第三話 本当の事

(.......ん ...生きて...る? ) 


重い瞼をこじ開ける

  ここは....奴のアジトだろうか

椅子に頑丈に固定されていた。

目の前にはアクリル板 その向こうにはさっきのとは

また別の強面の男が座っている。

あいつの仲間か?

まるで面会室みたいな場所。今から拷問でもされるのか


っ! 少しでも体を動かそうと思ったら身体中痛みが走る 戦いの傷はまだ癒えてないようだ

...それにしても妙

俺はエネルギー切れで倒れたはず…

自動で回復するなんてあり得るのか?

宇宙人の技術だ 有り得なくはないのか...

それともこいつらに、、、


「お目覚めか、”HEIKI” 」

俺の様子に気づいたようだ


HEIKI、、

やはりこの体の総称の事だろう。

今まで聞いたこともなかった言葉だ。

これで俺も闇の世界の住民に仲間入りか...


「....誰だ」


「質問は後にしよう

 検査の結果、お前がかなり高性能なHEIKIということはわかった」


髪は短髪 顎には少し髭が生えていて、襟足が立った大きな革ジャンを羽織っている

筋肉が今にも飛び出しそうなほどデカイ男だ

高性能、、、あの宇宙人は凄腕だったのだろう

....結局救えなかったが.......

「困惑しているところ申し訳ないが、今からお前にいくつか質問をする。正直に答えればここから解放する」

? 、ハゲの仲間にしては扱いが丁寧な気がする


「ここは対HEIKI特殊軍の基地だ。知っているだろう?」

男はそう尋ねた 


「....対HEIKI、特殊軍? 」

これまた聞き覚えのない単語

「知らないのか?」


名前だけ聞いたら HEIKIに対抗して編成された組織、という感じだろうか

あのハゲもHEIKIだったよな...となると、


こいつらがあいつの味方の線は薄い..のか..?

待て待て

まずは状況の整理だ。


 俺は事故により九十九 千として一度死ぬ。が、あの正体不明の宇宙人の女が俺をよくわかんねえ技術で魔改造し、そのHEIKIとやらになって生き返った。そして運悪く敵に遭遇、そいつと戦ってエネルギー切れになる。俺はそのまま眠ってしまい、連れ去られ、今こうして拘束されている ......と

   うん、意味がわからん。

  

「今日の日付は?」

「....わからない」

「8月1日だ お前を拾った時から40時間は経過している」

そんなに眠っていたのか、まじかよ....

止まず質問は飛び交う

「No.9のことを知っているか?」


「No.9? 誰...だ」


「お前と戦っていた野郎だ」

「あぁ..」あの恐ろしいハゲはNo.9というらしい


「安心しろ、俺たちはあいつの仲間やチームではない」

「  え 」

あ、やっぱり? 

....いやいや!まだ嘘をついている可能性もある

こういう時こそ冷静に..

