第八話 ベストプレイヤー
「ああ。娘はまだ死んでいない。」
「何言ってるんだ。サヤは病院ですでに、、」
「現代医療は発展している、君の想像以上にな。あの水槽は一種の延命装置だ。娘はまだ生死を彷徨っている状態だ。そのリミットは三十年。それ以降は保証できない。」
男は俺を見下しながら変わらずの真顔で言った。俺はその話があまりにSFチックであるように感じて緊張感を持てなかった。あり得ないと思ったからだ。気が付くと立ち上がり、男に質問していた。
「すぐに生き返らせることはできないんですか?」
「無理だ。資金が足りない。」
「資金って。あなたは研究者なんでしょう?それに露堂製薬の力があれば、、」
「それでも無理なんだ。この技術は最先端のものだ。かかる費用も桁違いなものだ。」
男は首を横に振りながら答えた。
「その費用っていくらなんですか。」
俺はつい気になって聞いてみた。
「…二百兆円だ。」
「にひゃくちょう?!」
あまりにバカげた数字を告げられ思わず声が大きくなってしまった。その反応に男は耳が痛むしぐさと不快そうな顔をした。
「現実にこの金額を払うのは誰であれ不可能に近いだろう。それとは別に方法がある。」
「別の方法、、。」
「“ベストプレイヤー”に選出されることだ。」
「ベストプレイヤー、、、。なんですかそれ。」
「まあ知らないだろうな。ベストプレイヤーとは世界を牛耳るトップ実業家・ダイモンド家が創立した特別支援活動のことだ。」
「特別支援活動、、。」
「ああ。選出対象は世界中のAランカー達、さらに言えばA⁺ランカー達だ。」
「そのベストプレイヤーってのに選ばれたらサヤは生き返るん、、、」
「メイと呼べ。もしくは娘さんだ。」
「あ、すいません。」
俺にとってサヤはサヤだ。メイなんていきなり呼ぶのは抵抗があった。
「ベストプレイヤーに選ばれたら娘さんは生き返るんですか?」
「ああ。正確には受賞の賞品として、“娘の蘇生をダイモンド家にお願いすること”ができる。」
お願いって、、、。よく分からんが、ベストプレイヤーってのに選ばれたらなんでも願いを聞き入れてくれるってことなのか?ナニモンなんだダイモンド家って、、、。
「じゃあ、どうすればそのベストプレイヤーってのに選出されるんだすか。」
「 …選考基準は単純だ。“人類の発展に寄与する大きな偉業を残すこと”。」
偉業を残す??やけに壮大な話だ。壮大すぎて基準になってない気がするが。
「あと今“だすが”って言ったな。なんだ、今の日本じゃそう言うこともできるのか?」
「あ、いえいえ、今のは嚙んだだけです。すいません、へへ。」
俺は頭をかきながらぎこちなく笑った。
なんだこのジジイ、急にふざけたことぶっこんできやがって。
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