第6話 目覚めた力

エニグマ号はエプシロン星系に接近し、異常なエネルギー反応の中心へとゆっくりと進んでいた。船内は戦闘態勢に入り、クルー全員が緊張感を持ちながらそれぞれのポジションで待機していた。外部センサーが感知した強力なエネルギー反応は、船内のモニターに脈動する赤い点として表示されており、その正体が何であるか、ゼノ・オスカーは確かめる必要があった。


「エネルギー反応が増幅している。何かが確実に目覚めつつある。」ヴァーゴ・キンタロスが報告した。その声には、状況の深刻さがにじみ出ていた。


「シールドを最大出力にして、エネルギーの波動に備えてくれ。」ゼノは冷静な声で指示を出した。「これから何が起こるのか分からないが、準備を怠るわけにはいかない。」


リラ・ナイトシェイドは、サイバネティックシステムを操作し、全センサーを集中させてエネルギー源を解析していた。「このエネルギーは、ただの放射線ではありません。何か…古代の力を再起動させるためのキーが働いているようです。」


「そのキーは、我々が持っている破片と関連しているのか?」ケイド・ローガンがリラに尋ねた。


「可能性は高いわ。破片のエネルギー反応が、この領域のエネルギーに共鳴しているのが確認できる。でも、それが何を引き起こすかは…」リラは言葉を濁しながら、ゼノに目を向けた。


「我々は目覚めた力を理解し、それが銀河に与える影響を見極める必要がある。」ゼノは決意を込めて言った。「ヴァーゴ、最も近いポイントまで進んでくれ。その後、手動でさらに接近する。」


エニグマ号はエネルギー反応の源に向かってさらに進み、ついにその中心にある巨大な構造物を発見した。それはまるで宇宙空間に浮かぶ古代の城塞のようで、無数の石板や柱が絡み合い、何かを守るように配置されていた。


「これは…ただの遺跡ではない。」エリサ・トールが驚きの声を漏らした。「ここには、古代文明が築いた何かが眠っている。」


「船長、異常なエネルギーがさらに強まっています!」ヴァーゴが警告を発した。彼の声には、明らかな警戒心が表れていた。


「ケイド、エリサ、リラ、私と共にこの構造物に降りる。」ゼノは決断し、再びランディングクラフトの準備を整えた。「ヴァーゴはエニグマ号で待機し、何かあればすぐに脱出できるようにしておいてくれ。」


クルーたちは迅速に動き、ランディングクラフトに乗り込んだ。クラフトは静かに構造物へと接近し、その中にあると思われる中心部へと降下を開始した。彼らが着陸した場所は、広大なホールのような空間であり、中央には巨大な装置が鎮座していた。


「この装置がエネルギーの源か。」ケイドが慎重に周囲を見渡しながら言った。


「そのようです。装置の一部に、私たちが持っている破片と同じ形状の穴が開いています。」リラがデータを確認しながら補足した。


ゼノは、持参した破片を慎重に装置の穴に合わせた。そして、ゆっくりと破片を差し込むと、装置全体が青白い光を放ち始めた。光は徐々に強まり、周囲の石板や柱が震え出すのを感じた。


「何かが起こっている…」エリサが息を呑みながら呟いた。


次の瞬間、装置から放たれた光が構造物全体に広がり、クルーたちはその場で動けなくなった。強烈な光の中で、ゼノの意識は遠のいていく。彼の脳裏には、遥か昔の記憶のような映像がフラッシュバックした。


ゼノが気がつくと、彼は不思議な空間に立っていた。そこは現実とは異なる次元のようで、全てが青白く輝いていた。目の前には、巨大な存在が立っており、その姿はかつてないほど神秘的で恐ろしかった。


「私は、この宇宙の守護者…」存在が低い声で語りかけてきた。「あなたが目覚めさせた力は、全てを変える鍵となる。しかし、その力を制御できるかどうかは、あなた次第だ。」


ゼノはその声に圧倒されながらも、必死に意識を保った。「私は、銀河を守るためにこの力を解き明かすつもりだ。そのために、あなたの助けが必要だ。」


存在はしばらくの間沈黙し、やがて再び口を開いた。「ならば、試練を受け入れよ。この力を理解し、制御するには、真の知識と覚悟が必要だ。」


その言葉と共に、ゼノの意識は再び現実へと引き戻された。彼が目を開くと、クルーたちが彼の周りに集まり、不安そうに見つめていた。


「ゼノ、無事か?」ケイドが心配そうに尋ねた。


「私は…大丈夫だ。しかし、この力には想像以上の影響がある。私たちは、さらに深く探求する必要がある。」ゼノはゆっくりと立ち上がり、再び装置を見つめた。


「次の目的地は決まった。この装置が指し示す方向に進む。我々は、全ての真実を知るために、この旅を続ける。」


クルーはそれぞれ頷き、ランディングクラフトに戻ってエニグマ号に帰還した。彼らの次なる旅路には、さらに大きな試練と謎が待ち受けていることを、全員が感じていた。


エニグマ号は、新たな目標に向けて再びそのエンジンを鳴らし、銀河の深淵へと進んでいった。銀河の運命を握るその力が、いよいよ覚醒しつつあった。

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