第28話 闇の神殿の最終決戦

エニグマ号のブリッジが一瞬の静寂に包まれる中、ノクターンが物質化した瞬間、全員の心に冷たい緊張が走った。彼の目には不敵な光が宿り、その冷徹な笑みが戦いの行方を予感させた。


「ここまで来るとは驚いたぞ、ゼノ・オスカー。」ノクターンがゆっくりとした口調で言った。「だが、ここが貴様の終焉の地となるだろう。」


ゼノは冷静にノクターンを見つめ返し、クルーたちに目配せをした。「全員、戦闘態勢に入れ。ここで奴を止める!」


ケイド・ローガンが真っ先に反応し、レーザーライフルをノクターンに向けて発砲した。だが、その瞬間、ノクターンの周囲に薄暗いシールドが現れ、すべての攻撃を無力化してしまった。


「無駄だ。」ノクターンが冷たい笑みを浮かべる。「私には、エターナル・スピアの力が宿っている。貴様らの力では、この盾を破ることはできない。」


「スピアの力だと…?」ゼノが驚きと怒りを抑えきれずに呟いた。


「そうだ、ゼノ。貴様らが必死に守ろうとした力を、私は手に入れたのだ。」ノクターンは誇らしげに言い放った。「これが私の支配の始まりだ。銀河全体が私の足元にひれ伏すことになる。」


リラ・ナイトシェイドが即座にデータを解析し始めた。「このシールド…エターナル・スピアの力を利用しているなら、その供給源を断てば無力化できるかもしれない!」


「リラ、手遅れになる前に何とかしてくれ!」ゼノは焦りの色を見せながらも、冷静さを失わずに指示を出した。


「時間を稼ぐ必要がある!」ケイドが自ら前に出て、ノクターンの注意を引こうとした。


ノクターンは嘲笑を浮かべながら、軽く手を振るだけでケイドを弾き飛ばした。「無駄な抵抗だ、ローガン。私には通用しない。」


ケイドは地面に叩きつけられたが、すぐに立ち上がり、再びノクターンに向かっていった。「俺は諦めない。お前をここで止める!」


「皆、集中して!」ゼノはクルーたちに呼びかけた。「リラがシールドの弱点を見つけるまで、時間を稼ぐんだ!」


クルーたちはノクターンの攻撃を回避しながら、必死に彼を引きつけた。その間、リラはシールドの解析に集中し、スピアの力の源を突き止めようとする。


「少しだけ時間をくれれば…」リラが汗を拭いながら呟いた。「見つけた!エネルギー源は彼の右腕に集中している。そこを狙えば、シールドを破れる!」


「よし、全員、右腕を狙え!」ゼノが即座に指示を出し、クルーたちは一斉にノクターンの右腕に攻撃を集中させた。


一瞬の間、ノクターンのシールドが揺らぎ、その隙を突いてケイドが一撃を放った。右腕に直撃したその一撃により、シールドが完全に消滅した。


「やったか…?」ケイドが息を切らしながらも、手応えを感じた。


だが、ノクターンは笑みを消さずに立ち上がり、今度は自らの全力を解放しようとしていた。「貴様らの愚行が、私をさらに強くしただけだ。」


突然、ブリッジ全体が激しく揺れ、船内のあちこちで警報が鳴り響き始めた。ノクターンはエターナル・スピアの力を解放し、エニグマ号全体を崩壊させようとしていたのだ。


「この船を道連れにしてやろう。銀河と共に消え去るがいい。」ノクターンが不敵な笑みを浮かべながら宣言する。


「何てことだ…!」ゼノが絶望感を抑えつつも、冷静さを取り戻し、全員に指示を出した。「全員、退避するんだ!このままでは船が持たない!」


「まだ諦めるな、ゼノ!」リラが必死に言葉を発した。「エターナル・スピアの力を逆転させれば、彼を消滅させることができるかもしれない!」


「そんなことができるのか?」ゼノが問いかける。


「リスクは大きいけれど…やるしかない!」リラは必死にスピアの力をコントロールしようと、システムにアクセスを試みた。


「リラ、君に全てを託す!」ゼノが力強く言い放ち、クルーたちに最後の戦闘準備を命じた。「全員、最大限の力でノクターンを抑えるんだ!」


クルーたちは力を振り絞り、ノクターンに向かって最後の攻撃を仕掛けた。リラがスピアの力を逆転させるまで、どれほどの時間が残されているか分からないが、全員が銀河の未来を守るため、最後の一撃を放つ覚悟を決めていた。


「これで…終わらせる!」ケイドが叫びながら、ノクターンに向かって突進した。


その瞬間、ブリッジ全体が光に包まれ、ノクターンの姿がゆっくりと消え始めた。リラがついにスピアの力を逆転させたのだ。しかし、その代償として、エニグマ号もまた崩壊の危機にさらされることとなった。


「リラ、何とかしてくれ…!」ゼノが祈るように叫んだ。


光が収まり、ブリッジは再び静寂に包まれた。ノクターンの姿は完全に消滅し、エターナル・スピアもその力を失ったようだった。しかし、エニグマ号はまだ危機から脱していない。


「リラ、どうなっている?」ゼノが問いかけると、リラは疲れ切った声で応えた。「システムはまだ不安定だけど…もう少しで安定化できるはず…」


全員が一瞬の安堵を感じたその時、再びブリッジに異常が発生し、警報が再び鳴り響き始めた。


「まだ終わっていない…!」ゼノが叫んだ。


次なる危機が迫る中、エニグマ号のクルーたちは銀河の運命を背負い、最後の戦いに挑む準備を進めていた。

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