第2話

事件の捜査開始の翌日


8月11日


容疑者の田中新太郎の取り調べ


とある警察署の一室


「あなたは被害者とどのような関係にあるのですか?」


田中新太郎は神妙な面持ちで答える。


「はい、福さんとはよく仕事帰りに飲みに行く間柄でした。仕事でもよく話したり、分からないことがあると福さんに聞きに行ったりしていました。」


「なるほど、ところで事件当日、22:30に駐輪場から出てきたことが確認されたのですが、その時も被害者と一緒に帰ってきていたのですか?」


「いえ、その時は会社を先にあがった福さんに先に帰ってもらって、僕は仕事が終わってからあがりました。なので一緒には帰っていません。」


「そしてその後はどこに?」


「コンビニで夜ご飯を買った後、自転車で帰ろうとして駐輪徐に行きました。福さんは普段電車で通勤していたのでいつも通り自転車に乗って帰りました。」


「その時、付近に誰もいませんでしたか?」


「いえ、確認してないので分かりません。ただ自転車に乗って帰ろうといつも通り特に意識せずに行動してたので…」


「なるほどなるほど…」


警察官もしっかりとメモを取る。


「その後、品川に自転車で行ったのですか?」


「はい、次の日の商談があったので、品川のホテルを取り、そこに滞在してました。」


外から見ていた刑事はこの人は白だな、と思う。


次の日の商談を自らの殺人事件で台無しにするはずがない。


さらに駐輪場に入るのは日常的だ、という発言もあった。


日常的な場所で犯行を及ぼすのがどれだけ危険か、流石にそれが分からないということは無いだろう。


となると怪しいのは次の青野早奈子か…


情報を整理した刑事は次の取り調べの準備をする。


青野早奈子の取り調べ


「あなたは被害者とどのような関係にあるのですか?」


「はい、私は会社の同じ課の後輩でよく福先輩、と呼んでいました。」


「直前まで共に行動していた、と言うことですが何をしていたのですか?」


「はい、早く会社をあがった私と福先輩は一緒に近くのコンビニで夜ご飯を買った後、わざわざ改札まで私を送ってくれたんです。」


「コンビニから改札に直行、と言うことですか?」


「はい、その通りです。」


そこで警察官は刑事の方を振り向いて合図を送る。


刑事はうなずいてすぐに京急蒲田駅に電話をかける。


もちろんその情報が本当かどうか、と言うことだ。


その後も軽い取り調べがあった。


しかしめぼしい情報を手に入れられなかった、と言うよりも手に入らなかった。


刑事が京急蒲田駅に連絡を取り防犯カメラを確認したが…


その情報は正しかったようだ。


しかし何故だろう


まだ頭の片隅に残るなにかは…


まだ…


なにかを忘れている…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る