第3話:ぶっ壊れ令嬢クリスティア

 アルカトラズで預かっている子供の叱られシュンとなっているクリスティアを見てシスター達全員が呆然としていると、子供達の仲で1番歳上のケビンがシスター達に気づいて声をかける。


「修道女長様に皆様。もしかして、クリスティアさんの事で?」


察しのいい彼はシスター達がクリスティアに会いに来たと思いそう声をかける。


「えぇ……その通りだけど……この状況は何……?」


シスターヘレンの言葉にケビンは苦笑を浮かべ事情を説明した。


 シスターリリーが戻るまで待つように言われたクリスティアは言葉通りにその場で待機していたのだが……


「なぁなぁ!姉ちゃん!一緒に遊ぼうぜ!」


「えっ?私?」


子供達の中で1番ヤンチャでガキ大将的な存在のマークに声をかけられ、クリスティアは自分を指差してそう言う。


「ちょっ!?バカ!どういう人かも分からない人を遊びに誘うんじゃないわよ!」


女子グループのリーダー的存在であるミーシャがマークを叩いてそう叫ぶ。


「ってぇ!別にいいじゃん!姉ちゃんだってただ待ってるだけじゃ退屈だろ!!」


「だからってあんたねぇ!もうちょっと警戒心を持ちなさいよ!警戒心を!!」


「警戒心もなにも!そもそもこの姉ちゃんのおかげで俺達無事だったんだろ!だったら悪い奴じゃねぇじゃん!」


「だからあんたは単純で単細胞なのよッ!!」


「んだとぉ!!?」


 マークとミーシャが言い合いの喧嘩を始め、クリスティアはオロオロとするも、マークとミーシャの喧嘩は日常茶飯事なので、周りの子供達は苦笑を浮かべて見守っていた。

 すると、1人の男の子がクリスティアに近づき、クリスティアの服を引っ張り


「お姉さん。一緒に遊ぼう」


クリスティアの服を引っ張った男の子ロビンが、クリスティアを見ながらそう言った。ロビンの言葉に子供達だけでなく、先程まで口喧嘩していたマークとミーシャも驚いてそちらを見た。


「ロビン……あんた……」


「ほら!ロビンもこう言ってんだ!姉ちゃんも一緒に遊ぼうぜ!!」


 ロビンの言葉に早速同調するようにクリスティアの腕を引っ張る。クリスティアはどうしていいか分からずにいると


「良ければお姉さんも一緒に遊びませんか?」


 1番の年長者であるケビンがクリスティアにそう声をかけた。


「ケビンお兄ちゃんまで……もう……好きにしなさいよ……」


「っしあぁ!?決まり!姉ちゃん!石鬼しようぜ!!」


マークはそう言うと、石鬼で遊ぶ提案をする。周りの子供達は賛成の声をあげる。だが、肝心のクリスティアは


「えっと……石鬼って何……?」


本当に分からずに首を傾げてそう言った。


 石鬼とは平民の子供達の間で流行っている遊びで、まずは鬼を1人決め、鬼以外の子が石を蹴る。鬼が飛んで行った石を探している間に、鬼以外の子は隠れ、鬼は隠れている子を探し、見つけたら石を足でタッチする。全員を見つけたら鬼の勝ち。鬼に見つからずに3回石を蹴られたら鬼以外の者の勝利という遊びである。


「とりあえず今回は俺が鬼やるから!姉ちゃんが石を蹴ってくれよ!」


マークがそう言って少し大きめの形が変わった石をトントンと足で踏む。


「えっと……とりあえずこの石を蹴ればいいの?」


「おう!隠れる時間を稼ぐ為にも思いっきり蹴ってくれよな!」


「ん……それじゃあ…………せいッ!!!」


クリスティアが思いっきり蹴った石は、それだけで木っ端微塵に砕け散った。あまりの光景に子供達はしばし呆然と立ち尽くした。

 その後も、クリスティアが蹴る度に木っ端微塵に砕けたり、とんでもない所まで吹っ飛んでいったりした為、ミーシャに説教を受ける事になったのである。ただ、男の子達の間では大絶賛であったのだが……



ケビンの説明を受け、クリスティアのあまりの常識外の行動に再び呆然となるシスター達。ただ、修道女長であるセレーナだけがケビンに声をかける。


「ロビンはずっとあぁやって彼女に引っ付いているのですか?」


セレーナは正座してシュンとなっているクリスティアにくっ付いているロビンを指差して尋ねる。


「えぇ、はい。信じられない事ですが……」


「そうですか……」


セレーナだけはそれだけ答えると、クリスティアに近づいて行く。セレーナがクリスティアに近づいた事で他の子達も気づいて騒ぎ始める。


「あっ!修道女長様!修道女長様も一緒に遊びませんか!?」


「ふふふ……ごめんなさいね。ちょっと彼女に用があるので彼女と話させてくださいね。貴女がクリスティアさんですか?」


「あっ、はい。そうですが……」


「私はこねアルカトラズの最高責任者で修道女長のセレーナです。クリスティアさん。お話を聞かせていただいてもよろしいですか?」


 セレーナは微笑みを浮かべクリスティアにそう声をかけた。


 

 


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