第1章 第14話 意味の無い勝負はしたくない
???。ふざけたつもりはなかったので、頭の中が真っ白になる。リーダーは怒りのまま捲し立てる。
「俺が言ってんのはお前に本当にSランクとしての実力があるのかってことだ。こんなもんはトロン王国の冒険者全員がお前のことを認識している時点であるに決まってるだろうが。てか、俺さっきSランクの実力を証明しろって言ったよな!?」
ああ、言われてみれば確かにそうである。隣のトミを見てみると少し俺を小馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。うん、これは俺が悪いわ。そう思い俺は謝罪の気持ちも込めて口を開いた。
「悪い悪い、証明しろって言われたから、証明書を出せばいいのかなと思ってしまい、つい」
その俺の言葉を聞いたトミは顔を上に向けて手で顔を押さえている。その様子を見た俺は、あーこれは明らかに失敗したやつだなと、表面では狼狽えているが内心かなり冷静になっていた。
当然のごとくリーダーはさらに不機嫌になり、手に持っていた俺のSランク証明書を地面に叩きつけ叫んだ。
「ざけんな!」
俺の内心はそのリーダーの叫びを無視し、俺の証明書がーと叫びたくなる気持ちになる。まぁ、Sランク証明書のカードは頑丈に作られているので多少のことでは壊れはしない。まぁでもAランク冒険者が地面に思いっきり、叩きつけても無事なのかどうかはやったことがないので少し不安ではあった。
果たしてSランク証明書は無事だった。表面には見せず俺は内心安堵して、Sランク証明書を拾い鞄の中に戻す。
「おい、お前」
そんな俺の行動にドランがイラついたのか、仮面の戦士からついにお前呼ばわりになってしまった。まぁどう呼ばれようと気にはしない性格なので、普通に返事をした。
「何?」
「舐めた態度ばかりとりやがって。……俺と勝負して、Sランクであることを証明してみやがれ」
その発言にパーティメンバーの2人が慌てた様子でそのドランに話しかける。
「流石にS級相手に勝負挑むのはやめた方がいいんじゃ」
「そうですよ。いくらドランが強いからと言って、Aランクになったばかりの俺たちじゃ仮面の戦士と経験値が違います」
その慌てた2人の様子にドランは極めて落ち着いた様子で話す。
「心配するな、2人とも。俺がこんなやつに負けるとでも思うか?」
まだ、俺の実力を見ていないのに、もうこんなやつ扱いである。ちょっとは心にくるものがあるのでやめて欲しい。
しかし、そんなことよりも少し気になったことがある。このドランという人物は俺と喋っている時は、明らかに見下したような喋り方をしていたので、てっきりパーティーメンバーにもきつく当たるタイプかと思ったら、どうやら話している態度を見るにそうではないらしい。
「けど」
仲間の女が何か言おうとしたが、ドランはそれを手で遮る。
「俺の実力はお前等も知ってるだろ」
ドランは自信をのぞかせる笑みでパーティの2人を見てそう言った。その様子を見て、パーティメンバーに話すみたいに俺とも話してくれませんかねと思った。
それでドランはパーティメンバーの2人とは話が終わったのか、こちらに振り向いてきた。振り向いてきたドランの表情は明らかにイラついている。いや、絶対にそんな怖そうな顔で後ろの二人と話してなかっただろ。俺にも優しく話せと内心毒づく。
「俺と勝負してもらおうか」
ドランは怖い表情を浮かべながら、そう俺に言ってきた。しかし、どこか覚悟を決めた表情をしている。
「え、嫌ですけど」
さっきまでのやりとりとかは関係なく俺は平然と断った。
「……なぜこのやり取りで断る?」
出鼻をくじかれたドランは不機嫌そうに呟く。
「だってあんたと勝負するよりは、忘れられた都市を探索したいからな。それに、あんたと勝負することで無駄に体力を消耗してダンジョンに差し支えるのも嫌だしな」
俺はドランに冷静に説明した。む、とドランは少し唸る。
「ここまで特に何も喋ってこなかったけど、これはあかが断る理由としては十分じゃないのか?」
ロッジも俺に加勢するように、ドランにそう話す。
「少し待て」
ロッジの話を聞いたドランはそう言い、考えるそぶりを見せる。
「話が少し長引きそうね。今日はどれだけ探索できるのかしら」
トミが心配そうに呟く。
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