第十四話 姉の来訪
姉貴の名前は
姉はというと、ひとり長野に残り、地元の小さい工場の事務職員をしていた。姉貴とその夫どちらもCランク。それゆえ生活もなかなか苦しい。自分たちが暮らすのにやっとで姉貴たちに子供はいなかった。
「んで、明日からもう会社に戻るんだって?」
「ああ。ずいぶん迷惑かけてるよ。」
「こんな小さい子供が生まれたのにろくに休ませてくれないんだねぇ~」
「ろくに休んだよ。」
赤ん坊が生まれた日に途中退社してからまったく会社にはいかずもうすぐ一か月が経とうとしていた。俺の部署はあるプロジェクトに取り組んでいて、これ以上チームのみんなに迷惑をかけるわけにはいかないかった。
「まぁいいわよ。私はこの子といつまででも暮らせるから。いっそのこと私がお母さんになってあげるのに。」
「何言ってんだよ。」
姉貴にお茶を差し出すと急に顔が曇った。
「ほんと、、、なんだよね、、サヤちゃんのこと、、、」
「、、、ああ。メールで言ったとおりだよ、、、」
「信じらんないわ、、、。この子を産んで、運よく亡くなっちゃったっていうのは、まだなんとか理解できるけど。そのあと病院から連れ去られて、いまは群馬の山奥で延命装置の中に入ってるなんて、、、」
「、、、まぁそうだよな。俺もまだ夢なんじゃないかって思っているよ。」
「第一、ほんとに連れ去ったのってサヤちゃんの親族なの?サヤちゃんのお父さんってのも本当なのか分からないし。やっぱり怪しい集団なんじゃないの?」
俺はローテーブルを挟んで姉貴の正面にどかっと座った。
「あー?だから調べたって。」
「どうだったの?」
「露堂製薬のHPを見たら、あいつは本当に露堂一族だった。先月までアメリカの研究所所属で、先週から日本の露堂製薬の研究所のチームリーダーになってた。」
「へぇ~。でも、サヤちゃんがほんとに露堂一族の娘かどうかはわかんないでしょ」
「はぁ。」
俺はひとつため息をついて続けて言った。
「あいつは間違いなく露堂製薬の人間だった。そんな凄い人間がなんでCランクのただの一般人のサヤをあんな場所にわざわざ連れ去るんだ。」
「それは、、確かに。ってことは、サヤちゃんって本当に"Aランク"なの、、?」
姉貴は疑いの表情で俺を見る。
「たぶん、そうだろうな。」
俺は姉貴に抱えられた息子のことを見やる。そして、自分でもまだ受け入れがたい事実について言った。
「だからその子はA⁺ランクなんだろうな、、、」
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