思い出その1

「うっわすっごーい!」

「へへ、先輩が喜んでくださって何よりです、僕、ずっと前から流星群を皆に見せたかったので!」

「……ただの宇宙の塵なんでしょ?セキはなんでそんな楽しめるんだか」

「正体知ってるとそうなるのも分かります、俺は黒川先輩派ですね」


 8月12日、ペルセウス座流星群の極大の日、地元の山の上でしかたんの天体ショーを観賞していた。純粋に楽しんでいる坂井と岡田とは対照的に、黒川と藤田は冷めた目で見ている。


「そんな寂しいこと言わないで下さいよ黒川せんぱーい、もしかして花火にたいしてもただの火薬の爆発とか言っちゃうタイプですか?」

「そりゃそうでしょ」

「ったくコレだからリアリストは……恵もロマンを感じてよ!」


 分かってないなぁ、と言いながら三脚を立てる坂井。それを尻目に、おもむろに空にスマホをかざす藤田。塵の落下よりもそっちに興味を示した黒川が訊ねる。


「スマホで撮れるもんなの?」

「最新機器舐めないでください、ほら」

「うお、スッゲーむっちゃ綺麗じゃん」

「……あの程度で済ますなんて、ナンセンス。ですよね先輩?」

「全くだよ岡田くん。自然現象への探求心が足りてないと見える」


 そう言って、見晴らしのいい場所へ向かう二人を、藤田と黒川は呆れて見守るのだった。


……


「起きろ」

「んぁ」

「起きろって」

「ふぇーい」


 返事になってるのか怪しいような声で岡田が応える。そのあと案外ずっと起き上がって、急いで周りを見渡した。


「心配しなくても、後輩はいない」

「そっかーならよかった、寝言で変なこと言ってたりした?」

「してたぞ、貴女がいないと俺は……みたいな女々しいこと」

「うっわはっずいなぁ」

「やはりあなたには星の降る夜が美しい、とか言ってたぞ」


 それを聞いた瞬間に、僅かに残っていた眠気も醒めたようで、忘れようとするかのように今日の行動の準備を始めた。


「俺が副部長なんて、柄じゃないと思うか?」

「あぁ」

「即答かよ……」

「でも」


 藤田はそこで一区切り置く。何を言うか想像できずに、岡田はキョトンとした。


「お前が居なければ、俺もここにいない」

「二人でひとつってこと?」

「それはなんかキモい」

「酷いなぁ」

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