第3話 占い館【フルーフ】
豪華な馬車に乗り5つ町を経由して3日後には王都に到着した。
「すごく綺麗だわ」
5大貴族であるレーヴァンツァーン領は中世のヨーロッパのような美しい街並みであるが、王都はさらにその上をいくバロック建築のような豪華な作りになっていた。ゲームで見た光景が目の前に広がっているのは感動もひとしおである。美しい町並みを見て大いにはしゃぐ私とは対照的に、兄はこの3日間誰とも口を聞くこともなく重たい空気に包まれていた。
「お父様、王都を見学したいです」
「わかった。17時までには宿屋に戻って来なさい」
「はーい」
私は元気よく返事をする。公爵令嬢の私が1人で王都を探索するのは危険なのでメイドであるメローネも同伴する。
「リーリエ様、私から絶対に離れないでくださいね」
「はーい」
心配性のメローネは私の手を強く握る。公爵令嬢にもしものことがあれば大問題になるので、メローネが犬をリードで繋ぐように私の手を握るのも当然なのかもしれない。それに優しく温もりを感じるメローネと手を繋ぐことは、私にとっては最高の癒しでもあった。
「リーリエ様、お城でも見学致しましょうか?」
王都の定番観光コースといえばお城になる。ゲームで見た豪華絢爛なお城は、是が非とも見学したいけれども、それは今日ではないだろう。
「私、占い館【フルーフ】に行きたいの」
「占い館【フルーフ】?」
メローネは占い館【フルーフ】の存在を知らないようだ。
「王都で占いをしてくれる有名なお店なの」
「わかりました。【フルーフ】がどこにあるのか聞いてみます」
「大丈夫よ。私、知っているの」
ゲームでは占い館【フルーフ】に行くことはないのだが、公式のホームページには王都の地図が紹介されていて占い館【フルーフ】の場所も載っていた。
「こっちよ」
私が手に入れたいアイテムとは
ゲームは入学式からスタートすることになり、最初の私のイベントは入学式2日目に開催される部活発表会である。入学式の日に兄は、入学祝いとして黒のブレスレットをプレゼントしてくれた。いかにも怪しいブレスレットだったが、半ば強制的に腕に付けられる。このブレスレットこそ、私が今一番欲しいアイテムなのである。このブレスレットは呪いのアイテムであり、ステイタスを全て10分の1にする。私はこの呪いのアイテムを装着した状態で、部活発表会の場で第2剣術探求部副部長の兄から模擬戦を申し込まれる。
兄は呪いのアイテムを私に装着させて、新入生が集まる部活発表会の場で、王国騎士の称号を手にした私をボコボコにして辱めるのが目的だった。しかし、このイベントは戦闘方法のチュートリアルになっているので、さほど苦戦することもなく勝利する。それによって兄との関係は絶望的となるのであった。
兄が呪いのブレスレットを手にしたのが王都にある占い館【フルーフ】である。私の秘策とは、この呪いのブレスレットを装着して、騎士として無能を演じることである。嘘の演技をして無能を演じても父には通用はしない。それならば、呪いの状態で訓練をすれば、無能を示すことができると思いついたのである。2年間の訓練を経て強くなった15歳の私では、呪いのアイテムもさほど効果がなかったが、訓練前の私なら効果絶大で間違いないだろう。私は心を弾ませながら占い館【フルーフ】へ向かった。
「ここよ!」
あきらかに場違いな黒のレンガで作られた怪しい二等辺三角形の建物が占い館【フルーフ】である。ホームページで見たイラストと寸分の狂いもないので間違いないはずだ。
「とても不気味な建物ですね。それで、リーリエ様は何を占って欲しいのでしょうか?」
「内緒よ!」
メローネに真実を伝えることはできない。
ここからはゲームにはない未知の世界である。占い館【フルーフ】で兄がどのようにして呪いのブレスレットを入手したのかわからない。私は不安と期待を抱きながら扉を開こうとした。すると、自動ドアのように扉が開く。占い館【フルーフ】の中は薄暗くロウソクの明かりが1つ灯されているだけであった。
「暗くて前が見えないよ」
私がぼそりと口ずさむと同時に、天上に備え付けられていた10本のロウソクで作られた不気味な照明器具に火が灯り、さきほどより視界が広くなった。壁には怪しげな絵や人形などが掛けられていて、左右に見える棚には、売り物だと思われる不気味なブレスレット、リング、ネックレスなどが飾られていた。
「何かようかい」
声がする方向に目を向けると六角形のテーブルが置いてあり、ひどい猫背の姿勢で椅子に座り、黒のフード付きマントを
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