第1章 第6話 ダンジョン「忘れられた都市」とは
冒険家の仕事は植物採取や魔物退治、街の人の手伝いなど多種多様である。
ダンジョン攻略も冒険家の仕事の一つである。ダンジョンは、冒険家または王族関係者が一緒にいないと他の人たちは入ることが許されていない。まぁ、許されていないだけであってこっそり入ることはできる。ただバレたりした時が面倒らしいのでほとんどの人はしない。
冒険家の話に戻ろう。冒険家でも、ある一定以上のランクにならないと入れないダンジョンがいくつもある。
“忘れられた都市“というのはその中でも最高峰に難易度の高いダンジョンである。忘れられた都市に入るためには、Aランク以上の資格を持つ冒険者が少なくとも3人以上は必要であり、Bランク以下の冒険者は例えAランクやSランク冒険者と同じパーティだとしても入ることが許されていない。“忘れられた都市“は特に危険なダンジョンなので、入る時もちょっとした手続きが必要である。そのダンジョンのすぐ側に、小さな村である“忘れられた村”があるのでそこのギルド支部にいる人に自分のランクを証明する必要がある。証明せずにこっそり入ろうとしたものも何人かいたみたいだが、ダンジョンに入る前にすぐにそのギルドにいる冒険者に捕まっている。
ちなみにSランク冒険者だと人数制限はなくなり、1人でも忘れられた都市に入ることができる。ただし、Sランク冒険者でも1人で入るのはあまりおすすめされていない。そしてもちろんSランク冒険者でもこっそり入ることは許されていない。試したことはないが、多分バレるんだろうなとは思うし証明すれば堂々と入ることができるので、そんなこっそり入るような真似はしない。
俺とトミは2人でその忘れられた都市を攻略中である。2人で入れるのは、俺とトミがSランク冒険者だからだ。
「忘れられた都市に行くとなると少なくとも1週間は帰りたくないよな」
その俺の言葉にトミは眉を顰め悩ましそうな表情を浮かべる。
「……まぁ、そうだよね」
1週間帰りたくないというのは、忘れられた都市というダンジョンは探索にかなり時間がかかるのだ。半年前から攻略中なのだが、俺たちの最高到達点は第5層である。
忘れられた都市は未攻略のダンジョンなので、何層まであるのかわからない。忘れられた都市が見つかったのは今から300年前のことだ。この300年の間の最高到達点は、20層だと言われている。正直、20層まで行くのにどれだけの準備をし、どれだけの時間がかかるのか想像つかない。
俺たちは第5層まで行くのに1ヶ月はかかった。そのため今は攻略目的ではなく素材集めのために忘れられた都市に行っている。忘れられた都市は最高峰のダンジョンだけあって、他のダンジョンと比べてレア素材が多い。そのため金策するには打ってつけなのだ。
トミが悩ましそうな表情を浮かべたのは、1ヶ月かけて攻略した時にシンとルトーの2人を心配させてしまったことがあったからだと思う。
まぁ、その後は何度か忘れられたダンジョンに行っているが、その時はちゃんと帰る日付を決めて、今のところ守っている。
「1日でも約束した時間を過ぎると、ご飯が野菜だらけになっちゃうし、私たちの苦手な料理ばかり出されちゃうからねー」
どうやら、トミが悩ましそうな表情を浮かべていたのは2人を心配させることではなく、遅れて帰った時のペナルティが嫌だったからだ。流石に2人を心配させてはいけないと思ってはいると思うのだが。まぁ、憶測は良くないよね。
俺は特に苦手な食べ物がないので、ご飯が野菜だらけになっても平気ではある。まぁ何連続も続いて野菜だけになるのは嫌ではあるが。
「あなたはいいわよね。嫌いな食べ物がないのだから」
こちらが考えていることを察しているのかいないのかトミはそうごちた。
まぁ、ご飯は1日の楽しみの1つだが、トミはダンジョンを探索するのがもっとも好きなので結局行く結論に変わりはない。そこは5年もパートナーとして一緒にいるからわかる。そしてもちろんのこと、ダンジョン探索は冒険家の仕事としてもっとも自由だと思っているので俺も好きだ。
そんなわけで俺とトミは、シンとルトーに1週間かけて忘れられた都市に行ってくると声をかけてから家を出た。
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