第5話 驚異の力!轟虎のヌシ現る

ズザッ ズザッ


レイン「本当にこっちで合ってるんだよね」


ルル八「匂いからしてこっちに進んだ人の数が多いから多分もう少しで着くと思う…」


レイン「ならいいけど…」


レインは不安を抱いていた

それもそのはず、情報としてルルハの嗅覚

が鋭いのは知っているもののはっきりどの

くらいのものかは検討も付かない…


レイン(まあ、妹連れて行く時も嗅覚頼ってたらしいから襲われさえしなければ辿り着けてたのかもね…襲われさえしなければ…)


ルルハ「レイン!」


考え事をしてたレインはその声でハッとする


レイン「どうした?!ルルハ!」


ルルハ「1、2…いや 3匹 !! レイン、何か大きな獣3匹に囲まれてる!!」


レイン(いきなりかよ!)


レイン「位置はどんな感じになってるの?」


ルルハ「ぐるぐる周り回ってて分からない」


レイン(仕留める寸前ってとこかな、こんな時の為に一か八か仕込んどいたアレ使うか)


そうするとレインはポーチから

何かを描いた紙を取り出した


ルルハ「あ、それ監理小屋で出発前に描いてたヤツか?それでどうする…」


レイン「ちょっとごめん、掴まってて!」


そう言ってレインはルルハ抱き寄せ持っていた紙を地面に置いた


ルルハ「ええ!?なになに!?」


レインは何かのタイミングを計っている


ズザッ


レイン(止まったッ)


レイン「今だッ!」


その声と同時にレインはその置いた紙に魔力を流し込んだ

また同じくしたそのタイミングで大きな獣達はレイン達に襲いかかった!


瞬間!


魔力を流された紙が2人の足元へ爆発的な

体を押し上げる竜巻を生み出し周りの砂を

巻き上げながらレイン達を宙に飛び上げた


ルルハ「うおぉうお〜〜飛んだーー!!」


レイン(倒すまでは難しいと思うけどルルハの嗅覚がどれ程か見せてもらおうかな…)


レイン「ルルハ、あの砂煙の中から獣の位置を見付けだせたりする?」


ルルハ「出来るよ!えーと…ここから

北に1匹西は2匹でかたまってる!」


レイン「よし!それで充分!」


そうするとレインは空中から落下しながら

飛び上がり際に取り出していた2枚目の別種

の紙に魔力を込めた


レイン「ここ!!」


そう叫んだ瞬間レインの持っていた紙は燃え

大きめの火の玉となり獣達に向い放たれた


ドシュッ ドシュッ ズササッ


獣達 「ギャオォン…」


火の玉が直撃した獣達が倒れていく声が響く


レイン「よしっ、2匹倒せた!あと一匹この一匹は他2匹とはカンの鋭さが違うみたい」


ルルハ「レインナイス!これでだいぶ戦えるようになった!私に任せて!」


レイン「ルルハ!それは大きさからして大人のハウリングサーベル、丸腰じゃ……!」


ルルハ「うおぉりゃぁぁぁぁーー!!!」


レインは慌てて残り1枚の雷の印が拵えた

紙で応戦しようとした…しかし…


ブヲォンッ


ルルハはハウリングサーベルの攻撃を軽々と

避け、ものすごい勢いで風を切り裂きながら

その獣の頭に強烈な蹴りをお見舞いした


バチコーン


ハウリングサーベル「ガギャイィーン」


レイン(えぇぇぇーーーー!!?強過ぎる…)


ルルハは大人ハウリングサーベルをあっさりと一撃でのしてしまった


ルルハ「ピース!」


そうルルハは余裕の勝利を浮かべた


レイン「ははは、流石だよルルハ!」


表向きこんなレインだが内心は怯えている。

何故かと言うと、前にルルハが幻惑の魔法で襲いかかってきたあの時ですらギリギリだったのにもし無怪我のフルな状態で襲われてたら今頃自分は………


ルルハ「当たり前だ!私は獣人族の中でも

強靭な血筋を引いてるからな!」


レイン「アハハ…」


レイン(ルルハのお父さん、どんな人だろ?)


