追放極悪令嬢と呼ばれた少女はシスターとしてマイペースに暮らしたい

風間 シンヤ

第1話:最北の修道院にやって来た令嬢

 聖王国セレスティア。その最北にある修道院アルカトラズ。ここは、別名犯罪者の墓場と呼ばれ世界中に知れ渡っていた。

 だが、そんな物騒な名前で呼ばれているとは思えない程、1人のシスターが子供達に絵本を読み上げるという穏やかな光景がそこにはあった。


「……そして、聖剣を携えた勇者は世界に蔓延る魔を祓い、世界を救ったのでした……めでたしめでたし」


シスターは絵本を読み終え本を閉じた。シスターの本を読み終えた瞬間、子供達は騒ぎ始める。


「かあぁ〜!やっぱり『聖剣勇者物語』は最高だぜ!俺も聖剣を携えた勇者になりてぇ!」


「何言ってんのよ!あんたみたいなのが勇者になれる訳ないでしょ!」


「んだと!?」


「ねぇ!シスターリリー!もっかい読んで!読んで!」


子供達の喧騒に微笑みを浮かべるリリーと呼ばれたシスターは、もう一度読んでと強請る子供に声をかける。


「ごめんね。今日はここでお終い。それで次は……ッ!?」


子供達に次の予定を伝えようとしたシスターリリーだったが、何かに気づき子供達に指示を出す。


「皆!?すぐに建物の中に避難して!?」


シスターリリーはすぐに子供達を建物の中に避難するように言う。子供達はシスターリリーの言葉に頷きすぐに建物の中へ移動を開始するが……


「グガアぁぁぁぁ〜ーーーーー!!?」


オークと呼ばれる魔物が何故か焦ったような顔をしてシスターリリー達の所に走ってきたのである。


(ダメ!?間に合わない!?主よ!私はどうなっても構いませんが子供達だけでもお救いください!!)


シスターリリーはそう神に祈りながらも、子供達だけでも守るように前に出る。


「……このおぉ〜!逃げるなぁ!!私の食料!!!」


すると突然、謎の少女の声がしたのと同時に、オークの頭上に何者かが、踵落としを炸裂させると、オークはその一撃を受けて倒れた。

 シスターリリーは何が起こった分からず混乱していると、目の前には美しい金髪の紫の瞳をした少女が立っていた。


「ふぅ、ようやく久しぶりのお肉ゲットだぜぇ!」


その少女はかなりの美少女なのにヨダレを垂らしながら意気揚々とオークを解体しようとし始める。

  あまりの事に驚いてしばらく言葉が出なかったシスターリリーは、ハッとなって少女に声をかける。


「あっ……あの!?助けていただきありがとうございます!ですが、貴女は一体……?」


シスターリリーに声をかけられ、ようやく人がいるのに気づいた少女はシスターリリーを見る。


「シスターさん?という事は……ここはアルカトラズですか?」


「えっ?あっ、はい。そうですが……」


少女に逆に質問され、シスターリリーは素直に返答する。すると、少女は立ち上がりお辞儀をする。


「あの……今日からここに行くように言われたクリスティア・フィムローズです!よろしくお願いします!」


「へっ……?」


少女クリスティアの自己紹介を受け、シスターリリーはポカンとなる。


  何故なら、彼女はアルゼディア王国で有名な極悪令嬢と呼ばれている少女だったのである。


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