第四話 さらなる事件?

ハハッ、つくづく俺をからかいたいのか、この医者は。


俺は思わずあきれ笑いをする。なのに医者は真剣な顔のまま、俺を見つめ続けている。


「これには私も非常に驚いています。今までこんなことはなかったですし、ましてやAランク児など見たこともありません、、、。」


医者は勝手に自分の話をする。


なんだ、ずいぶんと往生際の悪いやつだ。俺はまたイライラしだす。


「おい、それ以上ばかにするのはやめてくれないか」

「ばかに、、?なんのことです?」

「だから!どうしてそうイライラさせようとするんだよ!」


「ほ、ほんとうなんです!西本さんっ」


無意識のうちに立ち上がっていた俺に、看護師が医者のうしろから声を出した。


「ほんとうに、検査の結果、息子さんのランクはA⁺だったんです!検査キッドは国が定めた正規のものを使っていますし、わたしたちも教科書でしか見たことがない、Aランクを示す“赤”にさらにプラスを示す“黒の三本線”が出たんです!信じてください!」


看護師はまくしたてるようにただただ必死でそう言った。その気迫に押され、俺は気付いたらまた椅子に腰を下ろしてしまっていた。


「失礼ながら、ご両親がともにCランクでありながら、その赤ちゃんがAランク児というのは未だかつて聞いたこともありません。そして、私もそんなことが実現するとは思えないんです。」


溜飲りゅういんが下がった俺にまだ少し怯えるような顔の医者は少し震えた声で言った。俺はというと、事態が全く飲み込めず、さっきから頭の回線はグルグルと読み込み中のサインが出たままだ。そんな俺を見ながら言いたいことが途中だったのか、さらに医者は続けて言う。


「私がまず思いついたのは、ご両親のどちらかがCランクではないという可能性です。ひいては、母親の西本沙夜にしもとさやさんが、Aランクだったのではと、、、」


「サヤが、Aランク、、、」

「西本さんはCランクであると思いますし、、、」

「それはなんでですか?」

「だって気性がお荒いですし、終始性格の雑さが垣間見えると言いますか、、、」


医者は目をそらし、小声でぼそぼそと言った。


「あ?俺がガサツで不器用だって?」

「ああいえいえ!なんでもございません!もちろん、今から西本さんのランク測定も行えるんですが、、どうします?」


なんだこの医者は。理性を保ったうえで正式に殴りたくなる奴だ。


「測るって言っても無料ではないんですよね。」

「あ、はい~その場合、八千円ほど頂戴いたします~。」


この医者とこれ以上話すとまたイライラがたまってくる。


「いいです。赤ん坊はいつうちに連れて帰られるんですか?」


俺は無理やり話題を変えた。


「三日、早くても明後日あさってになります。」

「分かりました。また明日きます。」


そのあと、駅近くのうどん屋でうどんをすすっていると、病院からランクと別に型の検査結果もメールで知らされた。赤ん坊(まだ名前も決めていない)は運動型ということだった。


のれんをくぐり、うどん屋から出ると突き刺すような日差しに思わず手をかざす。


ほんとうにあの赤ん坊がAランク、、、?サヤが、Aランクかもしれないだって、、?


ふたつのことが半信半疑どころゼロ信全疑のままだ。その時、ポケットから着信音が聞こえてきた。画面を見ると葬儀屋からだ。


「もしもし、西本です。」

「あ、西本さん、良かったです。ぽっくり葬儀社の三途川です。」


電話先の声はかなり焦っているようだった。


「どうしましたか?」

「た、大変なんです、、、。」

「たいへん?」


次に言われた言葉に俺は驚愕する。


「奥様の遺体が奪われました!」





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