第6話 兇変の長と狡猾な罠


おばさん「アンタら居ちゃマズイんだよ」


ルルハ「居ちゃまずい?」


おばさん「どうやら、アンタ達は

よそから来たみたいだね…」


レイン「はい、その通りですけど…

もしかして何かまずい事しちゃいました?」


おばさん「いいや、まずいのはこの村の

今おかれている境遇さね……」


レイン「境遇…ですか…」


そこでルルハが何かの気配に気が付く


ザッサッサッザッ


ルルハ「でも私達以外にも外歩き

回ってるやついるみたいだぞ?」


おばさん「なんだって?!アンタ達、

こっちのカウンターに隠れて!早く!!」


おばさんは何かに怯えるように慌てて

レイン達をカウンター裏に隠した


ルルハ「なんだろうな…」


レイン「シッ…静かに…何か来る…」


ズザ ズザ ズザ ズザ ズザザッ


おばさんの家の扉前に現れたのは大きい

ムキムキの男2人組だった


おばさん「どうしたんだい?取り立てに来る

のはまだのはずだけど…」


大きな男2人は顔を合わせると

大笑いした


顔に傷がある男「俺達は村を利用させてる

見返りにお金払ってもらいに徴収しに来たんだよ」


おばさん「わ、私は先週払ったばかり

じゃないか…」


つるつる頭の男「おい、俺達をあまりなめ

すぎない方がいい…この門の外から続く

2匹の足跡どう見たってこの家に続いてる」


レイン(……バレた!?)


つるつる頭の男「分かってんだよ!この家に

2匹潜り込んでることはよ!!」


おばさん「それは…」


顔に傷のある男「これは隠し事をしたらどうなるか見せしめが必要みたいだな…」


おばさん「な、なにを!?」


するとつるつる頭の男がおばさんの

服を掴んで持ち上げた


おばさん「く、なにするんだい!?」


レインはすぐに隠れている場合

ではないと判断し魔法で男達から

おばさんの救出を試みた


しかし、それよりも一瞬早く飛び出して

攻撃を仕掛けたやつがいた


ルルハ「その手ぇ 離せぇっ!!」


ルルハは目に止まらぬスピードで

おばさんを持ち上げている男の手首

を捻り痛みでおばさんを離した瞬間、

つるつる頭の男の腹に一発、そして

右に居た顔に傷がある男の胸ぐらを

掴み引き寄せ際男の左顎下に手の甲

による強烈な打撃をおみまいした…


ドスッ ガシッ グイッ バダンッ


男達「うぐっ…」


バタ バタ …


ルルハ「ふぅ」


おばさん「あ、アンタたち…一体…!?」


おばさんはルルハのあまりの強さに

唖然としている

 

ルルハ「へへーん、私強いだろ!」


レイン「ルルハ、おばさんびっくりしてるよ…すみません驚かせて…僕達はとある目的で旅をしている者で、決して脅威とかそういうのではないですので安心してください♪」


おばさん「もし……この人達なら…」


レイン「あの、この村で何が起きているか

聞かせてもらえないでしょうか?」


おばさん「!?本当に私達の村の事に

ついて聞いてくれるのかい?」


ルルハ「でもレイン!黒ローブの情報は

どうするつもりなんだ?」


レイン「その事なんだけど…この村に例の

黒ローブが関わってる可能性があるんだよ」


ルルハ「えぇ!?アイツこの村に

居るのか!」 


レイン「そうは言ってない、ただ見付ける為

大事な手掛かりはあるかもしれないけどね」


ルルハ「おばさん私にもこの村のこと

聞かせてくれ!」 

 

おばさん「アンタ達も訳ありみたいだね…」  


レイン(さっきの男達の目、明らかに幻惑魔法にかかっていた…となれば…)


おばさん「話すなら少し前の事から話さない

とだから少し長くなるけど大丈夫そう?」


レイン「是非お願いします!」


ルルハ「うっす!」


レイン「ははは…」


おばさん「それじゃあ、話させてもらうわ…」


おばさんから聞いた話曰く…

村長が村に活気を戻すためお祭りの開催を

考えて人の多い水の都へ宣伝チラシ配りに

向かったらしい。そこから帰ってきて村長

は兇変したみたいでそれっきり温厚で優し

かった村長は村の力持ちに命令して村人から

お金や資源を取り立てる様になったとの事…


レイン「うーん、妙な話ですね……

特にその温厚で優しかった村長が都から

帰ってきた途端兇変したというところ…」


レイン(普通にこれだけで考えれば都また移動中に何者かによって幻惑魔法や洗脳魔法をかけられ村長が兇変したと考えられる…が )


