おもちゃ修理職人:刈谷芽衣さん

◆壊れた夢の修繕士 - おもちゃ修理職人1年目の春


 朝日が差し込む小さな窓から、柔らかな光が私の目を覚ます。時計は午前6時を指している。私、刈谷芽衣は、おもちゃ修理職人として働き始めてまだ3ヶ月。毎日が新しい発見と挑戦の連続だ。


 ベッドから起き上がり、鏡の前に立つ。22歳の若々しい顔に、昨日遅くまで修理していたぬいぐるみの糸くずがついている。髪をとかしながら、今日の予定を頭の中で整理する。


(今日は、昭和30年代の貴重なブリキのおもちゃ(*1)の修理だったわね。緊張するけど、頑張らなきゃ)


 化粧は控えめに、でも明るい印象になるよう心がける。作業着に着替えながら、ふと胸元の「おもちゃ病院(*2)」のバッジが目に入る。このバッジをつけていると、不思議と勇気がわいてくる。


 工房に向かう道すがら、桜の花びらが舞い散るのを眺める。


「春って、新しい出会いの季節ね。今日はどんなおもちゃに出会えるかしら」


 そんなことを考えながら、足取りも軽く歩を進める。


 工房に到着すると、先輩の田中さんがすでに準備を始めていた。


「おはようございます、田中さん」


「ああ、芽衣ちゃん。今日は大切な修理があるぞ。気合い入れていけよ」


 田中さんの言葉に、背筋が伸びる思いがする。


 まず、昨日から作業していたぬいぐるみの仕上げから始める。縫い目を丁寧に確認し、毛並みを整える。


(この子、きっと大切にされてきたんだろうな……)


 ぬいぐるみの柔らかな感触に触れながら、そんなことを考える。


 午前中は、ブリキのおもちゃの修理に取り掛かる。錆び(*3)を丁寧に落とし、歯車(*4)の動きを確認していく。


「芽衣ちゃん、そのネジ(*5)、もう少し慎重に扱ってね。年代物だから、壊れやすいんだ」


 ベテラン職人の山本さんが、優しく助言してくれる。


「はい、わかりました! ありがとうございます」


 緊張しながらも、丁寧に作業を進める。


 昼食時、同期の佐藤くんが話しかけてきた。


「芽衣さん、慣れてきました? この仕事、奥が深いですよね」


「うん、毎日が勉強だよ。でも、修理したおもちゃが動き出した時の喜びはたまらないね」


 佐藤くんと話しているうちに、ふと気づく。この業界、まだまだ男性が多い。私のような女性職人は珍しい存在だ。


(でも、だからこそチャンスもあるはず。女性ならではの細やかさで、新しい修理技術を生み出せるかもしれない)


 午後からは、電子おもちゃ(*6)の修理に挑戦する。はんだごて(*7)を手に取り、細かな電子部品と格闘する。


「芽衣、その基板(*8)、もう少し角度をつけて見てごらん。気づくことがあるかもしれないぞ」


 田中さんの言葉に、少し自信がつく。


「はい、わかりました。……あ、これ、配線が少し緩んでいますね」


 夕方まで、様々なおもちゃの修理に没頭する。やっと一日の作業が終わったところで、受付の鈴木さんが声をかけてくれた。


「芽衣ちゃん、今日修理したぬいぐるみを取りに来たお客様がね、とても喜んでくれたわよ。『大切な思い出をよみがえらせてくれてありがとう』って」


 その言葉を聞いて、胸がいっぱいになる。


「ありがとうございます。まだまだ未熟ですが、これからも頑張ります」


 家に帰る途中、夕焼けに染まる空を見上げる。


(私も、このおもちゃたちのように、傷ついても立ち直れる強さを持ちたいな)


 帰宅後、お風呂に浸かりながら今日一日を振り返る。指先に残るはんだの匂いが、なぜか心地よい。


 明日への期待を胸に、早めに就寝する。夢の中で、修理したおもちゃたちが楽しそうに踊っていた。


◆思い出を紡ぐ匠 - おもちゃ修理職人5年目の秋


 木枯らしの音で目を覚ます。時計は午前5時30分を指している。窓の外では、落ち葉が舞っている。私、高梨芽衣は今年でおもちゃ修理職人5年目。少しずつだが、確実に技術を磨いてきた。


 起き上がり、鏡を見る。27歳になった顔には、少しだけ自信が宿っている。髪をまとめながら、今日の予定を頭に描く。


(今日は、あの貴重な大正時代のからくり人形(*9)の修理だわ。5年間の集大成といっても過言じゃないわね)