「し....証拠は」

「奴は俺が殺したと言ったら?」

「こ、殺した?!」

「そうだ」

そう言いながら冷静な様子で何かを取り出した


....人間の腕だった

「ぅえぇ.. 」グロい

かなりボロボロだ

「ここにNo.9と刻まれているだろう。この腕は奴のだ。今までNo.0〜No.10まで確認されている

だが俺たちは、No.4,6,8,しか身柄を確保できていないなかった。そしてこいつで4体目だ」

確かに銀の兵装の裏に数字が書かれている

「あんた達にとって”敵”...ってことか?」


「そうだ....どうやら何も知らないみたいだな。

この国には反チキュウ組合という組織がある。HEIKIと呼ばれる人造人間を作り、世界征服を目的に裏社会で活動している奴等だ。

そこで作られたNo.9は今まで、45人の女性を拉致監禁し性的暴行を加えたことで我々が指名手配をしていた。

正真正銘のクズ野郎だ

そしてついにNo.9の居場所を突き止めた。

俺たちは7月30日の午前11時36分50秒に襲撃した。その時、偶然倒れていたお前を発見したと言うわけだ。」

情報量が多すぎやしないか


「HEIKIって人造人間だったのか....」

「詳しく言うと、人間と未知の技術のコラボレーションってとこだ」

「....もしかしてお前達が、俺を助けてくれたのか?」

「拾っただけだ。悪いが俺はまだお前を信用していない。」

「…一つ、聞いてか? あそこに一緒にいた女は?変な格好をした黒髪の」

「宇宙人なら一緒に連れてきた」

「ほ、本当か?!」

「....貴様、やはり何か知っているのか?」


その時部屋の外から声が聞こえた

「正義まさよしくーん !」

「!??!?! な、何?!」

男は途端に取り乱し、声のした後方を振り向いた

どこかで聞いたことのある声

「入ってもいいかーい? まあ入るけど」

ガチャッ


扉を開けた そこに立っていたのは

どこにでもいそうな中年の男


だが俺は一眼でわかった

「っなんでここに!?」


その人は紛れもない、この国の総理大臣 星ほし オオフミ


「あっ、もしかしてお取り込み中?」

「そうです、星総理! しかも今私の下の名前を!」

立ち上がり総理大臣の下まで行って、注意し出す

「あ、ごめんごめん」

「ごめんではない! 軍の規則です!

隊員の本名は何者にも公言してはならない! これ何回目ですか!」

「最近忘れっぽいんだよね〜笑

 で、例のことだけど・・・」


バタンッ!


フゥーーー 深呼吸をし、

男は冷静になって椅子に座り直した


「すまない。邪魔が入った」

「え ほ、本物...  」

確信した。この人達は奴らの味方ではない


「次だ、氏名・年齢・住所・家族構成を教えろ」

「はい。九十九千 高校2年16歳です。S市の345街の200番に住んでます、えーと、両親と妹と弟と俺の5人です」

「学校は家から近くのとこか?」


「はい、偏差値は若干低めですけど」

「ではHEIKIになった経緯を詳しく話せ」

「.....了解です 」


それから俺は学校から飛び降りて逃げ出したことから

No.9とやらにビームをぶっ放したとこまで全部話した


「 .. ご苦労 だったな」

見た目にそぐわない優しい言葉を投げかけてくれた

「はい、まあどれも全部自分のせいなんですけど...その、さっきは失礼な口聞いてすいませんでした」

「問題ない、こちらも最初から信じてもらえるとは思っていなかった」

(総理には後で小っ酷く叱るとして、

少年が話したことは事前に掴んだ情報と完全に一致。

敵の罠の可能性も数%あったが、こいつは信頼して良さそうだ。まさか光線の跡もこの少年の仕業だったとは....)

「......なるほど、協力してくれて感謝する 君は真実を言ってくれたみたいだ。

巻き込んでしまって悪かったな」

「いえいえ、こちらこそ えーとその..」

「心配は無用。決して今回の事を知ったからと言って君を消すような真似はしない」

ふぅ.. よかったこれで安心ー


「じゃ、じゃなくて、その、、、この体は、どうなるのでしょうか....?」


「・・・・すまないが元に戻すことはできない 」

「そ、そうですよね......」

一生このままか....それも悪くない....のか?


「質問は終わりだ こちらも君のことを信用する

だが.....」


ゴクリ・・・


「悪いがここからが本題だ」


---- -----


「........是非とも、君には我々の隊員になって欲しい」

「   え?   」

「反チキュウ組合のHEIKIではない君は、他にない貴重な戦力だ 」

「俺が、 敵のHEIKIと 戦うってことですか....?」


「.....あぁ、そういうことになる 君には我々と共に奴等を駆逐して頂きたい」

また あんな地獄を...?

「無理無理! 流石に無理です、あの人たち尋常じゃないくらい強いじゃないですか!ボコボコにされたんですよ!?あなたがいなければ死んでいました!

