大海に沸く大博打

シュコーー ブクブクブク. °. °


機械音声「ピー、お風呂が湧きました」


ルルハ「お!沸いた沸いた、じゃあ私お先にお風呂入ってくるよ」


レイン「おう、ゆっくりしてきてね〜…」


世界を救う覚悟を決め旅立ったレイン達は、思いっきり寛いでいた!


レイン「ねーー、本当にこうして寛いでるだけで目的地に着くのぉ?」


テスタ「はい、本艦には自動操縦機能が備わっていますのでインプットしたユグルノ国に向かって最短距離で向かっています」


レイン「この船、パッと見ただの筏だし他の船から見たら外見はかなり小さいけど、大きい魚とか大きな船にぶつかってこわれたりしないよね?」


テスタ「その辺はご心配なく、本艦はステルス機能も搭載されてますので……」


ギギギ ガガガガガ……


テスタ「大丈夫なはず、なのですが………」


レイン「ホントかな?」


ウィーーン ウィーーン


レイン「うわぁ!?なに、なんの音!?」


機械音声「緊急事態発生!本艦前方に約半径二キロメートル程に渡る大渦が突如発生逃れる事は不可能と推測、本艦を保護シェルターモードに移行します…」


テスタ「大きな揺れが来ます!!マスターは早く何かに捕まってください!」


レインは急いで部屋の壁に付いていた持ち手に捕まりキュッと身をかがめて衝撃に備えた


レイン「もぉ!なんで僕はいつもこんな事に巻き込まれるんだよぉ!うおぉぉぉぉ!!」


テスタ「マ…ター!マスター!起きて下さいマスター!」


レイン「テス…タ、どうし…たの?テス……八ッ!そうだ!僕達渦に巻き込まれて………ルルハ!ルルハは無事……」


ルルハ「はぁ〜♪さっぱりした〜〜、ここのお風呂なかなかだよぉ…レインなんだその顔どうかしたのか?」


レイン「ルルハあの揺れで何にも気が付かなかったの!?」


ルルハ「揺れ?ああ、そういえば揺れてた気がするような、そうでも無いような…………私お風呂で踊ってたから気が付かなかったのかも」


レイン「踊ってたんだ………って、それでも気付くよ!」


テスタ「何処までも頑強なお方ですね……」


ルルハ「そういえばお風呂空いたぞ〜レインも入ってきたらどうだ?」


レイン「そんな事してる場合じゃない、」


ルルハ「レインちょっと臭うぞ…」


レイン「お風呂入ってきまスーー……」


それから40分後、


レイン「さっぱりした〜♪ルルハの言う通りここの風呂最高に気持ちいいよ〜…あれ?」


レインはメインルームの異変に気が付く


レイン「テスタ、ルルハはどこ行ったの?」


テスタ「外がどうなっているか、モニターで見たいと言われましたのでモニターをつけて差し上げたところ、それを見た瞬間、外見てくると言って本艦の外へ出て行かれました」


レイン「えぇ!?ルルハ、また勝手に…」


レインはすぐさまルルハの後を追いかけて、外に向かった。


キィーーコ(筏の蓋を開ける音)


レイン「ルルハー…あ、そこに居たんだ、何見て…ん……!」


なんとレイン達の目の前には押し潰される程の人々で賑わう黄金で出来た街が広がっていた


レイン「なんだ…これ」


ルルハ「レイン、それにここ変だよ、地面に何かの影が蠢いてる!」


レイン「影…!」


レインはすぐさま上を見上げた


レイン「やっぱりだ……これは水に魔光陽が反射して出来た影、つまり僕達が居るのは…海の底!」


ルルハ「えぇ!!私いつの間にか水を克服してたってこと!?」


レイン「いや…良く見てみてルルハ、この街特殊なシャボン玉の結界で覆われてる」


ルルハ「あぁ、だから息が出来るのかぁ…てっきり水中呼吸会得したのかと思った」


レイン「た はは…」


謎の人影「お、こんな所にも人が居やしたぜ旦那!」


小太りの男「あ、誰もが羨む狡猾さ…………二つ、一目惚れ必須のこの美貌………………三つ、職場に出れば活躍三昧!……………あ、人読んで、完璧超人とは俺の事よ!」


お付き黒服「よ!ダービー様、世界一!」


レイン(な、なんかヤバそうな人きたーーー)


ルルハ(カッコイイ✨)


レイン(ルルハ …ウソだろ!?)


ダービー「で、君たち…こんな所で何してるの?」


レイン「なにと言われましても…謎の大渦に巻き込まれたと思ったらいつの間にかここに居たというか…」


ダービー「なんだ、君たちもか…」


レイン「え、君たちも?」


するとダービーがレインの耳元に駆け寄ってきた


フヌーーーッ

フヌーーーッ

ダービー「ここだけの話、一見あの楽園に見える場所激ヤバにブラック、賭けを持ちかけられ負けたら最後、ここに永遠に囚われる事になる」


レイン(んーー、やべぇーー鼻息が気になって全然話し入ってこないんだけど…………え?なんか、永遠に囚われるとか、聞こえた気がするどういう事〜!?)


