義肢装具士:歩月志歩さん

◆希望の形を作る - 義肢装具士1年目の春


 朝日が差し込む窓から、柔らかな光が私の目を覚ます。時計は午前5時30分を指している。私、歩月あゆづき志歩しほは、義肢装具士として働き始めてまだ3ヶ月。毎日が新しい発見と挑戦の連続だ。


 ベッドから起き上がり、鏡の前に立つ。24歳の若々しい顔に、昨日遅くまで勉強していた疲れが少し残っている。髪をとかしながら、今日の予定を頭の中で整理する。


(今日は、初めて一人で患者さんの採寸(*1)をさせていただく日。緊張するけど、精一杯頑張らなきゃ)


 化粧は控えめに、でも清潔感のある印象になるよう心がける。白衣に着替えながら、ふと胸元の「義肢装具士」の資格証が目に入る。この小さなカードが、私の新しい人生の始まりを象徴しているようだ。


 クリニックに向かう電車の中で、スマートフォンで解剖学の復習をする。人体の構造を深く理解することが、よりよい義肢装具(*2)を作る基礎になるのだ。


 クリニックに到着すると、先輩の田中さんがすでに準備を始めていた。


「おはようございます、田中さん」


「ああ、志歩ちゃん。今日は大切な日だね。緊張しないで」


 田中さんの優しい言葉に、少し安心する。


 まず、今日の患者さんのカルテを確認することから始める。右足を切断された60代の男性。どんな思いで来院されるのだろうか。その気持ちを少しでも理解したいと思う。


 午前中は、採寸の準備と練習に没頭する。メジャーの扱い方、患者さんへの声かけ、適切な圧の加え方……全てが重要だ。


「志歩ちゃん、その測り方だと少し痛いかもしれないよ。もう少し優しくね」


 ベテランの山田さんが、アドバイスをくれる。


「はい、わかりました! ありがとうございます」


 緊張しながらも、丁寧に練習を重ねる。


 昼食時、同期の佐藤くんが話しかけてきた。


「志歩さん、慣れてきました? この仕事、奥が深いですよね」


「うん、毎日が勉強だよ。でも、患者さんの笑顔を見ると、頑張れるんだ」


 佐藤くんと話しているうちに、ふと気づく。この業界、まだまだ男性が多い。私のような女性義肢装具士は珍しい存在だ。


(でも、だからこそチャンスもあるはず。女性ならではの細やかさや共感力で、患者さんに寄り添えるかもしれない)


 午後からは、いよいよ実際の患者さんの採寸だ。緊張で手が少し震える。


「歩月さん、よろしくお願いします」


 患者さんの穏やかな笑顔に、少し緊張がほぐれる。


「はい、精一杯頑張ります。少しでも痛かったり、不快に感じたりしたら、すぐにおっしゃってくださいね」


 一つ一つの動作に細心の注意を払いながら、採寸を進める。患者さんの表情や反応を見逃さないよう、常に気を配る。


 採寸が終わると、ほっとするのと同時に達成感が込み上げてくる。


「ありがとうございました。次回は採型(*3)になりますが、またよろしくお願いします」


 患者さんが帰られた後、田中さんが近づいてきた。


「志歩ちゃん、よくやったよ。患者さんの気持ちを考えながら作業できていたね」


 その言葉に、胸が熱くなる。


「ありがとうございます。まだまだ未熟ですが、これからも頑張ります」


 夕方、最後の記録作業を終えて帰途につく。電車の中で、ふと窓の外を見る。


(私も、あの患者さんのように、一歩一歩前に進んでいきたい)


 帰宅後、お風呂に浸かりながら今日一日を振り返る。指先に残る採寸の感触が、なぜか心地よい。


 明日への期待を胸に、早めに就寝する。夢の中で、たくさんの笑顔の患者さんたちに囲まれている自分がいた。


◆調和を生み出す技 - 義肢装具士5年目の秋


 紅葉の香りが漂う早朝、私は目覚めた。時計は午前5時45分を指している。窓の外では、色づき始めた葉が風に揺れている。私、歩月志歩は今年で義肢装具士5年目。少しずつだが、確実に技術を磨いてきた。


