第4話 復讐の作戦概要
「お手伝い…ですか?」
クロエは少し警戒しながら尋ねた。レインは微笑みを浮かべながら説明を続けた。
「そうです。私たちは、あなたのいたパーティ『ブラッククロウ』から貸したお金を取り返したいのです。彼らは私たちに借りた借金があるのですが、その分をきっちり回収したいのです。ただ取り返すだけではつまらないので、ちょっと痛い目にもあってもらいたいなとも考えていまして。あなたなら彼らをよく知っているので、手伝っていただけると非常に助かります。もちろんあなたがもらえなかった取り分もきっちり返しますよ」
「どうしてそのことを?というか、どうしてわたしがブラッククロウにいたことを...知って...るんですか?」
「私にはね、いろいろとあるんですよ。ツテがね」
レインは優しくウインクし微笑む。この人はいい人だと自然と信じさせてしまうようなやわらかさがある。
「それで、手伝っていただけますか?」
「手伝わないという選択肢はあるんでしょうか...?」
「んー、正直申し上げますが、ないですね」
クロエはゾッとする。明るいが、今いるこの場所は、冷静になってみれば地下の密室だ。逃げ方もわからない。でも、そもそも悪くない提案だった。ブラッククロウへの復讐と、彼らからもらうはずだった取り分を取り返すことができるというのは願ってもない話だった。
「...わかりました、手伝います。なにをすればいいんですか?」
クロエの言葉に、レインは満足そうに頷いた。
「古代龍の秘宝を使います」
古代龍の秘宝。ガイルたちに騙された苦い思い出がフラッシュバックする。
「それって実在するんですか...?」
「ええ、極秘情報なんですがね。つい先週、王国の精鋭調査隊がこの商業都市のすぐ近くのダンジョンで見つけたらしいのです。箝口令がしかれているので、まだごく一部の人しか知らないのですが。私たちも半信半疑だったので、確かめにいったら、あったんですよ、本当に」
「どうして、本物だと分かったのですか? それと、なんで秘宝を持って帰らなかったんですか?」
はぁ、とレインは残念そうにため息をつく。
「持って帰れなかったんです。その理由と一緒なんですが、本物だと分かったのは、本物の古代龍が守っていたからです」
古代龍。神話時代の魔法生物で、魔王討伐を目指せるSランクの冒険者パーティでも逃げ出すと聞いたことがある。
「それで、私たちの計画はこうです。彼らを秘宝のあるダンジョンへと誘導し、そこで一泡吹かせるという計画です。先日ダンジョンに潜った時に記録した地図はこちらです」
レインは、手書きの地図をテーブルに広げる。ダンジョンの道の中に、ドラゴンや宝箱の下手な絵が描き込まれている。
「ダンジョンに入ってひたすら真っ直ぐいったここに古代龍に守られた、本物の秘宝があります。クロエさんはこちらではなく、こちらの脇道へ誘導してください。作戦の直前に脇道の先に一つ豪華な宝箱を用意しておきます。もちろん偽物ですが。きっと彼らはクロエさんを押し退けて飛びつくでしょう。その宝箱の前に、クロエさんが落ちたような登れない落とし穴を掘っておきます」
「それは、目に浮かびますね」
クロエは、ガイルたちが落とし穴に落ちる様子を想像して、にやけてしまった。
「はい、そして登れなくなったところで金を返してもらう約束をとりつける契約魔法を結んで、ミッションコンプリートというわけです」
「でも、この作戦わざわざ本物の古代龍の秘宝のあるダンジョンを使う必要はあるんですか?」
「クロエさん。嘘を信じてもらうコツは、本当のことのなかに嘘を混ぜることなのですよ」
「はぁ...」
「あなたには、古代龍の秘宝があることを彼らに信じ込ませ、ダンジョンへと、そして落とし穴へと誘導してもらいたい」
「でも、わたしたぶん死んだことになってますし、わたしから古代龍の秘宝の話をするのは怪しすぎませんか?」
「はい、なのであなたの得意な変装で、別の人物になっていただき、彼らに接触していただきたい、たとえば小汚い情報屋とか」
変装のことまで?なぜそこまで自分のことを知っているのか。クロエはすべてを見透かされているような恐ろしさを感じる。
「わ、わかりました、やってみます」
クロエが不安そうに呟くと、レインは微笑みながら答えた。
「そう心配はいりません。私の仲間たちも手助けしますので。さぁ、痛い目にあわせてやりましょう」
異世界トリックギルドへようこそ〜チートすぎる天才詐欺師たちの裏稼業〜 多喜多亭御飯 @yoshidapanna
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