レイン「おばさん、あの男2人も村長が帰ってきた途端兇変したんですか?」


おばさん「いいや、それがね…この2人は

村長が帰ってきたばかりの頃は村の力仕事

を受け持って必死に動いてくれる真面目な

人だったのよ!……だけどある日兇変した

村長から2人共呼び出しを受けて、戻って

来た時には2人まで兇変してたの…」


レイン「それじゃあ、まさか…!」


ルルハ「なんだ!?なにか分かったのか?」


レイン「いや、でも………おばさん

あと2つ質問いいですか?」


おばさん「なんだい?」


レイン「都から帰ってきた時村長の他に怪しい人物は周りに居ませんでしたか?」


おばさん「それは居ないよぉ」


レイン「居ないですか……最後の質問です」


レイン(もし今からする質問でYESなら解決法は何とか分かる…だけどもしNOなら……)


レイン「村長さんは魔法の熟練者ですか?」


おばさん「何を言ってるんだい、村長はずっと

この村で生きてて魔法の鍛錬なんてさっぱり

だから魔力をねる事も難しいはずよ」


レイン(答えはNOか…魔力すらねれない人に

いくら他者のコントロールが入ってもその人

にあの高度な洗脳魔法を使わせるなんて無理

でもこれで一応他者によってあの男2人は洗脳されていた事が分かった……だけど一番の問題が残ってる…第3者の手口が分からない)


ルルハ「どうするんだ?」


レイン「よしっ!」


ルルハ「うお!?」


レイン「今から村長の家に行って

直接調べて来ます!」


おばさん「危ないよぉ!忘れたのかい?

あの2人もあの家に行った後おかしくなった

なんの罠が仕掛けられてるやもしれないし」


レイン「罠…?………!!!」


レイン(もしかして……)


レイン「ありがとうございます!おばさんの

発言のおかげでいい所に気が付けました!」


おばさん「なんか私言ったかい?」


レイン「ほら、ルルハ行くよ!」


ルルハ「お、ちょっと置いてくなよレイン」


おばさん「ちょっとアンタたち……」


レインは何かに気が付き駆け出した


タッタッタッタッタ


おばさん「あら、戻ってきた…」


レイン「あのおばさん、村長の家って

どこですか?」


おばさんもそれには流石の苦笑い


おばさん「砂波丘って場所のてっぺんに

建ってるわ、どうしても行くなら気を付けて

行きなさいよー」


レイン「へへへ…気を付けます、じゃあ!」


タッタッタッタッタ


レイン「えーと、砂波丘ね…だいたいこういうのは村の中央とか公園の案内看板に書かれてるはずだけど……」


ルルハ「看板か…」


くんくん


ルルハが匂いを辿り始めた


レイン「なるほど!案内看板には村の外から

来た人達の匂いが集まってるはずだし…」


ルルハが何かに気が付いて

一直線に走っていった


レイン「お!ルルハまさか看板見付けた?」


レインはすぐにルルハの後を追った


そこには案内看板のようなものが建っている


ヒュイッ


レイン「それ看板じゃん、あれルルハ〜?」


ルルハが案内看板らしきものを華麗にスルー

すると、ある建物の中に入っていった


レイン「えー…ようこそ♪テトデリシャスへ本店は12時から魔光陽暗転後20時までを

営業時間としています………村に来られた方は是非うちの料理で舌鼓なさって下さい♪」


スゥーーーッ


レイン「ご飯にするか……」


レイン(実のとこ旅立ってここに着くまで水

だけだったからだいぶお腹空いてたんだよ)


レインはルルハに続いてお店に入った


チリン チリン


オーナー「いらっしゃい、こんな時に2人もお客さんとは珍しいなぁ」


ルルハは先に何か頼んでるかと思ったが、

案外レインを待っていた


レイン「えーメニューは…ルルハ頼まないの?ルルハ好きそうなステーキとかあるよ」


ルルハはレインに期待の眼差しを向けた


ルルハ「それにする!」


ルルハは灰色の尻尾を振って嬉しそうな様子


レイン「えー…これもしかしてお金僕持ち」


ルルハ「うん!!!」


ルルハは元気いっぱいに悪気なく返事した


レインは財布を確認しながら思った


レイン(とほほ…僕持ちかぁでもルルハには砂地でのハウリングサーベルの件で恩だって素材も売れば全然奢る額以上の価値あるし)


