ナツタリヤ旅行のしおり

一宮ちゃん!

第1話 温泉の都 メトーゼンを目指す。1

 この世には2種類の人間がいる。

「危険をかえりみないバカ」と「臆病だが危険なところに行きたがるバカ」だ。

 私は、もちろん後者だ。

 人間種として生をうけ、早18年。私こと、新雲にいぐもくるみ(18)

 ラタニア魔法学校を卒業後、ナツタリヤ新聞に就職したしがない会社員だ。

 世界最大級の大陸、ナツタリヤ。そのナツタリヤ最古の新聞会社がナツタリヤ新聞だ。会社に対してそれほど興味はないが、昔は発行部数3000万を超える有名新聞会社だということくらいは知っている。でも、もう昔の話だ。

 今ではすっかり寂れた、アットホームな仕事環境が売りのどこにでもあるような、つぶれかけ・・・・普通の会社だ。

 なぜこんなにも、ナツタリヤ新聞が衰退したかというと魔法新聞というライバル会社のせいらしい。

 魔法新聞は魔法を通じて見ることのできる、ペーパーレスな新聞が売りの会社であり、これが現代の新聞の主流である。

 私も、魔法新聞に就職したかった・・・・。もう少し、勉強しておけば・・・。そんな後悔は先に立たず。

 とにもかくにも、今日は就職して初めての給料日、初任給というやつだ。

 このお金で、私は温泉の都 メトーゼンに行く!


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 初任給から1週間後、待ちに待った長期休暇。

 5日間の休み! 今日からさっそく、温泉の都を目指す。

 私は荷造りをして、旅の仲間である友達のいる集合場所に向かう。


「2人ともお持たせ、今日はいい天気だね」

 

 私が声をかけると、2人は手をふってくれた。


「おはよう、本当にいい天気だね。昨日まで、うずまき雨が続いていたから心配だったけど、最高の旅行日和になってよかったよ」


 赤毛で耳が長いのが印象的な女の子 奈多なたミミンが、笑顔でそう言う。

 ちなみにうずまき雨とは、雲がうずまき状になって雨がくるくる回りながら降る現象である。


「本当にそうだよ、うずまき雨が続いていたら外に出ることすらできないからな。俺が晴れ男であることに感謝しろよ」


 この自称晴れ男は、頭に2本のツノが生えているのが特徴的な男の子 ミラ・ドールン。


「学校の卒業旅行のときは、見事にうずまき雨を引き当てたくせにね」


 ミミンが笑いながら言う。


「うるせー。あれは調子が悪かっただけだ」


「今回は晴れ男のままでいてね。私はこの日のために、辛い仕事を乗り越えたのだから」


「おう、くるみ。任せとけ、今日は調子がいいんだ!」


 ミラが尻尾を振りながら、ガッツポーズをする。かわいい。


「とりあえず、馬車乗り場に行こうか」


 私たちは、町のはずれにある馬車乗り場に向かう。


「嬢ちゃんたち、どこまで行きたい?」


 馬車乗り場のおじさんが聞いてくる。

 私はおじさんに地図を見せながら、


「クルニヤ山地の方に北上したいですけど・・・」


「今日中にクルニヤ山地の麓の村に到着したいなら、クルニヤ平原から森の中に入っていくのがおすすめだけど、視界が悪いのはもちろん魔物も住み着いているから少々危険かな」


「危険なのは嫌なので、クルニヤ平原を森に入らずに中間にある港町クルーゼで今日は宿をとろうと思っています」


「了解! 嬢ちゃんたちは命知らずのバカじゃなくてよかったよ。最近は己の力に過信した若者どもが多くて困っていたんだよ。この前も魔物なんて怖くないと意気込んでいた、冒険者たちを乗せたんだけどね結局、魔物たちに囲まれて緊急脱出用のワープ魔法瓶を使うはめになってね。あとでそいつらを叱ってやったけど」


