第3話 謎の惑星

エニグマ号は、オメガ領域内に点在する星々の間を進んでいた。異星種族とのファーストコンタクトから数日が経過し、クルーは緊張感を保ちながらも、次の目的地である「シグマ星系」へと向かっていた。そこには、古代アーティファクトが眠るとされる惑星があるという情報があった。


ブリッジの観察窓からは、ゆっくりと回転する紫色の惑星が見えてきた。その表面は滑らかで、まるで水晶で覆われているかのような輝きを放っていた。ゼノ・オスカーはその光景を見つめ、慎重にデータパッドを操作して、惑星の詳細なスキャンを始めた。


「惑星表面に異常なし。大気はわずかに酸素を含むが、呼吸可能なレベルではない。地表に古代文明の痕跡が存在する可能性があります。」ヴァーゴ・キンタロスが、スキャン結果を報告した。


「着陸準備に入る。リラ、ドローンを使って表面を調査し、安全を確認してくれ。」ゼノは指示を出し、画面に映し出される惑星の地表に集中した。


「了解。」リラ・ナイトシェイドは、素早く手元の端末を操作し、ドローンを発進させた。数台のドローンがエニグマ号から飛び出し、静かに惑星の大気圏へと突入していく。


ゼノは、ドローンから送られてくる映像を注視していた。地表には巨大な遺跡のような構造物が広がっており、まるで何千年も前に忘れ去られた都市のようだった。その一角には、奇妙な石碑が立ち並び、古代の文字が刻まれているのが見えた。


「これは…ただの遺跡ではない。」ゼノはつぶやいた。彼の直感は、この場所が単なる過去の遺産ではなく、何か重要な秘密を隠していることを告げていた。


「ドローンからのデータによると、遺跡の内部に強力なエネルギー反応が検出されました。どうやらアーティファクトが存在する可能性が高いです。」リラが報告した。


「ケイド、エリサ、リラ、私と共に降りる。ヴァーゴ、エニグマ号で待機し、何か異常があればすぐに知らせてくれ。」ゼノは即座に決断し、ブリッジを後にした。


クルーは迅速に準備を整え、エニグマ号のランディングクラフトに乗り込んだ。ランディングクラフトは、静かに惑星の地表に降下していく。彼らの目の前には、無数の石碑が立ち並ぶ広場が広がり、その中心に巨大な神殿が聳え立っていた。


「まるで異世界に迷い込んだようだな。」ケイドが低く呟く。彼の目は神殿の入り口に向けられており、その奥から放たれるかすかな光を見逃していなかった。


「この遺跡は、私たちが想像していた以上に古い。しかも、明らかに何かを守っているように見える。」ゼノは慎重に進みながら、周囲の状況を観察していた。


クルーはゆっくりと神殿の入り口に近づいていった。内部は薄暗く、冷たい空気が漂っていたが、その奥からは微かに光が漏れていた。ゼノは手に持ったポータブルスキャナーで、内部のエネルギー反応を再確認した。


「エネルギー源は神殿の最奥部にあるようだ。私たちの目指すアーティファクトがそこにあるはずだ。」ゼノは前を見据え、クルーに指示を出した。「進もう。慎重に、しかし迅速に。」


彼らが神殿の奥に進むにつれて、周囲の空間が歪んでいくのを感じた。まるで時間がゆっくりと流れているかのような感覚に陥り、クルーは互いに顔を見合わせた。


「何かがおかしい…この場所は普通ではない。」エリサが不安げに呟いた。


「気を引き締めて。もうすぐだ。」ゼノは冷静さを保ちつつ、クルーを鼓舞した。


やがて、彼らは神殿の最奥部に到達した。そこには、巨大な台座の上に、異様な輝きを放つアーティファクトが鎮座していた。アーティファクトは、まるで生きているかのように脈動しており、その周囲には奇妙な文字が刻まれていた。


ゼノはゆっくりと手を伸ばし、アーティファクトに触れようとしたその瞬間、神殿全体が激しく揺れ始めた。天井からは細かな砂や石が降り注ぎ、台座に置かれたアーティファクトが青白い光を強く放ち始めた。


「みんな、後退しろ!」ゼノは叫び、クルーに退避を命じた。


突然、アーティファクトから強烈なエネルギーが放出され、クルーはその衝撃波に巻き込まれそうになった。神殿の構造が崩れ始め、巨大な石材が落下してくる。


「ここから脱出するぞ!」ケイドが叫び、クルーは全力で神殿の入り口へと走り出した。彼らが神殿を脱出した瞬間、後ろで大きな轟音が響き、神殿は完全に崩壊した。


息を切らしながら、ゼノとクルーは地面に倒れ込み、荒い呼吸を整えた。彼らの目の前には、崩れ去った神殿の廃墟が広がっていた。


「間一髪だったな…」ケイドが苦笑しながら、肩をすくめた。


ゼノはゆっくりと立ち上がり、崩れた神殿の跡を見つめた。彼の手には、わずかながらもアーティファクトの一部が握られていた。


「これが鍵だ。」ゼノはその破片を見つめ、静かに言った。「次の目的地が待っている。」


クルーは再びエニグマ号に戻り、次なる冒険の準備を整え始めた。彼らの旅はまだ始まったばかりであり、銀河の運命を左右する壮大な謎は、まだ解かれることなく彼らを待ち受けていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る