第6話

「……乗換案内さえ見外す交通手段……」


まるで雲を突っ切る飛行機のようだ…


たしかにそのように言った。


頭の中で「飛行機」という文字がぐるぐると渦巻く。


「……そうか……そうか!!」


ヘウレカ!とでも叫びたくなるほどのことだった。


違和感の正体はすべてこれだった。


裏取りのために調べてみるが…


やはり出てこない。


調べ方を変えても…出てこない


飛行機の公式HPでさえ出てこない!


まるで「幽霊船」のような便だ…


そして担当の警官に電話を入れる


「明日朝一にあの男を呼べ!」


――――――――――――――――――――――――――――


「な、何でしょうか?」


朝、警察署の取調室にきたのは…


いや、取調室のきたであろう「向井聡理」だった。


机をはさみ、奥側には刑事。


面向かってお互いが座る。


「まぁ、福岡からはるばる申し訳ないな」


「いえいえ、旅は楽しいものですので。移動そのものが楽しいのですよ」


そういって軽快に笑う向井。


それを見る刑事の目は深刻そのものだった。


「時に向井さん」


「はいなんでしょう?」


「そういえば最近『博多天神祭』がありましたね〜」


「そうですね!僕も毎年行ってるんですがやっぱり毎回見ても感動しますね〜!」


向井はそう言って興奮気味に天神祭について語りだす。


「まぁまぁ、天神祭についてそんなにお詳しいのなら九州方面の鉄道や公共交通機関についてさぞお詳しいのでしょう」


「ええ!もちろん!西鉄などは私の庭ですよ!」


得意げに鼻を鳴らしている向井に向かって、刑事がとある一言を投げかける。


「そうですね、などもご存知ですか?」


「っ!」


得意げにしていた向井の動きが一瞬止まる。


それが刑事にとって「解」となった。


「…えぇもちろん!それがなにか?」


「いえいえ、ただ気になっただけです。もちろんご存知でしょうしでしょうねぇ」


「……えぇ、日頃からお世話になっていますよ」


明らかに向井の目が変わった。


「そういえば、スターフライヤーには珍しい便がございましたね〜、何でしたっけ?羽田空港発北九州空港行きでしたっけな?確か…22時55分発でしたなぁ」


「……」


「私もその便に助けられましたよ」


先程まであの威勢があったとは思えないほど顔が真っ青になっている。


「まぁ、独り言ですから気にしなさんな」


「…それで?本題は?」


「おぉ、話が早くて助かります」


そして刑事は肘を机につき、向井の方へ向かってずいっと前のめりになると…


「向井聡理、あなたを逮捕します」


「…なぜでしょう?現場にはなんの証拠もないし、私にはアリバイが有るのですから」


「えぇ、確かに乗換案内ではでした。しかし、旅行が好きなあなたは、そんなことお見通しですよね?『乗換案内に表示されない最短ルート』に関して、も」


「……」


「あなたは確かに朝、博多駅のホテルにいた。しかし、これは別に始発便に乗らなくても可能なことだ。そう、先程言った飛行機なら


「…しかし。どうやって博多駅まで…」


「北九州空港に24時45分につくはず、これは私達が調べた通り。しかしこれには続きがある。北九州空港発『博多・天神方面』行きの高速バス」


「!?」


「これを使えば2時15分ほどに博多駅に到着することができる。」


「…」


「さて、反論はなにかありますか?『手段』がバレましたから、そう簡単には逃げられませんよ?」


「…あぁ…」


「なんと言いましたか?」


「あぁ…私がやったよ…」


「それはなぜ?」


「あいつはいつも、俺の陰口をSNSでつぶやいてたのさ。まぁ俺は旅行をたくさんしてきたから友人がたくさんいる。そいつに教えてもらったのさ。そのときには、なんとも言えない憎しみがこみ上げてきたよ。仲間に裏切られたなんて初めてだから、さ…あいつは陰口だけじゃない。よくわからないデマを拡散したのさ。私のを、な。そのことを知った私は吐き気がしたよ。」


「言いたいことはそれだけかな?」


「あぁ…それだけさ…」


「10月14日7時50分 向井聡理容疑者を殺人の容疑で逮捕する。証拠は十分に揃った。発言も録音してあるだろうな」


刑事はそう警官に問う。


ここからが肝心だ。


「はい、してあります」


「よし、それでは連行してくれ」


「やったんだ…俺は…」


みんな、逮捕される瞬間は気が狂う。


こんなのいくらでも見てきた。


「内密に進めます」


「いや、そこまではしなくていい」


苦情が入る。警察内部から。それだけはめんどくさい。


まぁここまでが重要だったからな


「了解しました。」


うつむいたままの向井聡理は抵抗もせず、ただただ連れて行かれるだけだった。


しかし、刑事の隣を歩いて通り過ぎようとしたとき、言葉を言い残した。


「…楯突いた罰だ…」


まだ続いてるのか…


呆れた刑事は刑事は気に留めることもなかった。


こうして「蒲田駅裏殺人事件」は幕を閉じたのである。


――――――――――――――――――――――――――――――――


「また事件か…」


刑事はまた出動する。


1つの事件が終わったとて刑事は次の事件を担当する。


『大阪駅駐輪所強盗致傷事件』


「今度は関西、か…」


事件が発生したのは21:10頃だと推測される。


犯人の可能性が有る人、つまり容疑者は三人


朝7時の時点だと


Aさんは小倉駅、Bさんは新潟駅、Cさんは長野県飯田駅


さて、犯人は誰だろうか…?




どころで読者の皆さん。


この話を読んだあなたはすでに『大阪駅駐輪所強盗致傷事件』の解決ができる。


さて、犯人はA、B、Cのうち誰か…


あなたにはわかるかな?

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紫黒の夜 純怜 @Su3Le

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