レイン「よし、ルルハ!食べたいだけ

食べちゃって!!」


ルルハ「おお!本当かレイン!やったぁ!」


オーナー「あの…景気がいいのはとても嬉しいんだがな、村もこの有様だ…食品も最低限しか仕入れて無い…詰まるところ最高で数食分しか作れねぇんだ…」


ルルハ「えぇ〜…」


ルルハのテンションが一気に下がった


レイン「まぁ、この村を元に戻せばまた

この食事の続きまた奢ってあげるから…」


ルルハ「本当!!レイン言ったからな!!」


ルルハのテンションが復活した…

ついでに闘志も湧き上がった…


オーナー「なに!お客さん達この村を

元に戻すって、そんな事が出来るのか!?」


レイン「まだ可能性ですけど、この異変は

解決出来ると思います…それに自分で言うのは恥ずかしいですが僕は魔法に詳しくここに居るルルハはハウリングサーベルを蹴り一撃で倒すほどの強さを持ってますので油断さえしなければ」


ルルハ「そうだぞ!私結構強いからな!」


オーナー「あのハウリングサーベルを一撃で

倒すなんて…本当にお客さん達ならやって

くれるかもしれねぇ…なあ、今作る飯は全て

タダで提供させてもらう!代わりに、絶対

この村を救ってくれ!頼む!」


レイン「オーナーさん…」


ルルハ「おう!私達に任せてろ!

絶対に山盛りご飯にありついてやる!」


レイン「ルルハ目的いきなり変わってるけど…でも僕達に任せてってのは本当です、絶対に村を元に戻して見せるので!」


オーナー「ありがとうございます…」


レイン達はオーナーの心行きを美味しく頂き

腹を満たした


ついでに砂波丘の場所も教えてもらった


レイン「ご馳走様でした!」


ルルハ「村助けたらまた来るからなぁ〜」


そしてレイン達は村の中央の宿舎の奥の道を

真っ直ぐ上がっていき砂波丘のてっぺんを

目指した


レイン「ここからは全く未知の場所だから

何が仕掛けられてるか分からない…ルルハ

気を付けて進むように…」


ルルハ「うん、分かった…気を付ける」


警戒しながら砂波丘を登っていくと上の方に

屋敷の様なものが見えた


ルルハ「ん!あったぞ家!」


レイン「シーー、静かに…」


ルルハ「あ、そうだったな…気を付ける…」


ルルハは数分で注意を忘れる為ちょくちょく

危ない場面はあったものの2人はその調子で

屋敷のすぐそばまで来ていた


レイン「ここから部屋の中を覗けたら

いいんだけど…」


ルルハ「部屋の中を覗いてどうすんだ?」


レイン「これはあくまで僕の予想だけど、

あのおじさん2人が洗脳魔法をかけられた

のは村長本人ではなく何かしらの魔法罠

例えば洗脳魔法を仕組んだ魔法印罠とか

踏ませるだけで作動出来て……」


ルルハ「それって赤紫色で光ってたりする?」


レイン「最後まで聞いてよ…赤紫色?うーん洗脳魔法は闇系統の魔法だから反応色は黒っぽい紫、半分合ってるかなよく分かったね」


ルルハ「あった!」


レイン「ちょっと、大きい声出したら

ダメだって…」


ルルハ「あったんだよ、魔法印…」


レイン「うそ!?カーテンかかってるのに

見えるのルルハ?」


レインはつい驚いて少し大きな声で聞き返す


ルルハ「私 獣人族だからこれくらいの

カーテンなら関係なく見えるぜ…」


レイン「どの辺にある?」


ルルハ「左端の玄関入ってすぐ下の

所に描かれてる」


レイン「そこか…」


レインはそれを聞くなりすぐに

玄関前へ移動した


ルルハ「ちょっと、何する気だよ…」


ルルハはレインをコソコソと追いかけて

小声でそう聞いた


レイン「今からこの扉を開けて村長達に

洗脳魔法を発動している魔法印に僕が解印

を施して魔法印の効力を解除するんだよ」


ルルハ「どういう意味か分からないけど

村を戻せるんだな山盛りご飯ご馳走だな!」


レイン(トホホ……ご馳走…まぁ、それも

これが終わった後の話…今は集中しないと)


するとレインはゆっくりとドアノブに

手を伸ばした


その時レインの頭は謎の違和感を感じとった


レイン(何か見落としてる気がする…流石に緊張し過ぎたかな…気のせいだよね…)


そしてレインはそのままドアノブを掴んだ


瞬間!


