第一話 接触

ーチキュウー 西暦2024年 7月

日本 


 地方都市に住む俺 九十九 千(16)はいつも異世界転生することを夢見ている。


今日は一応夏季休業中なのだが、午前中で終わる課外授業とやらにこの学校は出席しなければならない。

「えー 〜により、与式は…  であるからにして この解は…」


(何千年も前に生まれてたら、こんな難しいこと考えずにずっと狩りだけしとけば良かったんだけどなぁ…)


よく大人たちは『学校に行けてるだけありがたいと思え』とか言うけど

…なんていうか、そういうことじゃないんだよ


「はい、次の問題宿題な〜

じゃあ残りの時間は自習!

先生職員室にいるからなんかあったら呼んで」


【ガラガラガラ…】

そう言って先生は教室を後にした


しばらくの沈黙が流れた後


誰か一人が喋り始めた

「ハゲの授業分かりにくくね?」

「それな」


するとその輪が次々とクラス中に広がっていき、やがて休み時間ぐらいのうるささになった。

【ガヤガヤ ガヤガヤ…】


勿論俺も話した。

でもなんだかそいつらに流されてる感じがして、少し話した後しばらくは寝たフリをすることにした。


騒がしい教室の中

俺はいつも通り妄想を始めた

(まずは通り魔に刺されて死ぬだろ〜


それから目が覚めたら目の前に俺を召喚した爆乳の金髪美女がいて、俺は特殊スキルで無双して、その子と恋に落ちる…

子供はそうだなぁ…2人、いや3人だな…)


ウへへ 、へ、





この時間が一番好きだが、その後に賢者タイムが訪れる時、一番死にたくなる。


(何やってんだ…俺)


いくら俺でも死んだら悲しむ人なんて大勢いると思う。

いやいや、まず転生なんてあり得ないんだが。



俺が異世界転生に興味を持ち始めたのはつい最近。


もう高校二年生なので進路をそろそろ固めていかないといけない。でも俺に得意な事もやりたい事も特になかった。

だからこの間の三者面談でも、進路の事について何も言えなかった。


勘違いしないで欲しいのだが、別に俺は友達が少ない、両親がいない、成績も最悪、クラスのいじめの対象

…みたいな環境ではない。


至って普通 平均的な人間だ。

俺みたいなやつは多い思う。

だけどみんなはそれでも頑張って壁を乗り越えてようとしている。

俺は未だ何もできていない。

そんな自分から、現実から、逃げるように俺は中学生の頃からハマりだした異世界転生もの、通称なろう系に自分を当てはめて、なんとか今の状況を忘れる事にした。 

意味がわからないかもしれないが、これが案外気晴らしになる。


今は、別に家が貧乏ではないし、俺より優秀な弟と妹達がいるので、将来は適当に会社に就職して実家暮らしで過ごしていこうかなと思っている。



あれ なんかモブキャラみたいだな俺




「よしっ 決めた 

 俺ここから飛び降りる!」


「    ……は?  急に起きて何言ってんだおめぇ」

隣の坊主が言う


「まあ見とけって」


【ガラガラ】


俺は窓に身を乗り出した


そして複数人の注目が俺に集まる。


「え?何やってんのあいつ」

「寝ぼけてんのか?」 「この動画まじやばくね?w

」「ここの問題教えてー」

「おーい、何やってんだよー危ねえーぞー」


すっーーーーーはぁーーーー

深呼吸をする 


「お、おい、!やめろ!!!!」


俺は二階から飛び降りた。


自分でも何やってるかわかんない


I

I

I

I

I












…クソっ、痛ッタっ…


昔知った5点着地方とやらでどうにか大怪我はせずに済んだ

初めてやった割にはめちゃくちゃ上手くできた方だと思う。


へへ…なんか今の俺…主人公みたいだな

「きゃーーーーっ!!!!!!」

「おい!まじで飛び降りた!」

「誰か!先生呼んでこい!」 「今行くからな!九十九!」



俺はそのまま学校のグラウンドを渡って裏門を出て、坂道を下り、信号を渡って…

がむしゃらに走った

何かから解放された気がして、自然と笑顔になった。


うん、わかってる

俺は頭がおかしいんだと思う


でもここまで勇気を出せたのは人生初めてだ。




だがしばらく走って後悔しだす。

(どうしよう 今ならまだ戻れるか…)


こんなことしてなんなんだが、俺は今とっても反省してる。



(これからどうしょ… みんな心配してるかな…

あーあやばいヤバい 何やってんだ俺!)

