第1章 第13話 一触即発
「おいガイド、いいか?」
俺たちが話していると、3人を雇っているそのパーティのリーダーらしき人物が話しかけてきた。
「なんだ?」
ロッジが答えた。
「そいつらってSランクの仮面の戦士のあかとむらさきだろ?」
どこか疑っているような目つきでそのパーティのリーダーらしき人物が俺を睨んでくる。
「そうだが、それがどうしたんだ?」
ロッジがそのパーティのリーダーらしき人物の視線が俺に向いているのを見て不思議そうに聞いた。
「俺はSランク冒険者が嫌いだ」
ロッジの質問を無視し、その男は俺にそう言ってくる。
「……えっと」
突然そんなことを言われた俺は思考が停止したようにフリーズしてしまう。
「……ちょっと、ドラン」
どうやらリーダーらしき人物はドランと言うらしい。そしてその仲間がドランを嗜めるように呼びかけた。だが、ドランはその呼びかけを聞こえていないかのように囃し立てた。
「Sランクは特別な力を手に入れたものだけが、確かなれるんだよな。正直俺はそんな力がなくてもSランクなんかに負ける気はしないがな。なんで俺らAランクは3人以上の制約があってSランクには人数縛りがないんですかねー。それにギルドで優遇されているのも腹が立つ」
ドランは落ち着いて話しているので冷静のように見えるが、内心全く穏やかなのではないのだろう。とりあえず、俺がSランク代表としてキレられているのはわかる。
「おいおい、あかに向かって失礼だろう。それにSランク冒険者は俺たちAランク冒険者と違って、本当に強い。まぁ、中には戦闘面では役に立たない特殊能力者もいるみたいだが、そう言う奴らは、Sランク冒険者にはなっていない」
ロッジがドランを宥めるかのように言った。だが、そのロッジは不満そうな顔を浮かべこちらを向いてきた。
「だったら、あか、あんたはSランク冒険者を名乗ってるから、強い能力を持ってるんだよな。けど、あんたの噂は聞いてるが、一切魔法が使えないと耳にしたことがあるが、本当か?」
その質問に俺は痛いところついてくるなーと思い、苦笑いを浮かべて答えた。
「ああー、その、うん、その噂は本当のことだ。俺は初級魔法から上級魔法のどれも使えない」
それを聞いたドランは嘲笑するかのように顔をにやけさせた。
「はん、マジかよ!?魔法が使えないのにSランクを名乗るなんてあり得なくねぇか?」
魔法が使えないのは本当のことなので、俺は反論せずに黙っていた。
「……何も言い返さなねぇのか。本当にあんたSランクの実力があんのかよ?」
俺が黙っていることをいいことに、ドランが饒舌になってくる。
「あなたね、パーティの私が言っても信用しないかもしれないけど、彼は本当に強いのよ」
相手の挑発に反発をしない俺をみてトミがそう言い返す。だが、トミが言い返したことが愉快だったのか先ほどよりもさらに意地悪い笑みをドランは浮かべ口を開いた。
「はっ、パーティメンバーに代わりに言い返してもらうとかマジでダセェな」
これ以上トミに反論してもらうと、余計にこのリーダーが饒舌になりそうだったので、俺はトミが喋ろうとしたのを右手で遮るようにして止めた。
「あー、なんだ、あんた流石にいい過ぎじゃないか?」
俺が反発したのが嬉しかったのか、さらにリーダーは笑みを深めた。えっ、こいつ何しても笑うんじゃねと思ってしまい内心ちょっと面白かった。
「ようやく、言い返してきやがったか。俺に言い返す度胸があるってことは、Sランクの実力があるってことだよなー」
正直、俺はこいつが何を言っているのかわからない。Sランクの実力があるのかどうかなんて、俺がSランクの冒険者であることは周知の事実のはずだ。
「Sランクの実力ってのを証明してもらってもいいか?仮面の戦士のあかさんよー」
ああ、なるほど。ドランは本当に俺がSランクかどうか知りたかったようだ。証明する方法は簡単なので俺は冒険に持ってきていた鞄を漁ろうとする。
俺の行動を見たリーダーはなぜか訝しげな表情を浮かべていた。なんでドランがそんな顔をしたのか少し不思議に思ったが、とりあえず言われた証明書のカードを取り出し、ドランに渡した。
カードを渡されたドランは明らかに不機嫌そうだ。
「おい、これはふざけてんのか?」
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