第1章 第11話 メタルスライム
忘れられた都市は名前の通り、大昔に作られたダンジョンである。300年前のギルドが調べた所によると、このダンジョンは1500年前の勇者と魔王が生きていた時代のものだということがわかった。大昔のものばかりで構成されたこのダンジョンは現代人の俺たちからすると目新しいものばかりで新鮮である。そんなことを考えているとトミの方から声が聞こえてきた。
「魔物が3匹いるわ」
そう言ったトミは右手でレンズを掴み右目にそのレンズを持ってきている。
その言葉を聞いた俺はすぐさま戦闘態勢をとる。
「了解。魔物はどんなやつだ?」
「メタルスライムが1匹とレンズ卿が2匹いるわね」
まだ魔物との距離はあるが、少し走れば魔物も気づく距離にいる。
なぜ距離があるのに魔物に気付いたのかは、トミが持っているレンズにある。このレンズは“遠目レンズ“といいBランクの魔法具である。入手方法は、魔物であるレンズ卿から入手することができる。ただレンズ卿は倒すのは簡単だが、レンズ卿が持っている魔法具をゲットしようとなるとかなり難しい。まぁ、俺とトミは既にレンズをゲットしているから、倒すだけなのでレンズ卿は問題ない。
メタルスライムだが、こちらは敵として非常に厄介だ。まずこのメタルスライムは名前にメタルとついている通り硬い敵なのだ。しかも逃げ足も意外に早く攻撃を当てづらい。そして、メタルスライムに見つかったら無視するわけにもいかない。その足の速さでメタルスライムはついてくるからだ。ついてくるだけならばいいのだが、どういう方法を使っているのかわからないが、メタルスライムがどんどん集まるようになってくる。だから、メタルスライムは集まる前に倒さないといけないのである。敵としては厄介だが、倒した場合の素材は簡単にゲットできるので、その点に関してはレンズ卿と違って楽だなと思う。
だが、メタルスライムが厄介なのは普通の冒険者に当てはまるのであり、俺には当てはまらない。
「問題はなさそうだな。突っ込むぞ」
「了解」
トミは“遠目レンズ“を服のポケットに直し、1本の棒を出す。その棒にトミが魔力を込めるとクリスタル型の杖に変化した。
俺たちが一直線に魔物に向かって走ると、魔物もすぐにこちらに気づいた。メタルスライムが距離を取ろうとしたので、俺は“纏”と言われる身体強化を発動した。纏とは魔力を身体全体にめぐり渡らせる技であり、身体を強化してくれる。どれくらい強化するのかは、個人によって違うみたいだが、俺の場合は通常の身体能力の3倍は体感的に強くなっていると思う。
その3倍となったスピードで今も全力で逃げているメタルスライムの目の前までやってきた。メタルスライムは俺が目の前まで来たのに驚いたのか急ブレーキをかける。俺はその隙を見逃さず、右手に力を込め、その手が銀色に輝く。そしてその銀色に輝く右手の拳をそのメタルスライムめがけて殴りつけた。殴りつけられたメタルスライムはまるでそのメタル部分が溶けたかのように倒れる。
メタルスライムは本来人が殴った程度ではびくともしない。むしろ殴りつけた側の手の方が悲惨になる。しかし、俺はメタルスライムを一撃殴りつけただけで倒せた。これは俺の特殊な能力によるものである。その特殊能力というのは、俺が力を込めて殴った敵のダメージが、体内に直接衝撃として響くものである。なので、メタルスライムのようにいくら表面が硬くても、中から破壊してしまえば問題ないのである。これが俺がメタルスライム相手に苦戦しない理由である。正直なところ、俺の能力がなければメタルスライムは倒すのにかなり厄介なので、他のSランク冒険者やAランク冒険者がどうやって倒しているのか気になるところではある。ちなみにこの殴りつけることで体内に直接ダメージを与える技は“崩拳”と名づけている。
この“崩拳”のおかげで俺はSランク冒険者になることができた。
メタルスライムを無事倒せたので俺は、メタルスライムの溶けたメタル部分を持っていた小さい空き瓶に入れる。素材を回収できたので後ろでレンズ卿と戦っているであろう、トミの方向に顔を向ける。トミは二体目のレンズ卿に向かって、クリスタルロッドを振り翳しているところだ。1体目の方は消えているので倒したようだ。クリスタルロッドで殴りつけられたレンズ卿は、吹っ飛ばされたかと思うとその途中で霧散するように消え失せた。
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