第4話 衝突と真実の兆し
エニグマ号は、神殿の崩壊から辛くも逃れ、惑星の軌道上に戻っていた。ゼノ・オスカーは、アーティファクトの破片を手に入れたものの、その代償は大きかった。クルーは一様に疲労し、緊張の糸が切れかけていた。彼らは、この未知のエネルギーを持つ破片が何を意味するのか、そして次に何が待ち受けているのか、皆がその答えを欲していた。
ゼノはブリッジに戻り、アーティファクトの破片を調査室に運び込んだ。彼の後ろには、ケイド、リラ、そしてエリサが続いていた。ブリッジの光が淡く照らし、艦内には緊張感が漂っていた。
「これが全ての鍵かもしれないが、まだ何も分からない。」ゼノは、破片を慎重に分析装置にセットしながら言った。
「でも、これで少なくとも次の手が見えてきたわけだ。」リラが言いながら、端末を操作して分析の進行状況をチェックした。
「この破片が、何かのエネルギー源になっているのは確かだ。だが、その性質を解明しなければ、どう利用すれば良いのか分からない。」エリサがスクリーンを見つめながら補足した。
「それよりも、俺たちはいつまで持ちこたえられるんだ?」ケイドが少し苛立ちを見せて尋ねた。「俺たちはこれまで何とか乗り切ってきたが、次の襲撃に備えるには限界がある。」
「ケイドの言うことも一理あるわ。」リラは同意しながら、ゼノに向き直った。「私たちはこの破片を分析する時間が必要だけど、それをする前に、このエリアを離れるべきかもしれない。」
ゼノは一瞬考えた後、静かに頷いた。「確かに、安全を優先するべきかもしれない。だが、オメガ領域から離れるわけにはいかない。ここにはまだ解明すべき謎が残っている。」
その時、通信システムが突如としてアラートを発した。ヴァーゴがスクリーンを確認し、顔を曇らせた。「船長、我々に接近する未確認の宇宙船がある。速い…そして、こちらに武器をロックオンしている。」
ゼノの眉が鋭く動いた。「即座にシールドを最大出力に。敵の正体を確認できるか?」
「信号を解析中ですが…どうやら、さっきコンタクトした異星種族とは別の勢力のようです。」リラが報告しながら手を早く動かしていた。
「警戒を強化しろ、攻撃が来る可能性が高い。」ゼノはブリッジ全体に指示を飛ばした。
エニグマ号のクルーは、それぞれのポジションで緊張感を持って準備を整えた。船内の照明が戦闘態勢を示す赤色に変わり、空気が一層張り詰めた。
「接触まであと10秒…5秒…」ヴァーゴが緊張した声でカウントダウンを始めた。
次の瞬間、敵の宇宙船から強力なエネルギー弾が発射され、エニグマ号のシールドに衝撃が走った。船体が激しく揺れ、クルーたちは各々のコンソールにしがみついた。
「シールドの一部が損傷しています!すぐに修復に取り掛かります!」アラン・ヴェガが叫び、機関室で必死にシステムを修復していた。
「反撃するぞ!全火力を集中して反撃開始!」ケイドが叫び、武器システムを作動させた。エニグマ号の砲台が火を吹き、敵の船に向けて強力なレーザーが放たれた。
激しい戦闘が繰り広げられる中、ゼノは一瞬の隙をついて、破片の分析結果を確認するためにスキャンを続けていた。彼の脳裏には、先ほどの神殿で見た異常な光景がフラッシュバックしていた。
「船長、分析結果が出ました!」リラが緊張の中で報告した。「この破片には、高度なエネルギー変換機構が組み込まれていて、何か別の力を増幅する役割を持っています。もしかしたら、もっと大きなものが存在しているかもしれません。」
「それが何か…まだ完全には分からないが、この領域にいる以上、全てのピースを集めなければならない。」ゼノは戦闘の激しさにも動じず、冷静に次の指示を出した。「この戦いを乗り切り、次のポイントに向かう準備をしよう。」
エニグマ号は敵の攻撃をかわしつつ、反撃を続けた。クルー全員が一丸となって戦闘を乗り越え、敵船のシステムを無力化することに成功した。その瞬間、敵船は後退を開始し、エニグマ号のセンサーから消えていった。
ブリッジには、戦いが終わった直後の静けさが戻った。クルーたちは疲れた表情を浮かべながらも、何とか無事に切り抜けたことに安堵していた。
ゼノは、再び破片を手に取り、それを静かに見つめた。「この破片が示す道をたどれば、真実にたどり着けるだろう。我々は次の目的地に向かう。」
「了解。新たな航路を設定します。」ヴァーゴが冷静な声で応じた。
エニグマ号は再び航行を開始し、次なる未知の領域へと向かって進み始めた。銀河の秘密が、少しずつ明らかになろうとしていた。
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