第1章 第9話 エイルとの会話

「おお、“あか“と“むらさき“じゃん」

 3階に着くと声をかけられた。声をかけた人物の方を見ると、同じSランク冒険者のエイル・ロンブランドがいた。

 ちなみに“あか“と“むらさき“というのは俺たち仮面の戦士の呼び名である。前は仮面の戦士と呼ばれていたが、俺とトミのどっちも仮面の戦士呼びだったのでどちらか片方に呼びかけた時に非常に面倒だったので名前をつけたらしい。名前をつけたのはこの目の前にいるエイルだ。「なんでその名前なんだ?」と前に聞いたことがあったが、「髪色で決めたー」と軽い返事だった。特に反論しなかったが、気づいた時には“あか“と“むらさき”呼びで定着していた。

「やぁ、エイル」

俺もそう挨拶を返す。トミは軽く頭を下げる。

「依頼ボード見に来たの?」

「まぁ、いいのがあったら受けるけど、多分ないよね……」

「うん、あるのは面倒臭い依頼だけかな。ま、Aランク以上の依頼ボードだから仕方ないけど」

「なるほど。ところで、忘れられた都市の依頼はあるかな」

忘れられた都市のダンジョン名をいうとエイルは楽しそうに聞いてきた。

「へー、忘れられた都市に行くんだ。どこまで攻略したの?」

俺は少しだけ嘘の階層を言うか迷ったが、本当のことを伝えた。

「……前と話した時と変わらず、5階層で止まったまま」

そういうとあからさまに嬉しそうにエイルが笑った。

「じゃあ、私の勝ちだね。私のパーティは8階層まで行ってるから」

それを聞いた俺とトミは驚いた。

「え?!もう8階層まで行ったの?確か3ヶ月くらい前に会ったときは、3階層までだったはず」

トミがエイルに聞いた。

「ふふーん凄いでしょ。まぁ結構な時間ダンジョンにこもることになって大変だったけど、お金もいっぱい入ってよかったよ」

そのエイルの話を聞いたトミは羨ましそうにしていた。かく言う俺も羨ましいなと思った。

「で、今回はどれくらいの期間忘れられた都市にこもる気なの?」

気になったのか、エイルが聞いてきたので俺は簡潔に答える。

「1週間だけだね」

「その期間だけじゃ、当然ながら私たちのパーティの記録は超えられないね。と言うより、良くて1、2層進むのが限界なんじゃない?」

「まぁ、そうだな。流石に1週間で攻略に挑もうなんてしないよ。ただの素材集めだ」

そう言うと納得したのかエイルは頷いた。

「なるほどね。忘れらた都市は低階層でも素材はいいもんね。結構高く素材は売れるし、武器の強化ができるアイテムも拾えるかもしれないからね。まぁ、でも忘れられた都市に行くなら攻略する気で行くのが一番いいとは思うけどね」

それでエイルとの会話は終わり、俺とトミは受付の方に向かった。

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