 化粧は控えめに、でも凛とした印象になるよう心がける。作業着に袖を通しながら、ふと指先を見る。細かな作業の繰り返しで、少し荒れている。でも、それは職人としての誇りでもある。


 工房に向かう道すがら、色づいた銀杏並木を眺める。


「この色合い、からくり人形の着物の色選びの参考になりそう……」


 仕事のことを考えながら、足早に歩を進める。


 工房に到着すると、後輩の山田くんが緊張した面持ちで待っていた。


「おはようございます、先輩! 今日はあの からくり人形の修理ですよね。僕も勉強させてください」


「おはよう、山田くん。もちろんよ。一緒に頑張りましょう」


 後輩に教えることで、自分の成長も実感できる。そう思いながら、作業の準備を始める。


 まず、からくり人形の状態を細かくチェックする。歯車の噛み合わせ、糸の張り具合、木材の状態……一つ一つ丁寧に確認していく。


(この人形、百年近く大切に扱われてきたのね。その想いを大切にしなきゃ)


 慎重に作業を進めながら、内心では使命感が湧き上がる。


 午前中は、からくり人形の機構部分(*10)の修復に没頭する。錆びついた歯車を慎重に取り外し、新しい部品と交換していく。


「芽衣さん、この歯車の動き、絶妙ですね。どうやってこんな精密な調整ができるんですか?」


 山田くんが目を輝かせて聞いてくる。


「そうねぇ……感覚的な部分も大きいけど、音を聞くのも大切よ。からくりの音が奏でるリズムが、人形の動きを決めるの」


 自分の経験を言葉にしながら、改めて技術の奥深さを実感する。


 昼食時、田中さん(今は工房長)が話しかけてきた。


「芽衣、最近の君の仕事ぶり、素晴らしいよ。特に古い玩具の扱い方は、ベテランも舌を巻くほどだ」


「ありがとうございます。でも、まだまだ学ぶことはたくさんあります」


 謙遜しつつも、内心では誇らしい気持ちがある。女性としては珍しい、からくり人形の専門家として認められつつあるのだ。


 午後からは、からくり人形の外観の修復に取り掛かる。薄れかけた着物の彩色を、当時の色に近づけるよう丁寧に補修していく。


「芽衣、その色合い、女性ならではの感性だな。素晴らしい」


 隣で作業していた山本さんが、感心したように言う。


「ありがとうございます。でも、これは江戸時代の浮世絵を参考にしているんです。当時の美意識を大切にしたくて」


 自信を持って説明する自分に、少し驚く。5年前の自分には想像もできなかった姿だ。


 夕方、ようやくからくり人形の修復が完了する。ゼンマイを巻くと、人形が優雅に舞い始めた。


 工房中から歓声が上がる。


「芽衣、本当によくやった。この技術、ぜひ後輩たちにも伝えていってほしい」


 田中工房長の言葉に、大きな使命感を感じる。


「はい、精一杯頑張ります。この技術を絶やさないよう、しっかりと伝えていきます」


 家に帰る途中、夕暮れの空を見上げる。オレンジ色に染まった雲が、からくり人形の動きのように流れていく。


(私も、このからくり人形のように、時代を超えて人々の心に残る仕事をしていきたい)


 帰宅後、お風呂に浸かりながら今日一日を振り返る。指先に残る塗料の感触が、なぜか誇らしい。


 携帯に、最近気になっている人からメッセージが届いていた。「今日の修理、上手くいった?」

 返信しながら、仕事と私生活のバランスについて考える。


(おもちゃを修理するように、人間関係も丁寧に紡いでいきたいな)


 明日への期待と、新たな決意を胸に、眠りについた。夢の中で、修復したからくり人形と一緒に、優雅に舞っていた。


申し訳ありません。ご指摘ありがとうございます。展開が似通わないよう、新たな視点で続きを書かせていただきます。


◆記憶を繋ぐ魔法使い - おもちゃ修理職人10年目の冬


 窓を叩く雪の音で目が覚める。時計は午前4時45分。私、玩具芽衣は今年でおもちゃ修理職人10年目。今では「おもちゃ病院」の院長として、修理だけでなく、後進の育成や地域貢献にも力を入れている。


 起き上がり、鏡を見る。32歳の顔には、自信と共に柔らかな笑みが浮かぶ。髪をまとめながら、今日の特別なイベントを思い出す。


(そうだ、今日は被災地でのおもちゃ修理ボランティアの日だったわ)