「そうなんですね。ワープの魔法瓶はとても貴重な道具です。本当にもったいないことしましたね」


「ほんと、そうなんだよ。最近、ワープの魔法瓶の流通が滞っているから、うちら馬車の運転手も困っているんだよ」


 おじさんは、はぁとため息をつきながら馬車の先頭に乗る。

 ワープの魔法瓶とは簡単に言うと、行きたいと念じた場所に一瞬で行ける魔道具だ。詳しいことはよくわからないが、最近魔物のせいで流通が滞っているらしい。


「失礼します、お願いします」


 私たちは馬車に乗る。

 すると、おじさんが後ろを振り向き


「君、もしかしてエルフ?」


 おじさんがミミンのことを見ながら、聞く。


「はい・・・」


 ミミンがおずおずと答えると、おじさんは「ほへー」とわざとらしくリアクションをとる。


「すまん、すまん、そう怖がらなくてもいいぜ。おじさん人攫いではないからな。ただ、初めてお目にかかるもんなんで気になっただけだ」


 おじさんが茶化すように話す。

 ミミンが少し怖がるのも意味がある。おじさんに怖がっている訳ではなく、彼女はに怖がっているのだ。

 ミミンはおじさんの言うとおりエルフ種だ。そして、エルフ種は奴隷として高く売れる。

 彼女は、小さいときに人攫いにあったことがある。

 まぁ、その時の話は長くなるから割愛するけど、その人攫いの一件から彼女はトラウマになってしまったのだ。人攫いの犯人はおじさんのような、中肉中背の男性だった。


「それにしても、珍しい組み合わせだな。人間とエルフと獣人なんて」


 おじさんが前に向き直り、馬車を発進させながら言ってくる。


「魔法学校からの友達なんです」


 私は地図を開きながら、答える。


「そうか、そうか、種族の垣根をこえた友情か・・・。最高だな」


「その通りだぜ、おじさん。俺たち最高のパーティーメンバーなんだぜ!」


 ミラがうんうんと頷きながら言う。

 ちなみにミラは獣人種で、熱い話が大好き。怖い話は嫌い。


「おじさんもお前たちくらいの年齢の時は、よくダチと一緒に冒険に出たものだ」


「おじさん、冒険者だったの?」


 ミラが馬車の先頭のおじさんの横に座る。

 おじさんは微笑みながら、話をしだす。


「あぁ、洞窟専門の冒険者だったんだぜ。洞窟を踏破しては、国から報酬をもらってダチと飲み歩いた日々・・・あの頃が1番、輝いていた」


 洞窟踏破できるのは、素直にすごいと思う。

 洞窟とは魔物が作った巣のことだ。そして、踏破とは洞窟の中の魔物を殲滅することを指す。

 私みたいな非力な人間にとっては、夢のような話である。


「今はなんで冒険者をやめて、馬車乗りをやっているんだ? おじさんの年齢だったら、まだ冒険者現役だと思うけど・・・・」


 ミラは話を続ける。

 彼は、よく初対面でここまでズカズカと話ができるか不思議なものだ。

 私はコミュニケーションが苦手なので、初対面だと借りてきた猫状態になってしまう。

 今度、彼に対人スキルについて講座を開いてもらうとしよう。


「ダチに裏切られたんだよ・・・。ちょうど洞窟の長である魔物との戦闘中だった。俺が魔物の攻撃をくらって動けなくなったとき、あいつは勝てないと悟って俺を置いて逃げていった・・・」


