ステータスオープンあるいは鑑定
トラブルシューターになる決意を告げた後、様々な手続きを受けた。
自己申告で異能や特性と特技、技能を述べる。
簡単に並べるなら
異能:美貌と魅力。実は度を越した美しさで人に恐怖をもたらすこともできる。本人も知らない使い方もわからない異能が他にある可能性がある。
特性:美少女性を損なう可能性のあるあらゆる事に対する耐性、他にそう望んでおけば虫を踏んでも踏み潰さず草を踏んでも損なわないですむ、虫も殺さない特性、真空中でもなぜか声が響いたりする如何なる状況下でもコミュニケーションに不自由しない特性、暗闇で光を帯びる特性、痛みにちょっと強いかもしれないけど試したいとは思わない。
特技:記憶力と暗算能力。
技能:図書館学の知識と大学職員の職務経験。
となった。
今のところ『これがわたしにできそうなこと』のひととおりである。
最初は、『本人も知らない使い方もわからない異能や特性が他にある可能性がある』というのは中二病患者とか誇大妄想とか思われそうなので黙っているつもりだったのだが、到達不能地球の出身者は強大な異能や特性を持っているものだそうなので納得してもらえるだろうと申告した。
実際これを聞いたラプチャーさんの言は「時夢さんが到達不能地球の出身なら大いに有り得ることです」というものだったし。
履歴書なんてものは、詐称にならない限りで盛れるだけ盛るものなのである。
耐性等は、わたしが本当にあるかどうか怖いので確かめたくはないと言うと、異能が他にもあるかも知れない可能性と一緒に安全に確かめる方法があるとのことだった。
どのようなものかと聞くと、この都市の住人にはゲームよろしく生き物に実際に『レベル』や『能力値』や『ステータス』がある世界の出身者もいるらしい。
ちなみにゲームにおいて『レベル』とはキャラクターの総合的な有能さを概ね示す数字やランクでありもちろん高いほどよい。
『能力値』とはゲームのキャラクターの基本的な能力をいくつかに分けて、それぞれに優劣を数字やランクで示したものでありこれもまた高いほどよい。
『ステータス』は『レベル』や『能力値』の他、『今までになし得た功罪』『備えた技術』『特性特質』等を言語化したものも含むそれら全てといったところである。
これらの要素が現実のものである世界は、そうでない世界の出身者にとってはゲームじみて非常に不自然なようだが、今確認されているところでは全て世界や人間を創造した神が実在し、かくあれかしと世界にそのような法則を定め、人をその様に創造したそうである。
そしてそのような世界には往々にして『ステータス』を読み取る『鑑定』と総称される能力が存在したりで自分のステータスなら知ることができたりする。
自分で自分のステータスを知ることは『ステータスオープン』とも呼ばれる。
『鑑定』の原理は世界によってさまざまだそうだ。
世界によっては、宇宙に地球のオカルト思想で言われているアカシック・レコード…宇宙の開闢から終焉まで全ての情報が蓄えられた記録庫…が実在しており、それに接続して情報を得る。
また別な世界においては『鑑定』は神と接触して得られる神託の一種である。
さらに別な宇宙では相手の魂というべき何かから情報を汲み取る。
異なる多元宇宙の法則下では原理上本来使えないアカシック・レコードや神に起因する場合も『究極の答えの力』が足りていればそれを代替して、『ステータス』が実在しない宇宙の出身者相手にも能力を使いある程度の情報を得られるのだ。
ちなみに数字やランクはあまり当てにならないそうである。
レベル4と5の間に、大きな能力の差があるような法則の世界もあれば、レベル4と5などそんなに違わないと言える法則の世界もある。
レベル20が人間の限界と言われる世界があれば、また別の世界で人の限界と言われているのはレベル200だったりする。
ある世界の鑑定で筋力10と判定された人と別の世界の鑑定で筋力10と判定された人に力比べをさせるとどちらかが圧勝する。
数値が10と20を比べれば20は10の二倍程の力と言っていい世界がある。
別な世界では対数表記であり20は10の100倍程の力と考えねばならない世界もある。
世界によって数字の基準はバラバラなのだ。
筋力一つとっても腕の力が強かったり腹筋が強かったり下半身が強かったりといろいろな人間がいる。
知力なども、人間の頭の良さなどはいくつもの要素が複雑に絡み合ったものであり知力という一つの数字だけでは見えないものが多い。
地球で頭の良さの基準としてしられる知能指数も人間の知的能力のごく一部を数値化しているだけという説もある。
そもそも人間という複雑なものを、僅かな能力値で判別しようとするのが乱雑に過ぎるという身も蓋もない指摘もあるそうだ。
そのため数値を教えてもらうより鑑定能力者の主観でどんな感じかとふわっとした感覚を問うたほうが逆にわかりやすいそうなのだ。
もともとステータスが実在しない世界の出身者を鑑定すると数字が上手く出てこない場合も多いそうである。
閑話休題。
都市運営機構にも『鑑定』の能力を持った職員が複数在籍しているので使ってもらえばよいとのことだった。
すくなくとも申告の真偽を判別する程度には役立つとのこと。
後でそのための能力持ち…念の為数名に鑑定してもらったが、申告事項に特に間違いはなかった。
やはりわたしに潜在するらしい異能はどんなものか、どれくらい強いのか、どうすれば使えるのか鑑定でもわからなかったが、たぶんあるらしかった。
わたしの潜在異能以外の他の能力にたいするラプチャーさんの評価は
◯美貌と魅力・望めば恐怖も付与できる、は強力な異能。
◯各種耐性は、なかなか強力で、特異でしばしば抵抗不能だったり致命的するような能力を無効化したり、ほぼ不老不死だったりするが、普通にダメージを与えてくるような攻撃には防御力がなく再生と回復の早さと復活が可能なため死ななくても、適当に力で押さえつけて縛り上げるだけで簡単にわたしを無力化できるだろう。わたしのフィジカルの強さは見た目通りの7歳位の女の子のそれであるのだからして。
◯虫も殺さない特性は、今のところ役に立ちそうにない。
◯暗闇で光を帯びる特性も今のところ役に立たせる方法は思いつかない。
◯如何なる状況下でもコミュニケーションに不自由しない特性は、ユニークではあるが役立つ機会は少なそうである。
◯痛みに強いのは、直接ダメージを与えてくる攻撃への回避や防御力がなく、再生と回復と復活だよりのわたしにとって、時として必須となりうるので有用と思われる。
◯記憶力は新しいことを学ぶ際役に立つかも知れない。
◯演算力は、この都市にも電卓くらいはあるそうで、かくし芸くらいのお役立ち度かもしれない。ちなみに、電卓で思い出したが、この街にネットはまだないとのことだった。スタンドアロンのパソコンはあるので、技術が進歩すればいつかは先進的な世界にあるインターネットと同等な情報インフラがこの都市にも整備されるだろうとのこと。活字への欲求は図書館と書店で満たすしかなさそうだ。
◯図書館学の知識と大学職員の職務経験はとりあえずそんな機会に恵まれるまで忘れておく。
というものだった。
この能力申請も、わたしがどんなトラブルシューターチームに入るのかを決めるのに重要な参考資料となるのだ。
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