 化粧は普段より少し丁寧に。被災した子どもたちに少しでも明るい表情を見せたいから。


 準備をしながら、テレビをつける。気象情報が流れている。


「今日の被災地の天候は厳しいようですね。でも、それでも行く価値はある。きっと」


 独り言を呟きながら、防寒具をカバンに詰める。


 雪の積もる道を、仲間たちと一緒にバスに乗り込む。車内は緊張と期待が入り混じった空気に包まれている。


「みんな、今日は特別な日よ。おもちゃを直すだけじゃない。子どもたちの心も癒していくのよ」


 仲間たちに語りかける。その言葉に、全員が頷く。


 被災地に到着すると、すでに多くの子どもたちが待っていた。その表情は不安と期待が入り混じっている。


「こんにちは、みんな。今日は楽しい魔法の時間よ」


 明るく声をかけながら、修理の準備を始める。


 最初に持ち込まれたのは、ボロボロになったぬいぐるみ。女の子が涙ぐみながら差し出す。


「大丈夫よ。きっと元気にしてあげるから」


 優しく声をかけながら、作業を始める。縫い目を直し、綿を足し、目ボタンを付け替える。


(このぬいぐるみ、きっとこの子の大切な思い出の象徴なんだわ)


 丁寧に作業を進めながら、心の中でつぶやく。


 昼頃、突然停電が起きる。会場が騒然となる中、私は冷静に対応する。


「大丈夫、みんな。こんな時こそ、おもちゃの出番よ」


 懐中電灯を取り出し、手回し発電のおもちゃを使って、即席のランプを作る。子どもたちの目が輝き始める。


「わあ、すごい!」


 子どもたちの歓声が上がる。この瞬間、おもちゃの持つ力を改めて実感する。


 午後は、地元の職人さんたちと協力して、大型の木馬の修理に取り組む。


「芽衣さん、この木馬、地元の象徴なんです。でも修理が難しくて……」


 地元の大工さんが心配そうに言う。


「大丈夫です。みんなの技術を合わせれば、きっと直せます」


 自信を持って答える。10年間で培った技術と、地元の方々の想いが一つになる瞬間だ。


 夕方、全ての修理が終わる頃。子どもたちの笑顔が会場いっぱいに広がっている。


「芽衣さん、ありがとう。おもちゃが直っただけじゃない。みんなの心も元気になったよ」


 地元のボランティアリーダーが涙ぐみながら言う。


「いいえ、これも皆さんのおかげです。おもちゃは思い出を繋ぐ架け橋。これからも、この架け橋を大切にしていきましょう」


 帰りのバスの中、疲れた体に満足感が広がる。窓の外の雪景色を見ながら、ふと思う。


(おもちゃを直すことは、単なる物の修理じゃない。人々の心を繋ぐ、大切な仕事なんだ)


 家に帰り着く頃には、もう夜遅く。温かい風呂に浸かりながら、今日一日を振り返る。


 枕に頭をのせる前、携帯に目をやる。被災地の子どもたちからの感謝のメッセージが届いていた。


(これからも、おもちゃを通じて、もっと多くの人々の心を繋いでいきたい)


 そんな決意と共に、深い眠りに落ちていった。夢の中では、修理したおもちゃたちと一緒に、被災地の復興を手伝っていた。


(了)



(*1) ブリキのおもちゃ:主に1950年代から1970年代に人気だった金属製のおもちゃ。現在はコレクターアイテムとしても価値が高い。


(*2) おもちゃ病院:壊れたおもちゃを修理するボランティア団体や施設のこと。子どもたちの思い出を守る活動として注目されている。


(*3) 錆び:金属が酸化して表面に生じる赤褐色の物質。古いおもちゃの修理では、この除去が重要な作業の一つとなる。


(*4) 歯車:機械の動力を伝える車輪状の部品。多くの動くおもちゃに使用されており、適切な調整が動作の鍵となる。


(*5) ネジ:部品を固定するための金具。サイズや形状が多様で、古いおもちゃでは特殊なネジが使用されていることも多い。


(*6) 電子おもちゃ:電気回路を使用したおもちゃ。バッテリー駆動や音声機能を持つものが多く、修理には電子工学の知識が必要。


(*7) はんだごて:金属を溶かして部品を接合するための工具。電子おもちゃの修理に欠かせない。


(*8) 基板:電子部品を搭載する板。電子おもちゃの心臓部とも言える重要な部分。


(*9) からくり人形:歯車や滑車などの機械機構を利用した、自動で動く人形。日本の伝統工芸品の一つ。


(*10) 機構部分:おもちゃが動くための仕組みが集まっている部分。からくり人形では特に重要。


(*11) 3Dプリンター:コンピューター上で作成した3次元データを基に、立体物を造形する装置。希少パーツの再現などに活用される。


(*12) AR(Augmented Reality):現実の環境にコンピューターで生成した情報を重ね合わせる技術。修理の手順説明などに応用可能。



山本さんの言葉:


 玩具芽衣ちゃん、早いもので君と出会ってから10年が経ったね。この歳になると時間の流れが加速するように感じるんだが、君と過ごした日々は本当に瞬く間だった。まるで、壊れたゼンマイ仕掛けのおもちゃを修理して、再び時を刻み始めたかのようだ。


 君が初めてこの工房に足を踏み入れた日のことを、今でもはっきりと覚えているよ。緊張しながらも、目を輝かせて古いブリキのおもちゃを見つめていた君の姿が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。あの時、君の中に秘められた可能性を感じたんだ。


 最初の1年は、君にとって試練の連続だったね。細かな部品の取り扱いに苦戦し、何度も指を傷つけていた。でも、君は決して諦めなかった。むしろ、失敗するたびに学びを得て、より慎重に、そして大胆に挑戦していった。その姿勢こそが、君を一流の修理職人に育て上げたんだと思う。


 2年目、3年目と経つにつれ、君の才能が開花していくのを目の当たりにした。特に印象に残っているのは、君が古い音楽箱を修理した時のことだ。単に動くようにするだけでなく、音色までも蘇らせた君の技術に、私も心から感動したよ。


 5年目になる頃には、君はもう立派な職人になっていた。君の繊細な技術と創造力は、我々ベテラン職人たちの間でも評判になっていたんだ。特に、電子おもちゃの修理における君の才能は目を見張るものがあった。古い技術と新しい技術を融合させる君のアプローチは、まさに革新的だった。


 そして今、10年目。君はもはやおもちゃ修理の達人であり、さらには業界全体を変革する存在になっている。君が始めた「おもちゃ修理ワークショップ」は、子どもたちにものを大切にする心を教えると同時に、我々の仕事の価値を社会に広く知らしめることにもなった。


 芽衣ちゃん、君の成長は、まさにカレイドスコープ(万華鏡)のようだったと思う。様々な経験や出会いという色とりどりの断片が、君という筒の中で美しく調和し、驚くべき模様を作り出してきた。そして、それは見る角度や光の当て方によって、常に新しい姿を見せてくれる。


 特に印象深いのは、7年目に君が直面した大きな挑戦だ。歴史的価値のある江戸時代のからくり人形の修復プロジェクト。前例のない難しい仕事だったが、君は粘り強く取り組み、見事に成功させた。あの時の君の集中力と創造性は、今でも語り草になっているよ。


 また、君が女性の視点から提案してくれた「おもちゃ病院」の新しい運営方法は、我々の活動に新たな息吹を吹き込んでくれた。お母さんたちが気軽に来られる雰囲気づくりや、子どもたちが修理過程を学べるコーナーの設置など、君のアイデアのおかげで、地域に根ざした活動として大きく成長することができた。


 芽衣ちゃん、君は私の誇りだ。単に優秀な修理職人というだけでなく、おもちゃを通じて人々の心を癒し、世代を超えてつながりを作り出す、そんな素晴らしい才能の持ち主に成長した。これからのおもちゃ修理の世界は、間違いなく君たち若い世代の手にかかっている。特に、君のような感性豊かな女性職人の活躍が、この仕事に新たな価値を見出していくんだろう。


 最後に一つ、この老いぼれ職人からのアドバイスを聞いてほしい。これからも常に好奇心を持ち続けてほしい。新しいおもちゃが次々と生まれる一方で、伝統的なおもちゃの価値も忘れられないようにね。君の中にある「古きを温め新しきを知る」という姿勢は、とても貴重なものだ。それを大切に育てていってほしい。


 そして、君がこれまで受けてきた指導や支援を、今度は後輩たちに与えていってほしい。特に、これから修理の道を志す若者たちにとって、君は大きな目標になるはずだ。彼らを導き、支援していくことで、おもちゃ修理という素晴らしい仕事が、未来へと受け継がれていくんだ。


