第29話 宇宙商人連合との接触
エニグマ号が闇の教団との激しい戦いから辛くも脱出した後、クルーたちは緊張と疲労の中で次の一手を模索していた。エターナル・スピアの力は一時的に抑えられたものの、船のシステムは未だに不安定で、エニグマ号は修復のために近隣の安全な場所を探していた。
「このままでは船の修復が進まない。」リラ・ナイトシェイドがシステムの再起動を試みながら言った。「どこかで補給し、船のメンテナンスを行わなければ、次の戦闘に耐えられない。」
「近くに安全な港があるか?」ゼノ・オスカー船長がヴァーゴ・キンタロスに問いかける。
「探してみます…おそらく、宇宙商人連合のステーションが近くにあるはずです。」ヴァーゴがデータベースを検索し、候補地を表示した。「ここです、ゼフロンステーション。銀河系でも最も重要な貿易ハブの一つです。」
「宇宙商人連合か…」ゼノは少し考え込んだ。「彼らが我々に協力してくれるかどうかは分からないが、試してみる価値はある。」
「商人連合は利益を最優先する連中です。」ケイド・ローガンが補足した。「ただし、こちらが何かしらの見返りを提供できれば、協力してくれる可能性は高い。」
「交渉は私に任せてください。」ナヴィ・エルドレッドが前に出た。「商人連合と何度も取引をしてきました。彼らの関心を引く方法を知っています。」
ゼノはナヴィに目を向けて頷いた。「君に任せよう。商人連合との交渉が成功すれば、我々にとって大きな助けとなる。」
エニグマ号はゼフロンステーションに向けて航路を設定し、慎重に接近した。ステーションは銀河中の商人たちで賑わい、巨大な宇宙港には無数の船が行き交っていた。ゼノとナヴィは、商人連合の代表との会談を求めて、ステーションのメインホールへと向かった。
ステーション内部は豪華で、至る所に商人連合の象徴が飾られていた。彼らは繁栄と富の象徴であり、銀河中のあらゆる商取引を支配していた。
「ナヴィ、ここに来るのは初めてか?」ゼノが周囲を見回しながら問いかけた。
「何度か来たことがありますが、ここまで緊張するのは初めてです。」ナヴィは軽く息をつき、彼女の経験に基づいて冷静に応えた。「商人連合は冷徹ですが、公正な取引には誠実です。私たちの目的をしっかりと伝えれば、必ず話を聞いてくれるはずです。」
彼らはやがて、商人連合の代表者であるケサール・トレイドーンの執務室に案内された。彼は中年の男性で、鋭い目つきと落ち着いた物腰が印象的だった。彼の背後には、商人連合のシンボルである巨大なホログラムが輝いていた。
「エニグマ号のクルーよ、ようこそゼフロンステーションへ。」ケサールが礼儀正しくも冷ややかな声で迎え入れた。「我々があなた方のような戦闘艦と交渉する機会は少ないが、話を聞かせていただこう。」
「私たちは、エテルニス帝国との戦いの中で、重大な損傷を受けました。」ナヴィが先に口を開き、交渉を始めた。「このままでは銀河を守る戦いに参加することができません。私たちには補給と修理が必要です。そして、その見返りとして…」
ナヴィはケサールの目を見つめながら、一瞬の間を置いて言葉を続けた。「…私たちが持つ情報と技術を、あなた方に提供します。」
ケサールはその提案に興味を示し、椅子に深く座り直した。「具体的にはどのような情報と技術をお持ちで?」
「エターナル・スピアに関する詳細なデータと、その制御方法です。」ナヴィが力強く応えた。「これは、銀河全体の未来を左右する情報です。あなた方の商取引にも大きな影響を与えることになるでしょう。」
ケサールはしばらく考え込んだ後、口を開いた。「確かに、それは非常に貴重な情報だ。しかし、あなた方が本当にその情報を持っているのか、確認する必要がある。」
「私たちの目的は明確です。」ゼノが一歩前に出て、ケサールに対して毅然とした態度で言った。「私たちは銀河の未来を守るために戦っています。そして、あなた方の協力がなければ、この戦いに勝つことはできない。」
ケサールはゼノの言葉を聞き終えると、微かに笑みを浮かべた。「いいでしょう。我々は商取引において誠実であることを誇りにしています。あなた方が本当にその情報を提供できるならば、我々は必要な補給と修理を行います。」
「感謝します。」ナヴィが深く礼をし、交渉が成立したことを示した。
「ただし…」ケサールが静かに付け加えた。「この取引が完了するまで、あなた方の船はここに留まっていただきます。我々はビジネスにおいて、何事も確実に行うことを求めます。」
ゼノはケサールの提案を受け入れ、再び礼をした。「もちろんです。取引が完了するまで、私たちはここで待機します。」
交渉が成立したことで、エニグマ号は無事に補給と修理を受けることができるようになった。しかし、この商人連合との取引がもたらす結果が、今後の戦いにどのような影響を与えるのか、ゼノとナヴィは慎重に見極めなければならなかった。
エニグマ号が修理と補給を受ける間、クルーたちは次なる戦いに備え、新たな情報を収集し始めた。銀河の未来を守るための戦いはまだ終わっておらず、彼らには再び立ち上がり、敵と対峙する覚悟が必要だった。
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