 起き上がり、鏡を見る。29歳になった顔には、少しだけ自信が宿っている。髪をまとめながら、今日の重要な仕事を思い出す。


(そうだ、今日はあの難しいケースの装具(*4)の適合チェック(*5)だったわ。5年間の集大成ともいえる仕事ね)


 化粧は自然な印象に、でも患者さんに安心感を与えられるよう心がける。白衣に袖を通しながら、ふと手を見る。繊細な作業の繰り返しで、指先は驚くほど敏感になっている。


 クリニックに向かう道すがら、紅葉した銀杏並木を眺める。


「自然の中にも、完璧な調和があるのね。私たちの仕事も同じかもしれない」


 そんなことを考えながら、足早に歩を進める。


 クリニックに到着すると、後輩の佐々木さんが緊張した面持ちで待っていた。


「おはようございます、先輩! 今日の適合チェック、私も同席させていただきます」


「おはよう、佐々木さん。緊張しないで。一緒に頑張りましょう」


 後輩に教えることで、自分の成長も実感できる。そう思いながら、準備を始める。


 まず、患者さんの来院前に、製作した装具の最終チェックをする。関節の動き、材質の柔軟性、重量バランス……一つ一つ丁寧に確認していく。


(この装具が、患者さんの新しい人生の一部になるのね)


 身が引き締まる思いで、作業に取り掛かる。


 患者さんが来院されると、優しく声をかける。


「お待たせしました。今日は装具の適合チェックです。少しでも違和感があれば、遠慮なくおっしゃってくださいね」


 緊張しながらも、自信を持って対応する。


 午前中は、装具の装着と調整に集中する。患者さんの動きを細かく観察し、微調整を重ねていく。


「先輩、患者さんの表情の変化まで見逃さないんですね。すごいです」


 佐々木さんが感心した様子で言う。


「そうね。装具は身体の一部になるものだから、わずかな違和感も見逃せないの。それに、言葉に出さない痛みや不安もあるからね」


 自分の経験を言葉にしながら、改めて仕事の重要性を実感する。


 昼食時、同僚の田中さん(今はチーフ)が話しかけてきた。


「志歩さん、最近の仕事ぶり、素晴らしいよ。特に患者さんとのコミュニケーション能力は、ベテランも舌を巻くほどだ」


「ありがとうございます。でも、まだまだ学ぶことはたくさんあります」


 謙遜しつつも、内心では誇らしい気持ちがある。女性ならではの共感力が、この仕事で活かせていると感じる。


 午後からは、患者さんの歩行訓練(*6)に付き添う。一歩一歩、慎重に見守りながら、必要に応じて調整を加えていく。


「歩月さん、この装具のおかげで、本当に歩きやすくなりました。ありがとうございます」


 患者さんの目に涙が光る。その言葉に、この仕事の意義を改めて感じる。


「こちらこそ、ありがとうございます。これからも一緒に頑張りましょうね」


 自信を持って答える自分に、少し驚く。5年前の自分には想像もできなかった姿だ。


 夕方、最後の記録作業を終える頃、院長先生が声をかけてくれた。


「志歩さん、素晴らしい仕事ぶりだ。君のような若手が育ってくれて、本当に嬉しい」


「ありがとうございます。これからもっと技術を磨いていきます」


 その言葉に、大きなやりがいと責任を感じる。


 帰り道、紅葉した公園を通りながら、ふと将来のことを考える。


(いつか、自分のクリニックを持ちたいな。そして、もっと多くの人に希望を届けたい)


 家に着くと、鏡の前で深呼吸をする。指先に残る装具の感触が、今日の充実感を思い出させる。


 お風呂に浸かりながら、ふと恋愛のことも頭をよぎる。


(仕事に打ち込むのも大切だけど、プライベートな幸せも大切にしていきたいな)


 明日への期待と、新たな夢を胸に、穏やかな気持ちで眠りについた。夢の中で、自分の装具を着けて歩く患者さんたちの姿が、まるで桜並木のように美しく輝いていた。


◆未来を創る手 - 義肢装具士10年目の冬


 雪の結晶が舞い散る早朝、目覚めの音楽が静かに鳴り響く。時計は午前5時15分を指している。窓の外は一面の銀世界。私、歩月志歩は今年で義肢装具士10年目。今では自身のクリニック「歩み工房」を経営し、最新技術と伝統技術の融合に挑戦している。


