第2話:シスター会議①

 アルカトラズ内、修道女長室。ここに、アルカトラズにいるシスター全員が集まり、シスターリリーの報告を受けていた。


「はぁ!?クリスティア・フレイムローズですって!?」


シスターリリーが報告し終えると、アルカトラズの副修道女長を勤めるシスターヘレンが応接用の机を叩いて叫んで立ち上がる。

 シスターリリーはシスターヘレンの反応にビクッとなりながらも尋ねる。


「ヘレンさんは彼女の事をご存知なんですか?」


 シスターリリーの言葉に、シスターヘレンは一つ溜息をつき、腕を組みながら音を立てて椅子に座る。


「アルゼディア王国で有名な極悪令嬢の名前よ。曰く、使用人に暴言を吐いて虐げてるとか、実の双子の妹を裏で虐げてるとか、婚約者がいるにも関わらず男を取っ替え引っ替えしてるとか」


「えっ?とてもそんな娘には見えませんけど……?」


先程出会ったクリスティアとシスターヘレンの話が結びつかず首を傾げるシスターリリー。


「流石だなぁ。よくもまぁ他国の情報まで仕入れてるもんだ」


苦笑しながらそう言ったのは、アルカトラズの家政長のシスターマリーダ。


「……昔からの癖よ。情報を収集常にしとかないと気が済まないのよ」


「そのおかげで色々助かってるからいい癖だよ。けどまぁ、今はそんな事よりも彼女をどうすかだな」


「当然!!追い返すに決まってるでしょ!!」


「えっ!?いや!?それはちょっと可哀想では!?」


 シスターヘレンの言葉にシスターリリーは思わずそう返すと、シスターヘレンはキッとシスターリリーを睨む。


「リリー!貴女だってここがどういう場所か分かってるでしょ!ここに極悪令嬢なんて呼ばれてる奴を置いておく訳にはいかないわよ!!」


「えっ!?あっ!?いや……でも……」


シスターヘレンに迫られてシスターリリーは言葉に詰まる。彼女もこのアルカトラズがどういう場所か分かっている為、シスターヘレンの言葉に何も言い返せなかった。


「まぁまぁ。落ち着け。修道女長様はどうされますか?」


 シスターマリーダはそう言って、このアルカトラズの最高責任者でもある修道女長セレーナを見る。シスターリリーとシスターヘレンもセレーナの方を向きセレーナの言葉を待つ。


「……そうですね。とりあえず彼女に会ってみましょう」


「修道女長!!」


セレーナの言葉を受け、シスターヘレンは立ち上がり反論しようとするが、セレーナは穏やかな微笑みを浮かべ


「シスターヘレンの気持ちも分かります。ですが、今すぐ彼女を追い返して魔物が蔓延る場所に再び放り込むのですか?」


このアルカトラズは、霊峰山の山頂付近にあり、霊峰山内には強力な魔物が蔓延っている。アルカトラズ内は強力な結界がある為、滅多に魔物が入ってくる事はないが、アルカトラズを出たら魔物が蔓延る場所を下山しなければならなくなる。


「例え相手が極悪と呼ばれている人物とは言え、死地へと送るようなマネを主に仕える身たる我々がする訳にはいきません。とにかく、まずは彼女に会ってみましょう。シスターリリー。彼女は今何処に?」


「あっ!はい!彼女は……」












「ちょっと!?クリスちゃん!いい加減にしなさい!!」


「はい!?ごめんなさいッ!!?」


話題に上がっていたクリスティアは、世話焼きそうな女の子に説教を受け正座して謝罪していた。


「……何……この状況……」


あまりの光景に全員ポカンとしながらも、シスターヘレンはポツリと呟くようにそう言った。

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