第5話 二日目の終わり
「いい加減に気付けこのやろう!」
「え?あ、あ…ルシールさん?」
突然の怒号にハッとする俺。
…?俺は今まで何をしていたんだ?…にゃ、にゃんこは!?
…良かった。にゃんこは寝ている。
艶のある黒いふわふわの毛玉がそこに寝ている。
…あれ?なにかがおかしいぞ?なにか大切なことを忘れている気がする。
「やっと意識が戻ってきたか、このくずやろうが!」
ルシールさんがめちゃくちゃ怒っている!!
今までも怒りのオーラは感じていたがこんなにはっきりと口に出されたことはない。
というか怒っていてもとても丁寧な言葉づかいで「神の使い」と言った感じだったのに。
「ご、ごめんなさい!!こ、これからはまじめにやるから!!」
今までも真剣だったのだが。
「あ、いやこれはなんというか…
伝達手段の「丁寧な言葉遣い」と「皮肉な表現」が無くなっただけだ。今までと何ら変わりはない」
…それはそれで聞きたくなかった。オブラートがなくなるとこんな風になるのか。
今までは結界やらなにやらで厳重に封をされていた呪いの箱から、漏れ出すオーラにおびえていただけに過ぎなかった。
今はたぶんどこぞの勇者がその命と引き換えに閉じ込めた恐怖の魔王が復活してしまった!ような感じだ。
そのへんは基本のオプションにしておいてほしかった…。
「聞いているのか!二日目の集計も終わった。
「知恵が、取られた…」なんてことだ…俺はもう全知全能の、知恵の神ではなくなってしまったのか…(自分で手放した)
「他のゴミが知恵を開放したことで私の声が理解できるようになったんだろうがな」
この人、他の候補者もゴミ呼ばわりだ。
頭の中では候補者=ゴミだったのか。他の候補者も同じ目に合っているのだろうか。一応選ばれた人たちではなかったのか。恐ろしい封印を解いてしまった。
絶望して途方に暮れていると、一人の天使のような女性が空から降りてくる。
顔はルシールさんそっくりだが、微笑んだ表情で優しさが溢れ出している。
まるで慈愛そのものに翼が生えているような美しい人だ。
「ルシールお姉さま!わたくしの務めが終わりましたのでお姉さまの元へ参りました!」
「フェルか。ということはもうフェルのゴミはいなくなったのだな」
顔は似てると思ったが姉妹なのか?たくさんある神の右腕のうちの一人なのだろうか。
…って思いっきり丁寧な言葉じゃなかったか?どういう仕組みなんだ。
神の使いは適応外なのか?単純にルシールさんは俺を嫌っているだけなんじゃないか?
「お姉さまのところのゴミはまだあるんですのね。…汚らわしい!」
「このゴミは肉体を引き換えに創造していないからな」
「このゴミは何を創造したんですの?…猫、知恵、伝達手段。それなのにまだ猫は一匹しか創造してないんですのね」
「このままだと稼いだポイントが足りずに明日の朝には処分されるがな」
…な、なんだって?そんなまさか…。
今まで怖くて聞けなかった俺も悪いが、そんな大切なことは何回でも言うべきだろう!もう二日目も終わってしまうというのに…連休をただ寝て過ごして台無しにした気分だ!
それにしてもこの人たちの倫理観はどうなっているんだ!
人をゴミだなんだと言いやがって!面と向かっては言えないけど…。
俺が正式な創造神になって、何が大切か、何が素晴らしいかを説かなければいけない!創造神になったら面と向かって言っても平気なはずだ!
そのために創造するものはもう決まっている。俺にも世界にもまだまだ足りない!
「猫を100匹創造します!!!」
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