レインは強靭な獣人の大男を想像した…


ルルハ「…!レイン!後ろからさっきよりもデカイ獣の匂いがする!」


レイン「えぇ!?お父さん!!?」


ルルハ「なに!?レインのお父さんって

虎なのか?!」


そんな事を言っているうちにどんどんと、

その姿が見えてきた


レイン「アワワワワ!!デカ過ぎる!!」


その獣は四つん這いの状態で高さ10m程で

通常の大人のハウリングサーベルの2倍以上

の大きさだった


ルルハ「これは楽しそうな相手だなぁ!」


レイン(戦闘狂なんだ、ルルハさん…)


睨み合っている!そのヌシだと思われる

その轟虎は勘でルルハの強者感を感じ取った

のだろう、下手に手を出そうとしない…

ゆっくりと隙をうかがう様にじっとルルハを

睨み付けている……


レイン(さっきまでの奴らとはまるで違う

長年生きぬいた経験が物言う圧倒的オーラ、

警戒心も段違いで強い…流石の王者の風格

って感じか…)


突然ルルハが走り始めた!


レイン(お、ルルハが先に仕掛けた!)


と思った矢先


バサーーンッ


先程ルルハのいた場所の砂がえぐり取られた


レイン(は!?…見えなかった!ルルハが先に仕掛けた様に見えたけど、実際はあの虎が先に仕掛けていてそれに気が付いたルルハがまずいと判断しその場を離れたって事か!)


ルルハ「っ、オラァ!」


隙を見てルルハが蹴りを放った…


レイン(当たる!しかも風を切り裂く音がさっきよりも鋭い!これなら…)


ガコーン


ルルハ「チッ、やっぱり無理か…」


レイン(ルルハの蹴りが弾かれた!?あの体、そんなに強固なのか…弱点さえあれば)


ルルハ「首下にさえ入れられれば、

こんなヤツ……」


ルルハは本能的に感知していた

この虎の弱点を…


レイン(首下が弱点…正気が見えてきたかも

えーと…………)


レイン「よし!ルルハ、いまから魔法使うからそこから離れといて!」


ルルハ「うおっしっ、分かった!」


ルルハがバックステップで

そのヌシ轟虎から離れる


何かを察知したヌシ轟虎が

標的をレインに変えた


ルルハ「レイン!そっちいったぞ!」


レイン「大丈夫!問題無し!…くらえっ!」


レインは3枚目の雷印の紙を発動した


パーーーンッバチバチバチッ


レインの落雷は見事ヌシ轟虎に直撃した!


