HEIKI 〜異世界転生するかと思ったら普通に死んだ〜

@kanngaeruno0813menndo

プロローグ 

惑星 「セルカ」


ここは科学が発展した小さな星。

総人口は1億人ほどであり、

住人の見た目は人間にとても似ている。

違う点を1つ挙げるとするならば、セルカの住人はエルフのように耳が少し長い。


そしてこの星は争いが少なく、 差別や戦争という言葉すら彼らの言語には存在しない

”誰かの為に”という善意のみでこの星の技術力、科学力を進化させてきた。


文明自体の歴史はまだ浅いがその成長スピードは凄まじいものだった。

空には自動車のようなものが飛び交い、巨大な建造物が隣接している一方、すぐ横には自然が溢れかえっている。

セルカ人の約2割の人々は自らの体内に小さな機械を幾つか埋め込んでおり、その中には脳みそと同程度のキャパシティをもつような記憶媒体もあるそうだ。



常に自分の脳内で星全体のネットワークへの出入りが可能になり、

直接会って会話をする人がいなくなることが懸念されたが、何よりここの住人は自然体を好む人が多かったのでその心配は不要だった。



あまり犯罪は起きないので、秩序を保つ警察のような存在は非常に少数であり、大抵は町の何でも屋として働いている。

他にも医療技術の発展により、セルカの人々は本来の平均寿命の約1.5倍まで生きられるようになったりするなど、上手く自然と技術のバランスが取れた美しい星となっている。

その上宇宙分野でも様々な発展を遂げ、何百億光年先まで見ることができる宇宙望遠鏡、光のおよそ60%の速さで移動可能な宇宙船の作成等にも数年前に成功した。




そんな星にある大きな開発研究所

そこで働く若い白髪の男は何か考え事をしながら椅子に座って窓の外を見ていた。


[コンコン]

「博士ーお届け物です! 」

それは活気あふれた少女の声だった。


だがその声に気づかず、博士と呼ばれる男はまだぼーっと景色を眺めている。


「.......お取り込み中ですか?」


「.......はっ いや なんでもない、少々考え事をしていた、 」

「その声は”マキ”だね 今開けるよ。」


そう言って男はドアを開けた。

男の目の前にはマキと呼ばれた黒髪の可愛い少女が立っている。


「何かあったのかい?」男は優しい声でそう言った


「フッフッフ…ジャジャー〜ん!」と背中に隠し持っていたものを胸の前に突き出す。 


「それは........!」

「そう!新部品”ラグナス”! 昨夜、ついに仲間たちと製作に成功いたしました!!!」


「おぉーっ!! ついにか! でかしたぞ!!!」


そうやって博士はマキからラグナスという球を嬉しそうに持ち上げ、天井に翳して色々な角度から眺めた。

(これで...これで、ようやく私の...)


数秒の静まりの後、

男は

彼女に背を向けて椅子に座り直すと、再び口を開きだした。



「マキ、セルカから遠く離れた位置にある チキュウ という星は知ってるかい?」


「…?はい、もちろんです。何十年も前に発見された青色の天体ですよね?

 一見すると綺麗な星です。しかし、過去偵察に行った先人達は『言葉に言い表せないほどの無惨な光景を見た』と言い残しています。

そんな星に博士はご興味が?」


「そう 僕の作った宇宙船で行けばおよそ2週間で着くところだ。

 ……………突然の報告で言いにくいが、そのチキュウに今度仲間と行くことになったんだ。」


「 え..........冗談...で、すよね..? 」

「本当に急ですまない

 私とナルセ、助手のキキ、それと知り合いの研究者を連れて星の偵察と、チキュウ人との交流をしに行く」


「待ってください!」

「本気なのですか博士!あのチキュウですよ!? 

 危険です。 その計画を今すぐ中止してください!」


「君の意見は重々承知だ。

だがチキュウの人々が全て悪人というわけではなかろう。それに相手の文化を尊重しながら歩み寄れば、異星人であろうが良い関係を気付けると思うんだ。」


「考え直してっ博士! 偉大な冒険家 セル・ネオンでさえも異星人との交流だけは避けていたんですよ?!」


「そのセル・ネオンを超える。これが私の長らくの夢さ。」


「判断を見誤らないでください! そんな私利私欲の理由であなたを行かせるわけには..... 

  それに博士はこの星の宝です!」



「ありがとう。だがチキュウは近い将来、核戦争で文明ごと滅んでしまう。 私は過去の文献からそう読み取った。

だからそれを食い止めに行く。

チキュウは現在進行でその一途を辿っているんだ。」

 

「そ、そんな.....  」

男は続ける


「実は何年も前から計画していて、いつかこのことを伝えようと思ってたんだ。

 チキュウに行ったら1、2年そこで暮らし続ける。

 しばらくの間会えなくなるが、君と他のメンバーにならこの研究所を任せられる。

 だから少し待っていられるかい?」

男の顔はどこか寂しそうだった。


マキは黙って頷いた。








その3日後博士はこの星を飛び立った


まだ子供だった私はひたすら帰りを待ち続けた。

 一年  二年  三年 ..............




8年が経過しても博士はこの星には戻ってこなかった。


成長した私は、超難関のライセンスである”セルカ探究免許”の試験に合格し、資格を最年少で取得した。

それにより、自身の宇宙船で一人広大な宇宙を飛行できるようになった。


周りからは『天才』と言われ続けた。

だけど私は、恩人の博士、あなたにまた褒めてもらうためにここまで努力してこれたのだ。



私を見ていて博士



マキはチキュウに行くことを決意した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る