「・・・・え、おじさん大丈夫だったの?」


「あぁ、俺も最後の力を振り絞って魔物から逃げることができた・・・。それから、あいつと会うことは無くなった・・・・そして、今に至る」


「そうだったのか・・・・」


 ミラはそこで言葉に詰まってしまった。

 私もおじさんの気持ちを考えると、言葉が出ないと思う。

 仲間に裏切られる。そんな経験がないから、気持ちの想像はつかない。

 命の危険が差し迫っているときに、仲間に裏切られたら・・・。

 考えるだけで、震えが止まらない。


「・・・こんなおじさんの昔話より、お前たちの話を聞かせてくれよ。お前らが目指しているクルニヤ山地・・・何しにいくんだ?あんなところ、何もないだろ」


「私たちはクルニヤ山地の中腹にある、温泉の都 メトーゼンを目指します」


「あぁ、メトーゼンね・・・・。メトーゼン!?」


 おじさんが驚いたふうに、私の方に振り向く。彼が驚いたせいで、馬車の運転が疎かになって、馬たちが少し暴れる。

 危ないので、前を向いていてほしいものだ。


「メトーゼンって、あのおとぎ話の温泉の都のことか?」


「そうです。そのメトーゼンです」


「なんで、メトーゼンにいくんだ?」


「メトーゼンに行きたいからです」


 おじさんは、訳がわからないみたいな感じで笑う。


「でも、メトーゼンなんてあるかどうかわからないだろう?そんな当てのない旅をするために、険しい登山をするのか?正直言って、時間お無駄だぜ」


「メトーゼンはあると思いますよ?」


「嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。今日到着する、港町クルーゼで観光した方がいいぞ、それに今クルニヤ山地では謎の神隠しが起こっているって噂だし・・・・」


「???」


 私はおじさんの言っていることが、よくわからなかった。

 確かにメトーゼンはおとぎ話の中の都だ。

 でも、そのおとぎ話は実話をもとにしているものだと聞いたことがある。

 実際にメトーゼンにたどり着いた人がいるという話も聞いたことがある。

 だけど、いつの間にかメトーゼンは誰かの作り話という噂が広まった。

 そんな噂話のせいで、メトーゼンを目指す人がいなくなった。

 まぁ、所詮うわさ話・・・私はメトーゼンはあると信じている。


「おじさん、あいつはいくと言ったら行く人間だから。旅に関しては、決して曲げない意志を持っているんだよ、あいつは」


 ミラがおじさんの肩をぽんぽんとしながら、言う。


「そうそう、くるみは頑固女」


 ミミンも長い耳をピコピコ動かしながら、私にそう言う。


「私は頑固じゃない」


「いや、相当頑固だぜ」


「カチカチ頭」


 ミラもミミンも、ひどいことを言うものだ。

 私はこの中で1番、柔軟な頭を持っているというのに。


「わっはっはっはっはっはっは、お前たち面白いな。どうやら、今までで1番の大馬鹿野郎を乗せちまったらしいな。こりゃあ、傑作だぜ。よし、気に入った。お前たちは何があったとしても、港町まで安全に届けるぜ」


「よろしくお願いします。私は安全が1番好きです」


「そうか、そうか、臆病で頑固で大馬鹿者の冒険者の誕生だな」


 このおじさん、ずいぶんとひどい言いようだな。

 私、泣いちゃうよ。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 しばらく、ワイワイと会話しながら馬車に揺られていると、叫び声のようなものが聞こえてきた。


「今、聞こえた?」


 ミミンが長い耳を立てながら、私の服の裾を引っ張る。


「うん、聞こえた。おじさん、向こうの方から叫び声が聞こえませんでしたか?」


「あぁ、女の人の叫び声のような感じだったな」


「おい、向こう側から魔物の気配がする。それも、数が多い」


 ミラが獣人特有の腕に生えた濃い毛を震わせながら、言う。


「ミラ、なんの魔物かわかる?」


「ゴブリンだな、この気配は。もしかしたら、人間が襲われているかもしれない。おじさん、馬車の速度上げられる?」


「お前ら、助けに入るのか?悪いことは言わない、やめとけ」


「なんでだよ。人が襲われているんだぞ」


「ここら辺は魔物が出るはずのない道だ。そして、獣人のお前さんが言うことが正しいのであれば、大勢の魔物・・・・。考えられるのは、オスゴブリンの群れだ。繁殖期がちょうどこの時期だから、たぶんメスを探して草原を横断しているのだろう」


