第5話 覚醒の兆し
エニグマ号は、次の目的地である「エプシロン星系」へと航行を続けていた。船内は戦闘後の修復作業に追われ、クルーたちはそれぞれの持ち場で忙しくしていたが、心のどこかでこの平穏が長く続かないことを感じていた。ゼノ・オスカーは、破片のさらなる分析に没頭し、その中に秘められた謎を解き明かそうとしていた。
ブリッジでは、ヴァーゴ・キンタロスが新しい航路の確認を行っていた。彼は星図を見つめ、エプシロン星系に到達するまでの時間を計算していた。
「エプシロン星系まであと8時間。到着次第、軌道上からのスキャンを開始します。」ヴァーゴは冷静に報告した。
「このエリアもまた危険な場所だろう。我々は気を引き締めて進むべきだ。」ケイド・ローガンがブリッジに現れ、ヴァーゴの報告に応じた。彼の顔には依然として戦闘の疲労が残っていたが、その目は鋭く、次の戦いに備えていた。
「リラ、破片の分析は進んでいるか?」ゼノはリラに声をかけた。
「ええ、破片にはかなりの情報が詰まっているようです。ただ、すべて解読するには時間がかかりそうです。」リラ・ナイトシェイドは、端末を操作しながら答えた。彼女の指は動きを止めることなく、データを解析し続けていた。
その時、ブリッジの通信システムが再び鳴り響いた。今回の信号は、先ほどの敵とは異なる、未知のものだった。リラは即座に端末に接続し、信号を解析した。
「これは…どうやら銀河連邦からのものです。」リラが報告した。「ただ、内容が非常に不鮮明で、まるで何かに妨害されているようです。」
「銀河連邦から?こんな場所で?」ケイドが疑問を投げかけた。
「何かがおかしい。通常、こんな遠方まで連邦の信号が届くはずがない。」ゼノは考え込みながら、通信の内容を画面に映し出すよう指示した。
モニターには、断続的に途切れた映像が映し出された。そこには、銀河連邦の制服を着た人物が映っており、何かを必死に伝えようとしているようだった。しかし、その言葉は途切れ途切れで、何を言っているのか判然としなかった。
「解析を続けるが、この映像が本物かどうかも含めて慎重に判断する必要がある。」リラは映像のデータを細かく調べ始めた。
「もしこれが罠なら、すぐに動けるよう準備しておこう。」ケイドはリラの言葉に同意し、警戒を怠らないよう指示を出した。
映像が途切れた後、ブリッジには再び緊張感が漂った。ゼノは映像の断片を思い出し、そこに映っていた人物の顔がどこか見覚えがあることに気付いた。
「ヴァーゴ、エプシロン星系への航路を維持しつつ、注意を怠らないように。」ゼノは冷静に指示を続けた。「我々は何か大きな謎に直面しているようだ。全員、最悪の事態に備えておいてくれ。」
クルーたちは、それぞれの任務に戻り、慎重に作業を進めていた。ゼノは再び破片の解析に戻り、リラと共にそのデータを解読しようと試みた。
「ゼノ、このデータは単なるエネルギー変換ではなく、何かを目覚めさせるための装置の一部かもしれないわ。」リラが解析結果を見つめながら言った。
「目覚めさせる…?それは、眠っている何かを起動させるということか。」ゼノは目を細め、データを再度確認した。
「この装置が全て揃った時、何が起きるのかは未知数です。でも、確実に言えるのは、その力がとてつもなく強大であるということ。」リラの声には、微かな恐怖が含まれていた。
ゼノはその言葉に思考を巡らせた。彼らが直面しているのは、単なる古代の遺物ではなく、銀河全体に影響を与える可能性がある何かであることを理解し始めていた。
その時、エニグマ号の外部センサーが何かを感知した。ヴァーゴが即座に反応し、スクリーンに表示した。「船長、エプシロン星系の近くに異常なエネルギー反応を感知しました。どうやら、何かが目覚めつつあるようです。」
ゼノはその報告に深く息を吐き、クルー全員に向けて冷静な声で命じた。「全員、戦闘態勢に入れ。我々は、何が待ち受けているのかを確認する。」
エニグマ号は、その運命的な瞬間に向かって進んでいった。銀河の深奥で、かつてない脅威が静かに目を覚まそうとしていた。
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