第2話 【すくった人魚のもどしかた】
「ただいま…………なんて言っても、返事が返ってくるはずないのにね」
案理は高校生ながら、諸般の事情から独りで暮らしていた。
建前上は『実家は学校に遠すぎるから』ということになっているが、実のところ、ミコトを連れ込むために両親を言いくるめたとかそうじゃないとか。
「……あ、そうだ。さっきの紙……。『すくった人魚のもどしかた』って書いてあったかしら。ちゃんと読んでおいたほうがいいわよね。あの口ぶりだと、私にはまだしなくてはいけないことがあるみたいだし…………」
レインが『なくさないように』と言ってきたくらいだ。重要事項が記されているに違いない。
(
ミコトと色違いにしたクリアファイルから、案理は問題の紙を取り出した。
「ええと、なになに…………?」
【すくった人魚のもどしかた】
1.浴槽に
(※初期設定から変更していない方は、そのままで問題ありません。湯量を少なめに変更している方は、最低でも湯量を初期設定かそれより多い量に設定し直してください。)
2.水を張り終えたら、すくったヨーヨーを浮かべて、2時間ほど待機してください。
3.2時間ほどが経過したら、忘れずに様子を見に行ってあげてください。驚きの光景があなたを迎えてくれるでしょう。
末永くお幸せに。
「特に難しいことはなさそう? こよりなんてないし、どこに売っているかもわからないから、どうしようかと思ったけれど、もう一度掬う必要はないのね。やっぱり水に浸すのが重要なのかしら」
案理は不可解きわまりない文言をなぞって、首を捻った。
「……最後の文章は、印刷ミスか何かよね……? だって、意味がわからないもの…………」
しかし、それ以上考えていても仕方ないと判断した彼女は、浴室へ急ぐのだった。左手には、もちろんヨーヨーを携えて。
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