第32話 商人連合の決断

エニグマ号が闇の教団の襲撃を退けた後、ゼノ・オスカーはアリシア・レヴァンティスとの再会を求め、商人連合の本部へと向かった。アリシアが商人連合の中でどれほどの影響力を持つかを確かめるためにも、彼女との対話が必要だった。


ゼフロンステーションの豪華な商業区域を抜け、ゼノはアリシアが待つ執務室に案内された。前回と同じく、彼女はエレガントな姿で彼を迎え入れた。


「お戻りいただけて光栄です、船長。」アリシアは微笑みながらゼノに手を差し出した。「無事に戻ってこられたようで何よりです。」


ゼノは彼女の手を軽く握り返し、席に着いた。「ここに来たのは、商人連合がこの襲撃に関与しているかどうかを確かめるためだ。」


「そのようなことは決してありません。」アリシアはすぐに否定した。「私たちは、取引のパートナーに対して誠実でありたいと考えています。ですが、闇の教団の影響力がここまで及んでいるということは、非常に憂慮すべき事態です。」


「ならば、あなた方も奴らと戦う覚悟があるということか?」ゼノは彼女の反応を探るように問いかけた。


アリシアは一瞬だけ考え込んだ後、静かに答えた。「商人連合は、利益と安定を最優先に考えています。ですが、この銀河が破壊されてしまえば、私たちの商業活動も意味を失うでしょう。そう考えると、あなた方と協力することは理にかなっています。」


「具体的には、どのような協力が可能だ?」ゼノがさらに踏み込んで尋ねた。


「補給と武器の提供に加え、我々の情報網を通じて敵の動きを監視し、あなた方にその情報を提供することができます。」アリシアは冷静に提案した。「ただし、我々にも見返りが必要です。エターナル・スピアの制御方法を共有していただけるのであれば、我々は全面的に協力を約束します。」


ゼノはしばらくの間、アリシアの提案について考え込んだ。エターナル・スピアの力は非常に危険であり、それを安易に他者と共有することには大きなリスクが伴う。しかし、商人連合の支援がなければ、次の戦いに勝つことは難しいだろう。


「あなたの提案には非常に魅力を感じますが、エターナル・スピアの力を共有することには慎重にならざるを得ません。」ゼノは真剣な表情で答えた。「この力は、間違った手に渡れば、銀河全体を破壊することになる。」


アリシアはその言葉に深く頷いた。「あなたの懸念は理解できます。しかし、私たち商人連合もまた、この銀河を守りたいと考えています。スピアの力を制御することで、銀河の安定を保つことができると信じています。」


「その信念が真実であることを願っています。」ゼノは静かに言った。「私たちはこの取引に慎重に臨むつもりです。まずは、あなた方の協力を試す機会をいただけないでしょうか?」


アリシアは再び微笑みを浮かべた。「もちろんです。私たちは共に行動することができると信じています。まずは、あなた方にとって有益な情報を提供しましょう。」


彼女は近くのコンソールを操作し、ゼノに最新の情報を共有した。そこには、闇の教団の動向やエテルニス帝国の戦略に関する詳細なデータが含まれていた。


「これは…有益な情報だ。」ゼノはそのデータを確認し、信頼を少しずつ築き始めた。「これで、次の一手を計画することができる。」


「私たちの目的は一致しています、ゼノ船長。」アリシアは静かに語った。「銀河の未来を守るために、あなた方と共に戦う覚悟があります。」


ゼノは彼女の言葉に頷き、立ち上がった。「では、次の行動に移ろう。私たちの船が完全に修復されたら、共に行動を開始しましょう。」


アリシアも立ち上がり、ゼノに手を差し出した。「共に勝利を手にしましょう、船長。」


ゼノはその手をしっかりと握り返し、新たな同盟がここに形成されたことを確信した。商人連合との協力が、銀河を救うための鍵となるかもしれない。彼は再びエニグマ号に戻り、クルーたちに新たな展開を伝えるべく準備を始めた。


次なる戦いは、単なる戦闘ではなく、銀河全体の未来を左右する重要な局面となるだろう。そして、その時が迫りつつあることを、ゼノは強く感じていた。

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