいった。そこには、青色の服に、黄色の文字でpoliceと書かれていた、鑑識の姿があった。どうしたんですか?ここ僕の彼女の部屋なんですけど 君、落ち込まないでくれよ、彼女は死んで、もうここには居ないよ! えっ! 僕は、びっくりしてそう言った。と同時に体全体が震えて来た。殺されたんですか? 違うよ、自殺だよ、テーブルに薬物が置かれていたよ、多分バットトリップしたんじゃないかなぁ そんな 僕は、心の中でそう呟いた。1人の警官が、お前もやってんじゃないだろうな?と言って来たので、やってませんよ と嘘を言った。君は彼女の友人か?と、訪ねられたので、 一応、彼氏です と、答えた。なら知ってたんだね、君もやってるんじゃないの? もう1週ぐらい薬物の方はやってない。 君ちょっと署まで来てくれないかね、彼女の事にくわしいだろうからね そう言われると、僕は、黙って頷いた警察署に着くと、早速、尿検査がはじまったこれが、この色になると、陽性、この色だと陰性 5秒間、警察と、僕3人が、その、リトマス試験紙みたいな物に注目した。陰性だ。取り敢えず陰性だ。 さて、このところ彼女は、どうだったか聞かせもらおう。 ハイ と、小さな声で、そして、その後、咳ばらいを小さく2回した。たしかに、元気がなかったけど、まさか自殺なんてねぇ と僕は声をハッキリさせて警察に、言った。 そうか、でも何か言ってなかったか、例えばもう生きるのが嫌になったとか イヤ、そんな事は、一言も言ってなかったですよ、ただ落ち込んでいる様な感じは、しましたけどね そうか、元気がなかったんだな ハイ 僕はハッキリとした口調で警察に答えた。午後2時、僕は、警察署を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます