第1章 第8話 ギルド

準備ができたので、部屋の外に出る。廊下で数分も待たないうちにトミが部屋から出てきた。トミの姿も俺と似たような格好になっていて、青と黒を基調としており俺と同じデザインだ。顔には目元を覆う黒色のマスクをつけている。髪型や髪の色は特に変わっていない。前になぜ、髪を変えないのか聞いたことあったが「気に入っているから」という返事が返ってきたのみである。

 着替えが終わったので俺とトミは情報屋を出る。情報屋を出る時だが、実は情報屋の出口はいくつもある。地下にも出口があるので驚きだが、今回は店内の入り口の近くにある出口から出た。 

 俺とトミは、情報屋の人気のないところから一直線に街中に出て、ギルドに向かう。街中は人が多いがSランクの仮面の戦士が歩いているということには気づかれていない。気配を消しているため一般人には分からないのだ。分からないと言ってもすれ違うときには、すれ違ったという認識は一般人の方にもある。しかし、いちいちすれ違った人の顔などは覚えていないものだ。気配を消すのが苦手なトミも街中では特に気づかれない。まぁ、たまに気づかれて騒ぎになったことがあったので、トミは魔法を使ってさらに自分の気配を消すようになった。

 特に誰にも仮面の戦士とバレずにギルドの前に到着した。ギルドの中に入ると、冒険者や道具を売りに来たものなどいろんな人たちがいて、混み合っている。入り口付近にいた人は仮面の戦士が入ってきたのに気付いたのか「おはようございまーす」と軽い挨拶をしてくれる。俺も礼に習い「おはようございます」と挨拶をかわし前に進む。

 ギルドには依頼ボードというものがあり、その依頼ボードにはさまざまなランクの依頼が張り出されている。依頼ボードは朝に更新されることが多いので、朝の時間帯はギルドに人が多く集まる。依頼を受けるのは早いもの勝ちだからだ。早いもの勝ちと言っても1人につき一枚までしか受けることができない。複数枚依頼ボードから取ることはできず、1パーティにつき3枚までといった縛りもある。大量のパーティメンバーを集めたものが独占しようとした事件が昔にあったのでそのような決まりになったのである。

「朝は相変わらず人が多いわね」

 ギルドが混み合っているのを見て、嫌そうだがどこか嬉しそうにトミが呟く。

 俺とトミは他の冒険者が取り合っているのを他所に3階に行く。2階にも依頼ボードがあるが、1階と違って依頼ボードを見ている人は少ない。こちらはCランク以上の冒険者が受けることができる依頼ボードなので1階と比べて人は少ない。そして、3階にも依頼ボードがあるが、こちらはAランク以上のものしか受けられない内容の依頼となっている。

 そのため3階の依頼ボードの周りが最も人が少ない。まぁそれでもちらほらと人はいるのだが。

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