ルルハ「まだだよ!生きてる!」


レイン「知ってる…」


ルルハ「すぐ痺れとれてまた攻撃が来るよ」


レイン「きたッ!」


すると周りの砂から黒いものが轟虎の体を

上っていく


ガオウッガオウッ


ルルハ「これって……」


レイン「砂鉄だよ、雷をくらった轟虎は今の短時間だけ電磁石と同じ性質になっているつまり砂鉄だらけの砂地とは相性が悪いわけ」


ルルハ「へ〜」


レイン「ほら!早くしないと隙出来たろ?」


ルルハ「あ!…ふ、流石だねレイン!」


ルルハは思いっきり地面を蹴って轟虎の

首下に向かって飛び上がった


ルルハ「うおおぉぉぉりゃぁぁぁ!!!」


ルルハの強烈な蹴りは確実に首下を捉えて

打ち放たれた


バーーーーーン


まるでライフルの銃声の様な

重い一撃の音が鳴り響いた


ヌシ轟虎はフラッとして地面に倒れ込んだ


ズザァーー…


ルルハ「はぁはぁ…」


ルルハは下を向いて呼吸を整えながらレインにグッドサインを出した


レイン「おう!」


やりきった勝負に達成感を持ちながらレインもルルハにグッドサインを返した


レインは倒れ込んで笑った


レイン「アハハハハッ」


ルルハ「アハハハハハッ」


ルルハも一緒に倒れ込んで笑った


レイン「まさか、だったけどルルハが

居て助かったよ!」


ルルハ「私もレインのおかげで生きてる」


レイン「それは、大袈裟だよ」


レインは笑いながらそう返した


ルルハ「………」


レインはのっそりと起き上がると荷物から

水筒を取り出してお茶をコップ式の蓋に注ぐ


コキュコキュコキュ パッ

ジャーーーッ とぷっとぷっとぷ


レイン「ほらお疲れ様、喉渇いたでしょ?」


レインは注いだお茶をルルハに渡した


ルルハ「おう、ありがと…」


ゴクゴクゴクゴク ぷは〜


ルルハ「生き返る〜」


レイン「おじさんかよ…ぷっ」


ルルハ「ぷっ…」


レイン達「プハハハハハハハッ」


レイン「あ〜っ、おっかしい〜」


ルルハ「ハハッ…あ、コップありがとな!」


ルルハは、レインの水筒の蓋を返した


レイン「おう、また飲みたくなったら

言ってもらっていいからね♪」


ルルハ「わかった!じゃあそろそろ行くか」


レイン「ちょっと待って!これから先何あるかも分からないし轟虎の素材で売れそうな物は剥ぎ取って置いた方がいいと思うんだよ」


ルルハ「なるほどね〜」


そういう事でレインとルルハ2人組は自分達が持てるギリギリまで素材を剥ぎ取った


レイン「おっも、欲張り過ぎたかな…」


ルルハ「あっれ〜?その程度で重たいとか言ってんの〜?」


ルルハはそう言うと走ったり跳ねたりして

レインを挑発した


レイン「ああ、ルルハそんな事したら…」


レインの心配が的中する


走っていたルルハが飛び跳ねた拍子その荷物の紐が外れ収集した素材をばらまいた


ゴロバラゴロゴロ


ルルハ「あぁ!!?」


レイン「ほら、言わんこっちゃない」


ルルハ「アワワワワ、どうしよう?」


レイン歩きながら言った


レイン「先に行っとくからな〜」


ルルハは本気で焦っていた


ルルハ「えーとえーと、ここをこう結んで…」


するとルルハの後ろから誰かが肩を叩いた

ルルハが振り返るとレインが戻って来ていた


そうである、

この男、ルルハを置いて先に行こうとした

ものの自分には優れた嗅覚など無いため

結局1人では上手く辿り着けない事を察し

引き返してきた始末…


レイン「ルルハ…僕手伝うよ…」


ルルハ「レイーン♪ありがとう!良い奴だな」


ルルハは何か勘違いしているが教えない方が

両者とも救われると考えたレインは静かに、

素材を回収した……


ズザッ ズザッ ズザッ


レイン「ルルハ、もうすぐ着きそう?」


ルルハ「匂いがだいぶ濃くなってきてる新しい匂いが近い…」


レイン「なら、もうすぐみたいだね」


激戦を遂げたレイン達はヘトヘトながら

もうすぐという希望を頼りに歩いた…


それから30分が過ぎた頃…


ゴクゴクゴク ぷは〜


レイン「はぁ〜……ん?あ、あの門…」


ルルハ「やっと、やっと村が見えた!」


レイン「本当にやっとだよ…」


レイン達は、なんとか目的地のグクテト村に辿り着いた


しかしレインはすぐにその村の違和感を

察知する…


レイン「この村…魔光陽が無い…」


ルルハ「それはあまづくりの人が体調崩してるからとかじゃないか?」


レイン「それは考えにくいよ正直…」


そう言うとレインは地面の土をとって見せた


ルルハ「この土がどうかしたのか?」


レイン「この土の乾き具合が数日雨が降らされてない程度のものじゃないんだよ」


ルルハ「そういえばその畑の野菜も干からびてる…」


レイン「野…菜……もしかして…」


レインが何かに気が付いた


ルルハ「野菜…で何か思い出したのか?」


レイン「思い出したというか…この村にまだ

人住んでる可能性が出てきたなって思って」


ルルハ「ああ…それで…」


コロコロコロ……


ルルハの足元に小さな石が転がってきた…


ルルハ「なんだこれ…?どこから…」


そうしてルルハが見上げると扉の壊された

家から手招きしているおばさんがいた、


レイン「あ、やっぱりまだ人居たんだね…」


ルルハ「どうしたんだろうね?」


2人はその手招きに従ってツギハギだらけの

おばさん宅に上がった


レイン「アハハ、すみません…ここの村はもう人が居なくなったものかと思ってました」


するとおばさんが食い気味に言った


おばさん「何言ってるんだい!居ちゃまずいんだよ!」


はたしてやっとの事で辿り着いたグクテト村

だが、何か訳がありそうだ…そして…

気になるおばさんの発言の意図とは如何に…

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