思い出その2

「……は?」

「何度も言わせるな。私は四日後に自分を殺す」

「何度言われて分からないって言ってるんだよ。どういうことだ!」


 普段の飄々とした姿とは打って変わり、淡々と自らの意思を口にする坂井赤。普段のほわほわと数学を解いてる姿とは打って変わり、きつい口調で詰める黒川恵。


「何があった、なんでボクを置いていくんだ、悩みでもあるのか?」

「悩みねぇ、まぁ、そう言われればそうなのかも」

「……ボクが君に及ばないからか?ボクが君に並び立ててたら違ったのか?」


 しばし、沈黙が訪れる。それから、電話口から失望の笑いが聞こえてきた。


「何故笑う!」

「あー、ごめん、メグは勘違いしてるみたいで面白くて」

「……え?」

「最後の推測は半分正しいね。でも致命的なところで間違えてる。0点だ」


 訳を問いかける黒川に、もう一度淡々と告げる坂井。


「並び立てなかったのは、置いていかれたのは私の方だ」


 その言葉の真意を黒川が問いただす前に、電話はぷつりと切れた。

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