それに俺は今まで平凡な暮らしを送ってきた一般人です!!そんな強大な敵を前にして...。」

「申し訳ない。だが君が言った通り人間とHEIKIでは強さが全く違う。だからこそなんだ。

その力を、チキュウの未来のために使ってくれないか」

これ以上ない真剣な眼差し


だけど本当に無理なんだ

あの時はハイになってたんだと思う

冷静になって振り返るとあいつの顔は夢に出てきそうなくらい恐ろしかった。 120%の勇気を振り絞ってあの程度だった。

...戻りたい 退屈でいいから、平凡でいいから.....いつもの暮らしに

「すいません...」

「君の言い分も十分にわかる。私としても子供にこんなことを言いたくない。

でも....」

一瞬言葉が詰まる


「それが...HEIKIとしての”運命”だ。

 君はもう、普通の生活は送れない  」







.... 正直、まだ俺は事態を軽く捉えていた

このまま家に帰って両親と一緒に学校に謝りに行き、大人からめちゃくちゃ怒られて、心配されて、みんなに精神繊維謝罪しようと思ってた。どんな言葉を言おうかと、そんなこと考えてた。

足とか速くなったし、便利だなーとか思ってた。


そうか俺はもう 人間じゃない

HEIKIになったんだ。

あんなに殴られても死なない、腕から変な機械が飛び出て、ビームが出る、

人を簡単に殺せてしまうかもしれない、恐ろしいやつ。

だからこそ今もこうやって身動きが取れないように拘束されているんだ、そうだろ!?


「俺としても君の意見を尊重したい。だが現実は脆く、簡単に焼け野原と化してしまう。

結成当時、人数は100000人を超えていた。皆強く優秀なやつだった。


だが7年経った今、その数は45000人を切った。


俺たちはこの戦いを終わらせないといけない。かつての仲間達のためにも」


...そんなの知るかよ 

ついこの間まで一般人だったんだぞ

「....少し考えさせてください」

「ああもちろんだ ゆっくり考えてくれ」

そう言って正義と呼ばれてた男は部屋を出る

数秒後、後ろのドアが開き、彼は俺がいる部屋の方に移動してきた


「拘束を解く すまなかったな。」

「いえいえ お気になさらず.....」


ガチャガチャ .

「...っよし、と 」

「ありがとうございます。 あの、疑ってすいませんでした。てっきり

「いつでも疑う姿勢なのは良いことだ。」

「そうですか... 」

「他に聞きたいことはないか」

「っと、聞きたいことはいっぱいあるんですけど、その前に宇宙人の女性と話せたりできます?」

「ああ、構わない。彼女も君にしっかりとした場で謝りたいそうだ。朝飯の時間だ、ここの塔の20階にいるはず 」

そのまま室内を後にし、二人でエレベーターに乗った

「ここは何階ですか?」

「地下4階 建物自体は40階まである」

「えー!そんな高いやつこのS市にあります?」

「あ、ここはS市ではないぞ 首都 東京とうきょうだ」


え?

「正確に言うと、東京の隣の海を埋め立てた人工島だ」

..どんなとこに連れてってんだよ 

「へ、へー そんなとこあったんすね、、、

あ、そういえば俺行方不明になってません?」

「心配無用。その点は上手く調整している

対HEIKI特殊軍は国直属の部隊。 情報の隠蔽など容易だ」

「なるほど...」

「この基地を知らないのも当然 なんせ陸地からは見えない、それに人々には都市の人工過密を解消するための開発途中の人工島と説明してある 」

なんだか凄い事を知ってしまった...

「凄いですね。本当に消されたりしません?」

「ハハ、生意気な口聞いたら消すかもしれんな」

冗談なのか本気なのかは分かりにくいがなんだかいい人そうだ


「彼女の名前はマキ 言語に問題はない。

 君をHEIKIにした時に言語情報を読み取って脳内にインプットしたそうだ

「...すごい技術ですね」 


「俺たちも最初は宇宙人だと信じられなかった

だが惑星セルカというところから来た本物の宇宙人らしい」


「宇宙人に会ったのは流石に初めてですか?」

「少なくとも俺はそうだな。」


----チーン----- 


20階についた ドアが開くと

どこからか賑やかな声が聞こえてくる。少し先にある大きな扉からだ


「俺はここの団長をやっている、初期からいる人間の一人だ。

隊員は少し生意気だが悪いやつらではない 仲良くしてやってくれ」

そうやって手を近くの台にかざす


ピーピピ

「開けるぞ」


金属でできた重い扉が開く

想像してた5倍くらいにデカい食堂が広がっていた







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