第1章 第12話 他パーティーとの遭遇

「何事もなく倒せたようだな」

 俺はトミに近づきながらそう声をかけた。

「レンズ卿相手だから楽勝ね。あなたの方こそ一瞬でメタルスライムを倒せるのは凄いわ」

 感心しながらトミが言う。その後も俺たちは、魔物を見つけては戦い、素材を見つけては拾いを繰り返していた。

 12時になったのか、迷宮の地面が光り出した。どうやらリセットの時間が来たらしい。迷宮全体が光出したかのように視界が完全に真っ白になる。

 数秒すぎると真っ白になった視界が徐々に形を表す。さっきまでいた場所とは目の前の視界が変わっている。そして、後ろを振り返ると昇りの階段がそこにはあった。

 どうやら第1層の入り口に戻ってきたらしい。

「だー、くそあとちょっとだったのに」

「本当にね。なんでこのダンジョンはこんな仕様なのかしら」

 俺たちから少し離れたところからそんな声が聞こえてくる。

「今日このダンジョンに来ているの私たちだけじゃないみたいね」

 トミも別のパーティがいることに気付いたのかそう声をかけてくる。

「そうみたいだな」

 俺はトミの言葉に生返事をし、あることを考える。忘れられた都市のリセットがあるのはもう仕方ないことだけども、攻略中の全員が戻されるというのは少し怖いものでもある。戻った瞬間にその人物を攻撃したら無防備だからである。まぁ基本的には近くにいた人物と近い距離に入り口に戻され、離れていたところにいたパーティは少し離れたところに配置されるので、ダンジョンを作った人物は少しは考えているようだと思う。こんなことを考えるのは一般冒険者としては悪い癖だなと思ってしまう。子供の頃から暗殺者の師匠にいろいろ教わったのでそんなことを考えてしまうことが多い。

「視界に階段を見つけた時に床が光ったのは、正直今かよと思ったよな」

 俺たちと別のパーティがそう話しているのを聞こえた。それを聞いた俺は可哀想だなと思った。

「あー、あれはかなりショックよね」

 トミも冒険者が話した内容を聞いていたのか俺に話しかけてくる。表情もどこか相手を同情するような感じで苦笑いを浮かべている。

「ああ、あれは正直引きづるよな」

 次の層に行ける階段を見つけたところでリセットが起こるのはこのダンジョンの嫌な出来事の一つだ。

「あ、仮面の戦士がいる」

 そのパーティの1人が俺たちに気付いたのか、その言葉でそのパーティの全員がこちらを見てくる。

「おう、仮面の戦士」

 その中の1人が俺達に声をかけてくる。

 よくよく見るとその声をかけてきた人物には見覚えがあった。

「おお、ロッジじゃないか。今日は指導役でパーティに同行しているのか?」

 彼の名はロッジ・クルーガである。

「ええ、そうですよ。これも私たちの仕事ですので」

 ロッジと話していると後ろから女が割り込んできた。

「おまえもいたのか。イリス」

 彼女の名はイリス・ナラリヤである。

「あの、僕もいます」

 そう言った男は、ベネディ・スルメルトである。

 6人だと思っていたパーティの3人は、ギルドに直接雇われているベテランのAランク冒険者達だ。俺も彼ら3人のことは知っているしそれなりに親しげに話せる間柄だ。

「話は聞いていたけど、残念だったな。次の層に行ける目の前でリセットが起きてしまって」

 俺は少し茶化すようにそう3人に話しかけた。しかし、3人は特にショックを受けた様子もなく返答した。

「まぁ、忘れられた都市ではたまにあることだからな。指導者になると何度か同じことがあったから、特に気にしなくなってきたな」

 そのセリフに俺とトミは驚いたように声を漏らす。

「「おお、まじか」」

 他の2人はやれやれと言った感じで首を振っている。

「そう思っているのは、流石にあなただけだと思う」

 イリスが呆れたように言っている。

「そうですね。確かに何度かありましたが、ショックに慣れるなんてことはないですね」

 ベネディもそう言った。

「そうですよね。流石になれないですよねー」

 トミもどこか安心したようにつぶやいた。

「あれ、なれてなかったの!?」

 ロッジは、他の2人がリセットのショックになれていないことに驚いた。

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