ガチャ ギーーー


ルルハ「レイン、そんなに速く開けたら

ばれるよ!…レイン?」


レイン(まずい まずい まずい まずい !

体が勝手に前に進む!このままだと洗脳

にかかってしまう…)


レインはこの時になってやっとさっきの

違和感の正体に気が付いた


レイン(ルルハは確か紫では無く赤紫色と

言っていた、だとしたらその赤は誘導魔法

やトラップ式魔法の反応色!)


レイン「ルルハァ!扉ごと僕を蹴り飛ばして!早く!!」


ルルハ「えぇ!?突然どうしたんだ!?」


レインの足が勝手に進み出す…


レイン「早く!!」


ルルハ「よく分かんないけど、言ったの

レインだからな!後悔するなよ!」


そう言うとルルハはレイン諸共扉を

蹴り飛ばした


ドスッ ガッシャーンコーン


バタンッ


レイン「うげぇーーーッ」


レインは一緒に飛ばされた壊された

扉の下敷きになって寝そべっている


ルルハ「レイーン大丈夫か〜」


ルルハは流石に心配になって駆け寄ってきた


コンコン ガチャ ギィーーーーー…


ルルハ「レイン大丈夫か?」


レインは思った


レイン「うぐ、今ノック要らなくない?あと

扉ごと除けてくれると有難い、この状態で扉

開けて声掛けるなんてユニークだね…」


バタ


ルルハ「ごめん!そうだよね!」


それを聞いたルルハはすぐに扉を除けて

くれた


ガシ シュッ ガッシャーン


レイン「助かる…」


レインはだいぶダメージを負ったものの

ルルハの蹴りをくらう寸前に魔力操作で

ダメージを軽減していたため骨などへの

損傷は避けられた


レインはゆっくりと立ち上がった


すると突然、頭の中に低い声が響いた


謎の声「騒がしいお客さんだね…」


ルルハ「誰だ!?」


謎の声「まぁまぁ外で話すのもあれだ、

どうぞ屋敷の中へ…」


レイン「あのおじさん達もそうやって

洗脳に持ち込んだわけか…」


レインはその体でゆっくりと玄関の方へ

向かった


ルルハ「レイン!入る気なのか?自分で

罠だって言ってたじゃんか!」


レイン「いや、入らないよ…ただもう

あの扉さえ無ければ解印は簡単に出来るから」


そう言ってレインは玄関前に着いた…

そこには想像もしてない光景があった


なんとそこにはこの村の村長だと思われる人が謎の黒い水晶を持ち魔法印奥に立っていたしかも驚く事にその黒い水晶にはルルハから聞いた黒ローブの仮面をした人が映っている


瞬間、レインは理解した黒ローブの狡猾で

悪質な思惑を…


レイン「ルルハ!来ちゃダメだ!!」


ルルハ「え?なんかあったのか…………」


ルルハは目にしてしまった、妹をさらった

人物の姿を…


それを見て黙っていられるルルハでは無い…


ルルハ「おまえぇ!マイユを何処に連れて行きやがった!!!教えろ!!」


レインは必死に水晶の元に向かおうとする

ルルハを止めようとする


レイン「ルルハァ!!それは罠だって!!」


しかし力の差は歴然…

レインはルルハに押しのけられると玄関前に

転がった


ルルハはそのまま水晶へ向かって行った


レイン「ルルハ!それ以上入ったら!!」


ルルハ「どこにいるか教え……」


ドクッドクッドクッ


レインが最も恐れていた事態が起きた


レイン「最…悪……」


レインは急いで体制を整えると体に魔力壁を

纏い加速魔法を付与した


ドクッドクッドクッ


洗脳ルルハ「レイン…」


洗脳されたルルハがレインをギロッと

睨みつけた


村を救うため村長達の洗脳を解きに向かった

レイン達だったが、思わぬ狡猾な罠にレイン

の思う中、最も悪い事態であるルルハが洗脳

されて敵に取り込まれるという展開に陥って

しまう。さてレインはどう切り抜けるのか…

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