課外授業は明日まであるので、、俺は皆の視線を浴びながら明日教室に入ることになる。

勿論学校を辞めるわけにはいかない。

まじでキモイ行動をしてしまった。

新たな黒歴史を作ってしまったんだ。


そんなことを考えているとまた嫌になってきたので、そのまま小さい頃よく行っていた山に登った。


木々をかき分けて進んだ先には昔と変わってない場所があった。

(ハァ…ハァ… やっとついた…)




そこから見える景色が最高だった 

「懐かしぃー」

ふとしたときに思う


あぁ、あの頃に戻りたい、と



そんなことを思いながら寝転がって 学校が終わる時間になったらすぐ家に帰ろうと決めて目を閉じた。








今思えば死にたかったわけじゃない

生まれ変わりたかった。


こうなったのも全て自分のせいなんだけどな。。








------------
















ふと目を開けた








…あれ? 開かない

いや、確かに開いてる気がする

ただ視界が真っ暗だ


「え?」の一言も出ない。






もしかして~


俺、死んだ?


は?ちょ、ちょっと待って


いつもと体の感覚が妙に違う

体の重さを感じない


あれ?こんなにあっけないの?















ごめん。母さん、父さん





----目が開いた

仰向け状態の俺の目にはこちらを覗き込む 変なコスプレをした女子が映った。爆乳!

…ではなかったが、エルフのような耳をした端正な顔立ちの長い黒髪美女。


「…はっ!!!!! よかった…目が覚めたみたい……」

そうやって安堵した様子で、彼女はぐったりと地面に座り込んだ。


綺麗な青空が映る

(え、ここどこ!?) (待って?!もしかして)


不安と期待を胸に俺は上半身を起こした。


ここは…!


さっきいた山の中だった。




「え? …どうゆうこと?、」(俺死んだんじゃ…)


彼女は頭を下げて俺に謝った。


「本当に本当に、本当にごめんなさい!

 私のミスで… 」

「いや、え、君、、誰?」

「ごめんなさい。 わけがわからないわよね

 私の乗ってきた宇宙船が故障を起こしてあなたの真横に落ちたの。その時の衝撃によってあなたは体ごと吹き飛んで、散々転がって行った挙句、そこにあった岩に打ち付けられてしまったの。

 本当にごめんなさい」

(は????????????????)

確かに周りには血痕と見られるものが残っており、飛び散ったと思われる岩の破片も転がっていた。



「は????ぶ、ぶつかった? 」

そこで自分の体を見ると、上半身が裸だった。

「すぐにあなたの蘇生をしたから奇跡的に生き返させる事はできたわ…」


いや、こいつ何言ってんの

その話が本当だとするなら

俺の体は

綺麗に傷跡一つもない

(え、もしかして頭おかしいやつだと思われて変なやつに絡まれた?)


「宇宙船?? んーとじゃあ、宇宙人ってこと? 」

「あなたたちから見たらそうなるわね」


「そんなにすぐ蘇生したからって生き返るもんなの?」

「…え、えぇ…」 今度は少し曇った顔でそう答えた


「じゃあ、なんで日本語喋れてんの?」

「……それは…あなたn」

「おぉいっ! そこに誰かいるのか?」

【ズサッ ズサッ】

後ろからの足跡

何者かが喋りながら近づいてくる

「はい… どうされましたか?」

彼女の方が答えた

「え、なになに?知り合い?

今度はどうゆう設定?」



「おっ!

ちょうどよかった!まだそこにいるな」




野生の感というやつだろうか

彼女の顔は凍りついた


「よぉっーし !

準備体操といこう!

俺は今から 貴様らを———




——“殺す”

      」

そこに現れたのはスキンヘッドをした大柄の男

両腕には鎧のような銀色のアーマー


「いっちにさっしっ」

そう言いながらストレッチしている。


(またヤバそう奴だな)

「はいはいあなたはどちら様ですk

「あと2秒やる」


「——は?」







俺の視界に刹那にして映ったのは強く握られた

顔サイズの大きな拳




「まずはお前」







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