 起き上がり、鏡を見る。34歳の顔には、自信と共に新たな挑戦への期待が浮かんでいる。髪をまとめながら、今日の重要なプロジェクトを思い出す。


(そうだ、今日は3Dプリンター(*7)を使った新しい義手のフィッティング(*8)だったわ)


 化粧は自然でありながらも凛とした印象に。患者さんだけでなく、今日は医療機器メーカーの方々との打ち合わせもある。


 朝食を取りながら、タブレットで最新の義肢装具技術に関する論文に目を通す。技術の進歩は目覚ましく、常に学び続ける必要がある。


(技術は進化しても、患者さんの気持ちに寄り添う心は変わらない。それが私たちの仕事の本質ね)


 クリニックに向かう車の中で、夫から電話がかかってくる。


「志歩、今日も頑張ってね。夕飯は僕が作っておくよ」


 結婚して3年、互いの仕事を尊重し合える関係に感謝している。


 クリニックに到着すると、すでにスタッフたちが準備を始めていた。


「おはようございます、みんな。今日も一日、よろしくお願いします」


 全員に声をかけてから、今日の予定を最終確認する。


 午前中は、3Dプリンターで作製した義手のフィッティングだ。患者さんは20代の女性。交通事故で右手を失ったが、前向きに人生を歩もうとしている。


「歩月先生、この義手、本当に自分の手みたいです。しかも、軽くて動かしやすい」


 患者さんの目が輝いている。


「よかったです。でも、まだ微調整が必要かもしれません。少しでも違和感があれば教えてくださいね」


 細かな調整を重ねながら、患者さんの表情や動きを注意深く観察する。


 昼食後、医療機器メーカーとの打ち合わせがある。新しいセンサー技術を義肢に組み込む計画について議論する。


「歩月先生のアイデアは革新的です。患者さんの細かな動きまで再現できる可能性がありますね」


 メーカーの担当者が興奮気味に言う。


「ありがとうございます。でも、技術だけでなく、患者さんの生活スタイルや心理面まで考慮する必要があります」


 自信を持って意見を述べる。10年間の経験が、確かな見識を与えてくれている。


 午後は、若手スタッフの指導に時間を割く。技術指導だけでなく、患者さんとの接し方や倫理面についても丁寧に教える。


「皆さん、義肢装具は単なる道具ではありません。患者さんの人生を変える可能性を秘めているのです。その責任を常に心に留めておいてください」


 熱く語る自分に、少し照れくさい気持ちになる。


 夕方、最後の患者さんとの面談を終えると、ふと疲れが押し寄せてくる。そんな時、ふと腹部に手をやる。まだ誰にも言っていないが、新しい生命の兆しを感じている。


(仕事も大切だけど、母になることも私の大切な役目なのかもしれない)


 クリニックを出る前に、明日の準備を入念にチェックする。そして、スタッフたちに労いの言葉をかける。


「みんな、今日も一日お疲れさま。明日も頑張りましょう」


 帰宅後、夫の作った温かい夕食を囲みながら、今日のことを話す。


「ねえ、実は……」


 新しい生命のことを告げると、夫は驚きと喜びで目を輝かせる。


「これからは、仕事と育児の両立が新しい挑戦になりそうだね」


 夫の言葉に、不安と期待が入り混じる。


 お風呂に浸かりながら、この10年を振り返る。苦労も多かったが、それ以上に得たものは大きい。


(義肢装具を通じて、人々に希望を与える。そして、次の世代にこの大切な仕事を引き継いでいく。これが私の使命なのかもしれない)


 明日への新たな決意を胸に、穏やかな気持ちで眠りについた。夢の中で、自分の作った義肢装具を身につけた様々な年齢の人々が、笑顔で未来に向かって歩いていく姿が見えた。


(了)


注釈:

(*1) 採寸:義肢装具を製作するために、患者の身体の寸法を測ること

(*2) 義肢装具:失われた身体の一部を補う人工の装置(義肢)や、身体の機能を補助・矯正する装置(装具)