「私もおじさんの提案に賛成です」


「くるみもそんなこと言うのか」


 ミラが怒りを滲ませながら言う。

 ミラが感情的になるのもわかる。人が襲われているかもしれないから、助けに行きたい衝動にかられるのは至極もっともだ。

 だが、今回は素直に助けに行くべきか悩むところだ。


「オスゴブリンは繁殖期になると、メスゴブリンを求めて草原を横断する。だけど、基本的にはこの今走っている道まで来ることはないんだよ。ここまで来るゴブリンは繁殖目的じゃない可能性が高い。以前、冒険者の女性を襲ったことがあり、味を占めたゴブリンの群れであるかもしれない」


「だったら、なおさら助けに行かないと!!」


「いや、一度人間の女性を襲ったことがあるゴブリンは、モノマネができるんだ。さっきみたいに女性の叫び声を出して、冒険者を呼び襲う。罠の可能性が高い。あと、ゴブリンは足が馬車より速いから、振り切ることもできない。だから、助けに行かずにここは道を変えた方がいい」


 おじさんが淡々と説明する。

 でも、ミラは納得していない顔で


「でも、万が一があるだろ。俺だけでも行く!!」


「ちょっと、待って!」


 ミラは私の制止を無視して、馬車から飛び降りさっそうと草原を駆け出した。

 そしてあっという間に、遠くまで行ってしまった。


「まずい、おじさん急いでミラを追ってください!!」


 私も焦って、馬車から飛び降りるところだった。


「お、おう、速度上げるぞ! ちなみに、あの獣人は戦えるのか?」


「ううん、めちゃくちゃ弱い。だからまずい!私たち全員、戦えないです」


 そう、私たちは魔法学校では劣等生と呼ばれる存在だった。

 体術も魔法もダメダメ。そんなダメダメ3人組なのだ。


「私、飛翔の魔法で追いかけるよ!」


 ミミンが杖を構える。

 私は杖の前に手を出して、


「だめ。代わりに人形を作る魔法で、等身大の女性のを作ってほしい!」


「わ、わかった!」


 そう言うと、ミミンの杖は緑色に光だした。

 みるみる内に馬車の中に、女性の人形が出来上がっていく。

 ミミンは魔法の詠唱が終わると、疲れて座り込んでしまう。


「これでいい?」


「うん、ありがと。やっぱりミミンの魔法は繊細だ。人形もリアルで助かる」


 私は出来上がった人形を見てから、上の服と下の服を急いで脱ぐ。


「嬢ちゃん、何してるんだ!?」


 おじさんが赤面しながら驚く。

 無理もない私は、今下着の状態になっているのだから。


「私の服を人形に着せます。そして、その人形にゴブリンたちの囮になってもらいます。ゴブリンは人間の女の匂いに敏感なので、たぶん騙せるでしょう」


「あぁ、そういうことか・・・・嬢ちゃん、馬車の中にある俺の荷物中に服が入ってる。それを着ろ。女の子が下着で草原を駆け巡ったら、変態になってしまうぞ!」


「ありがとうございます」


 私は馬車の中にあるおじさんの荷物から、麻でできた服に着替える。

 私の服を人形に着せる。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 正義感振りかざして、ゴブリンの群れに突っ込んだ。

