第3話 一日目の終わり

あれからどれくらい時間が経っただろうか。

さすがに猫さんも遊び疲れたのか寝てしまった。


夢の中とはいえ夢のようなひと時を過ごせたが、まだ夢は覚めない。

アラームを忘れてしまったのだろうか。

だが、もうこんな経験はできないだろう。出来ることなら覚めないでいてほしいと思いながら周囲に目をやると草花が溢れ、世界は緑にあふれていた。


草原だけじゃない、辺り一面の草木は風に揺れ、大地は隆起し、その裂け目を澄んだ色の液体がゆっくりと流れている。


しかし、なんとなく違和感もある。普通ならそこにあるはずのものもないような…。

そもそも違和感など考えても仕方ないかもしれない。


ただ、それならこの猫と会話が出来た方がよかったと強く思う。


「それぞれ1ptずつ使って伝達手段と知恵をアンロックしました。動植物ツリーの一部が解放され、他の候補者様もツリー内の取得が可能になります。

これでptは0になりました。今後は創造物が世界に与える影響によって加算されるか、他の候補者様間でのやり取りでのみ変動いたします。」


「それで。なのですが、そろそろお名前を登録していただいてもよろしいでしょうか?」


「え、あ…っと…?」


なんだこの人は?いつからいたんだろう?


「EAT、旧世界では食べるという意味ですがこちらでよろしいですか?」


「いや、伊藤です、伊藤!」


「I、T。では、IT’sで登録させていただきます」


「そ、そうじゃなくて日本語で、い と うです!」


「一度登録されたお名前は変更できません」


よくあるやつだ!なんで間違った場合のことを想定していないんだ。名前にはこだわるタイプなのに。


「それでは創造1日目が間もなく終わりますので、私が「旧」創造神様から承った事を簡単にご説明いたします。」


「え?それってどういう…?」


「もうお聞きになったとは思いますが、旧世界の各地域で亡くなった方、数名をこの世界の創造神候補者としてお招きしております。旧世界の反省をふまえて、この世界を新生をしていただきます。」


え?なくなってる?それならにゃんこがなついているのは夢じゃないってことなのか?


「かくいう私も、神の右腕500本のうちの1本になってしまい収拾がつかないのです。」


…千手観音的な?


「旧創造神様におかれましては、頭が増えたり火を吹いたり、世界を3歩で一周したり。は、まだ良い方で、800万に細分化されトイレの属性も持っていたりと。」


…トイレの神様は日本のことだな。それって考えるとよく分かんないよな。


「偶像崇拝禁止などの措置を取ったのですが全く勢いは収まらず。さんざんいろんなものを付けたされたあげくに、神はいないという思想も増えてきており…」


…壮大なスクラップ&ビルドですよね。


「ご覧になったかとは思いますが、旧創造神様はそれはもうすごい、ものすっごいお姿になっておられます。」


…それは見なくてよかった。気づいたときに聞こえていたおぞましい声の主はモンスターだったのか。


「と、いうわけで旧世界の記憶を持った方々から数名を選び、各々が創造した物のみとの相互作用を原則とする新世界を創っていただきます。ただし...」


…現実でも一極集中は良くないとか騒がれてたもんね。完全に神様が持て余して投げたんだな。


「創造神になられるお方はお一人のみです。その過程で一定期間ptが稼げなかった方などは権利のはく奪、創造物の譲渡などが行われます。現在のIT’s様の場合は猫、伝達手段、知恵になります」


なに!?ま、まさか、にゃんこが…にゃんこが取られるのか...!

また嫌われる日々が来るのか…。そんなの耐えられない!生きていく意味なんかない!ふざけるなよ!もう夢だろうが何だろうが関係ない!


「どうやら本気を出さないといけない時が来たようだな…!」

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