(*3) 採型:患者の身体の形状を型取りすること

(*4) 装具:身体の機能を補助・矯正するための装置

(*5) 適合チェック:製作した義肢装具が患者に適切に合っているかを確認すること

(*6) 歩行訓練:義肢装具を使用して安全に歩行できるよう練習すること

(*7) 3Dプリンター:3次元データをもとに立体物を造形する装置

(*8) フィッティング:義肢装具を患者に合わせて調整すること




◆同期の佐藤健太さんから


 歩月さんと出会ってから、早くも10年が経ったんだな。あの頃の彼女を思い出すと、本当に感慨深いものがある。


 最初の頃の歩月さんは、正直なところ不安そうだった。細身の体で、繊細そうな雰囲気。この仕事、務まるのかなって思ったこともあった。でも、そんな心配はすぐに吹き飛んだよ。


 彼女の真摯な姿勢と努力する姿に、僕も刺激を受けたんだ。特に患者さんとのコミュニケーションには驚かされた。僕たち男性には気づかないような細かな配慮や、温かい言葉かけ。それが患者さんの心を開かせ、リハビリへの意欲を高めていくのを何度も目の当たりにした。


 3年目くらいからかな、彼女の技術が急激に向上し始めたのは。特に小児の装具製作では、彼女の感性が光っていた。子どもの成長を考慮した設計や、デザイン性にも優れていて。子どもたちが笑顔で装具を身につける姿を見て、この仕事の素晴らしさを改めて実感したよ。


 5年目には、もう僕たちのリーダー的存在になっていた。難しいケースにも果敢に挑戦し、新しい技術も積極的に取り入れる。でも、決して自分の功績を誇ることはなく、常にチームのことを考えていた。


 彼女が独立して自分のクリニックを持つと決めた時は、正直寂しい気持ちもあった。でも、それ以上に彼女の新たな挑戦を応援したいという気持ちが強かったな。


 今では、業界の先駆者として彼女の名前が知られるようになった。3Dプリンティング技術を義肢装具に応用したり、AIを活用したリハビリプログラムを開発したり。でも、そんな彼女を誇りに思うと同時に、初心を忘れずに患者さん一人一人に向き合う姿勢は変わっていないことに、本当に感銘を受けるよ。


 彼女の存在は、この業界に大きな変革をもたらした。女性の視点を活かした製品開発や、患者さんへのケアの在り方。そして何より、後進の育成に力を入れる姿勢。彼女のおかげで、この仕事を志す女性が増えてきているんだ。


 10年前、同期として一緒にスタートを切った彼女が、今や業界を牽引する存在になっている。時々、自分との差を感じて落ち込むこともある。でも、それ以上に彼女の姿に刺激を受けて、自分も頑張ろうって思えるんだ。


 これからの10年、20年。彼女がどんな革新を起こしていくのか、本当に楽しみだよ。そして、微力ながら僕も彼女の挑戦を支えていきたいと思っている。歩月さん、これからもよろしくね。


◆佐々木美咲さんから


 歩月先生との出会いは、私の人生の転換点でした。義肢装具士を目指して勉強していた頃、雑誌で歩月先生のインタビュー記事を読んだんです。女性でありながら、この男性社会で活躍する姿に、大きな憧れを抱きました。


 大学を卒業して、運良く歩月先生のクリニックで働くチャンスを得た時は、本当に嬉しかったです。でも同時に、とても緊張もしました。憧れの人の下で働けるなんて、夢のようで。


 実際に働き始めてみると、歩月先生の凄さを肌で感じました。技術面はもちろんのこと、患者さんへの接し方、スタッフの指導方法、すべてが学びでした。特に印象的だったのは、先生が常に「患者さんの人生」を考えていること。単に体の一部を補うだけでなく、その人の生活全体、人生の質を向上させることを目標にしている。その姿勢に、私も大きく影響を受けました。


 歩月先生の下で働き始めて5年が経ちましたが、先生の成長はまだまだ止まりません。新しい技術を学ぶ姿勢、研究への情熱、そして何より患者さんへの愛情。時には厳しい指導もありますが、それも私たちのため、そして患者さんのためだと分かっています。


 最近では、先生が妊娠されたことを知りました。仕事と育児の両立、大変だろうなと心配する反面、きっと素晴らしい母親になるだろうなと思います。そして、その経験がまた新たな視点を生み、私たちの仕事にも良い影響を与えてくれるんじゃないかと期待しています。