 結局、そこに助けを呼ぶヒロインはいなかった。

 俺はまんまと敵の罠にはまってしまったのだ。


 ゴブリンが俺の後ろに回り込んで、羽交締めしてくる。

 動けない。

 前からゴブリンがニターっと笑いながら近づいてくる。

 周りのゴブリンたちもケタケタ笑っている。


 木でできた棍棒で思いっきり殴られた。

 めちゃくちゃ痛い。そして恐怖も感じた。

 顔に赤い液体が滴る。

 それが自分の血だと認識した瞬間、死が近づいていることに鳥肌が立つ。


 走馬灯のように記憶が蘇ってくる。

 昔、俺は立派な獣人の戦士を目指していた。

 だが、挫折した。獣人のくせに俺は、力がなかった。

 みんなにバカにされた。

 だけど、あいつらはバカにしなかった。

 くるみとミミンが、情けない俺を救ってくれた。

 あいつらと過ごした日々、これから過ごすはずだった日々。

 あぁ、神様どうかあいつらともっと、一緒に歩ませてください。この人生を。


 ふと、さっき馬車でおじさんが話していたことが頭をよぎった。

「ダチに裏切られたんだよ」

 勝手に行動した俺を果たして、あいつらは助けてくれるだろうか・・・・。

 いや、助けてもらおうなんて、おこがましい考えだよな。

 あいつらだって、俺と同じで弱い。力を持っていない。


 でも、助けてほしいな・・・・。


「ガウガウ、ガ・・・・ガァぁぁぁぁぁ」


 急にゴブリンの拘束が解けた。

 ドサッと地面に体が落ちる。

 痛くて、半分しか開けない目で周りを見ると、人形のようなものがフワフワと浮いているのがわかる。

 その人形に向かってゴブリンの群れが動いていく。


 そして、耳に聞き慣れた声が入ってくる。


「ミラ、掴まって!!」


 なんと、さっきまで乗っていた馬車が猛スピードでこちらに向かってくる。

 その馬車から腕が伸びている。

 俺より華奢な腕、それはミミンのものだ。


「ミミン!!」


 俺は嬉しさのあまり叫んでいた。

 彼女の手を逃さまいと、捕まえる。ミミンが力を振り絞り馬車に引き上げる。


「はぁはぁ、よかった、生きてて」


 ミミンが息を切らしながら、安堵の声を漏らす。

 そう、俺は生きているのだ。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「これくらいで大丈夫かな・・・」


 私は魔力の宿った腕を下ろす。

 人形を操る初級魔法がどうやら役に立った。

 ゴブリンたちは、私の服を着た人形を追って別の方に行ってくれた。

 人形が偽物だとバレると元も子もない作戦だったが、どうやら成功したらしい。

 馬車もゴブリンたちにバレずに道を迂回することができた。


「ミラ、大丈夫?」


 私はミラの元に駆け寄る。

 ミラは痛みのせいか、さっきから涙を流している。


「くるみ、ミラの頭から血が出てる」


「そうだね。でも運が良かった。傷はあまり深くなさそう」


「良かった・・・・」


 私とミミンはお互いに胸を撫で下ろす。

 するとミラが、泣きながら口を開く。


「ごめェぇぇぇぇん、ごめェぇぇぇぇん」


「もう、泣きすぎだよ、情けないなぁ」


「泣き虫」


 私とミミンはミラの泣き顔を見ながら、クスクスと笑う。


「ミラ、これからは勝手な行動しないでね」


 私はミラにそういうと、彼は頭のツノをへなへなとさせた。

 そのツノって変幻自在なんだ・・・・。


「ごめん、もう勝手なことしないよ・・・・。助けてくれてありがと」


「礼はいらないよ。これから気を付けてくれればいいだけ。ミラが無鉄砲なバカなことは知ってるから・・・まぁ、そこが君のいいところだけど」


 ミラがまた泣き出してしまった。


「獣人種は自然治癒能力が高いが、一応傷口を消毒して包帯を巻いてやれ。俺の荷物の中にあるはずだ」


「おじさん、なんでも持ってますね。ありがとうございます」


「俺も礼なんていらないさ。俺はお前さんたちのことがますます大好きになったよ。俺にできることなら、なんでもやらせてくれ」


「ありがとうございます」


「・・・・おじさんもありがと」


 ミラが泣きながら、おじさんにお礼を言う。


「いいってことよ!」


 おじさんは笑い飛ばした。ミラはまた涙を流す。

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