 さあ、芽衣ちゃん。これからも君の繊細な技術と温かい心で、たくさんのおもちゃと、そしてそれを大切にする人々の心を修復していっておくれ。我々古参は、君たちの活躍を誇りに思いながら、できる限りのサポートをしていくとしよう。君が修理するおもちゃのように、人々の心に喜びと驚きをもたらし続けることを、心から祈っているよ。


◆子どもたちからの感謝のお手紙


芽衣さんへの子どもたちからの感謝のお手紙:


1. 「芽衣おねえちゃんへ


こんにちは! ボクは太郎です。6さいです。このまえ、おねえちゃんにボクのだいすきなロボットをなおしてもらいました。ロボットがこわれた時、ボクはとってもかなしかったです。でも、おねえちゃんがにっこりわらって、「だいじょうぶ、きっとなおるよ」って言ってくれたとき、なんだかあんしんしました。


おねえちゃんがロボットをなおしているところを見ていて、すごいなあって思いました。ちいさなねじをまわしたり、でんきのせんをつないだり、むずかしそうなことをいっぱいしていました。ボクもおねえちゃんみたいに、こわれたおもちゃをなおせるようになりたいです。


ロボットがうごきだしたとき、ボクはうれしくてびっくりしました! おねえちゃんのおかげで、ロボットはまえよりもかっこよくなったきがします。これからも、このロボットとずっといっしょにあそびます。おねえちゃん、ほんとうにありがとう! ボクのたからものをなおしてくれて、うれしかったです。


おねえちゃんのことが、だいすきです! またこわれたおもちゃができたら、てつだってください。ボクもがんばってべんきょうして、いつかおねえちゃんみたいになりたいです!」


2. 「芽衣さんへ


こんにちは。私は洋子です。9歳になりました。先日は、私の大切な人形を直してくださって、本当にありがとうございました。


あの人形は、おばあちゃんが私の3歳の誕生日にくれたものです。だから、とっても大切な宝物なんです。人形の腕が取れてしまった時、私はすごく悲しくて、もう二度と遊べないんじゃないかって思いました。


でも、芽衣さんが優しく「大丈夫だよ、きっと直せるから」って言ってくれて、本当に安心しました。芽衣さんが人形を直している様子を見ていて、とっても勉強になりました。細かい作業を丁寧にしている姿は、まるで魔法使いみたいでした。


人形が直った時、私は嬉しくて飛び上がりそうでした! 芽衣さんは、人形の腕を直しただけじゃなくて、ドレスの破れも直してくれました。今では、人形は新品のようにきれいです。


芽衣さんのおかげで、私はものを大切にすることの意味を学びました。壊れたからって簡単に捨てるんじゃなくて、直せるものは直す。そうすることで、もっともっと大切な思い出が増えていくんだなって思いました。


将来、私も芽衣さんのような素敵な大人になりたいです。人を笑顔にできる仕事って、すごくステキだと思います。本当にありがとうございました。また何か困ったことがあったら、ぜひ相談させてください!」


3. 「芽衣様へ


僕は健太といいます。12歳です。先日は僕の大切なプラモデルを修理していただき、心から感謝しています。


あのプラモデルは、亡くなった父が僕に残してくれた最後の贈り物でした。だから、それが壊れてしまった時、僕はもう二度と父との思い出に触れることができないんじゃないかと、とても怖くなりました。


でも、芽衣さんは僕の気持ちをすぐに理解してくれました。「このプラモデル、きっとあなたにとってかけがえのないものなんでしょう。大丈夫、必ず直します」とおっしゃった言葉に、どれだけ勇気づけられたか分かりません。


修理の過程を見せていただいて、僕は芽衣さんの技術の素晴らしさに感動しました。細かな部品を丁寧に扱い、接着剤を使うタイミングや強度を絶妙に調整する様子は、まるでアーティストのようでした。


そして、修理が終わった時、僕は涙が止まりませんでした。プラモデルは元通りになっただけでなく、芽衣さんが塗装も少し直してくださったおかげで、前よりもさらに美しくなっていたんです。


芽衣さんは単におもちゃを直すだけでなく、人の心も癒してくれる素晴らしい方だと思います。この経験を通じて、僕はものを大切にすることの意味を改めて学びました。そして、人の気持ちを理解し、技術を通じて幸せを届ける仕事の素晴らしさを知りました。


将来、僕も誰かを幸せにできる仕事に就きたいと思います。そのためにも、これからもっと勉強を頑張ります。本当にありがとうございました。芽衣さんのような素晴らしい大人になれるよう、僕も頑張ります!」


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