 歩月先生は私たちにこう言います。「義肢装具士は、単なる技術者ではない。人生の伴走者なんだ」と。この言葉を胸に、私も日々精進しています。


 10年前、業界に新風を吹き込んだ歩月先生。そして今、さらに大きな変革を起こそうとしている歩月先生。その姿を間近で見られることに、本当に感謝しています。


 これからの10年、歩月先生がどんな姿を見せてくれるのか、とても楽しみです。そして、いつか先生のように、誰かの人生に大きな影響を与えられる義肢装具士になりたい。それが今の私の目標です。


 歩月先生、これからもご指導よろしくお願いします。そして、どうか私たちのロールモデルであり続けてください。



◆桑本香織さんから


 歩月先生との出会いは、私の人生を大きく変えました。あれから10年。今では歩月先生の義足なしでは、私の人生は考えられません。


 事故で左足を失ってから、私は絶望の淵にいました。歩くことはおろか、生きる希望さえ失いかけていたんです。そんな時、まだ若かった歩月先生と出会いました。初めて会った時の彼女の優しい笑顔と、力強い言葉を今でも鮮明に覚えています。


「桑本さん、一緒に歩みましょう。きっと、また自分の足で立てるようになりますよ」


 その言葉に、初めて光明を見た気がしました。


 最初の義足は、正直とても違和感がありました。重くて、痛くて、自分の体の一部になんてなれないと思いました。でも、歩月先生は諦めませんでした。何度も調整を重ね、私の不安や不満に丁寧に耳を傾けてくれました。時には厳しく、でもいつも温かく、私を励まし続けてくれたんです。


 歩行訓練は本当に辛かった。何度も転び、何度も挫折しそうになりました。でも、そんな時も歩月先生は私のそばにいてくれました。「一歩ずつでいいんです。焦らなくていいんです」そう言って、私の歩みに寄り添ってくれたんです。


 初めて義足で立ち上がれた時、私は涙が止まりませんでした。そして、歩月先生も一緒に泣いてくれました。あの時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。それは単に歩けるようになった喜びだけじゃない。新しい人生への一歩を踏み出せた喜びだったんです。


 歩月先生の義足は、年々進化していきました。より軽く、より自然な動きができるように。でも、それ以上に素晴らしいのは、歩月先生の心遣いです。私の生活スタイルや趣味、そして将来の夢まで考慮して、義足を作ってくれるんです。


 歩月先生のおかげで、私は再び仕事に復帰することができました。趣味だった登山も、少しずつですが再開できました。そして何より、人生への希望を取り戻せたんです。


 時には、義足が壊れてしまうこともありました。でも、そんな時も歩月先生は駆けつけてくれました。休日だろうが深夜だろうが、私の SOS には必ず応えてくれたんです。その献身的な姿勢に、何度救われたかわかりません。


 歩月先生は常に新しい技術を学び、私たち患者のために応用してくれます。最近では、3D プリンターを使った新しい義足を提案してくれました。軽くて丈夫で、まるで本物の足のような自然な動きができるんです。技術の進歩と共に、私の可能性も広がっていくような気がします。


 でも、歩月先生の素晴らしさは技術だけじゃありません。私の心の支えになってくれることです。調子が悪い時、不安な時、いつでも親身になって話を聞いてくれます。そして、いつも前を向く勇気をくれるんです。


 歩月先生は今、自分のお子さんを身ごもっていると聞きました。きっと素晴らしいお母さんになるんだろうなと思います。だって、私たち患者のことを、まるで家族のように大切にしてくれるんですから。


 10年前、希望を失っていた私に、再び歩む力をくれた歩月先生。そして今、さらに大きな夢に向かって歩み続ける勇気をくれる歩月先生。私の人生は、歩月先生との出会いを境に大きく変わりました。


 義足は、私の体の一部です。でも、それ以上に歩月先生は私の人生の一部になったんです。これからも、歩月先生と一緒に、一歩一歩、人生の道を歩んでいきたいと思います。


 歩月先生、本当にありがとうございます。そしてこれからも、私たちの伴走者であり続けてください。あなたの存在が、私たちの希望なんです。

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