ルルハ「賭けってのが何かは分からないけど囚われてる奴が居るなら、捕らえたヤツらを私がぶっ飛ばして皆を解放してやるよ!」


レイン(賭ける……)


ダービー「それは無理だよ、ほらあれを見てくれ……」


ダービーが指を指した先にはあのべーペックより一回りもでかい男がこき使われていた。


ルルハ「なんだ?私があいつより強ければいい話だろ?」


ダービー「あれはただの怪力男じゃない戦闘や超人的な身体能力をもっていて有名なクルムタ族だ」


レイン「あのクルムタ族か!最近は少数民族になっているらしいけど…」


ダービー「君は、これの意味を理解したようだね……」


レイン「この街を見る所、服装や管理者と思われる人物は皆魚人族が仕切っているようみたい……でも不自然だよ…本来クルムタ族に魚人族が立ち向かっても暴れられたら魚人族が300人居たとしてもかなう相手じゃない…成してあの大きさのクルムタ族なら尚更ね」


ルルハ「私が信じれないって言うのかよっ」


レイン「そんなシンプルな話じゃない………もしかしてこれは……………ダービーさん、これは何かの魔法の一種ですか…?例えば、契約魔法や呪いのそれに近い類の…」


ダービー「兄ちゃん、何者だアンタ!?この少ない情報でそこまで分かる人がいるとは」


賭け、囚われる、永遠、というその言葉を元に推測したレインの予想は的中した


レイン「やっぱりそうでしたか、だとしたらダービーさん、この街を覆うシャボン玉四方の角を確認したいのですが…」


ダービー「ん?そんな事してどうする気だ、兄ちゃん…」


レイン「僕は先ず警備員の配置を調べるのが先決かと考えます……理由はこの契約魔法のタイプが、何なのかを調べる為です」


ダービー「警備員の配置と契約魔法のタイプに、何の関係があるんだ?」


レイン「いいですか、契約魔法にはタイプが三つ存在します…まずは一つ目、核一点タイプ……………特徴としては、魔法印を一つしか書く必要が無いため割と誰でも簡単に、契約領域を作り出す事が出来ます…しかし、欠点としてその魔法印を一つかき乱されるだけで崩れてしまいます、この場合なら警備を核中心に配置するはずです………ですが、この契約魔法は作れる領域も然程広くありませんよってこの街の大きさからしてタイプ一は無いで………」


ルルハ「ちょちょちょちょちょストーープッ!」


レイン「なに?どうしたのルルハ」


ルルハ「説明がなっがーーーいよ!ダービーさんあまりの情報量にのびてんじゃん!」


いつの間にか、自称狡猾なダービーは泡を吹いて床に伸びていた


レイン「あれ、いつの間に」


ルルハ「レインのそのオタクっぽいところ嫌いでは無いけどもっと周り見えるようにしろよな…」


レイン(うっんぅー、ルルハに言われたくない言葉ナンバーワン!!)


レイン「それはさておき…」


ルルハ「なにを、さておいたんだ?」


レイン「一番されたら厄介なのは………タイプ三の契約魔法、血約タイプ………これをされてたら結界魔法をうちから細工して解くのは不可能……………もし、解きたいなら血約を結んだ術者を物理的に倒すか、術者本人を契約に基づいた勝負に誘い、その勝負に勝つしかない…」


ルルハ「じゃあ、その術者ってのを見付けてボコボコにしたらいいんだな!」


レイン「それをさせてくれたら良いんだけどね」


ルルハ「どういう事だ?」


レイン「血約魔法を相手にするともっとも面倒と言われる所以は、血約術者はデメリットとして契約地点に縛られ動けなくなる代わりに自らに危害や敵意を向けた相手の身体能力を二十分の一にまで低下させ、更に絶対服従の呪いがかかる印が施されている……………とまぁ、力づくでは倒せない訳だ…」


ルルハ「くぬぬ、じゃあレイン…私達ずっとここで生きなくちゃいけないのか……?」


レイン「まだ希望が残されて無い訳じゃないよ、もし契約タイプ二の四方陣タイプだった場合は、領域内で魔力は使えないし敵意を出した際の身体能力は解放の印を貰ったもの以外、血約魔法程では無いが10分の1まで弱体化される。だけどそんな四方陣契約魔法は内からを崩せる方法が存在する………まぁ、僕の魔法オタク知識あっての作戦だけど……」


レインはこっそりルルハにその作戦を伝えた


ルルハ「えぇ!?私、泳げない…ゴニョ!」


レインは周りを警戒してすぐルルハの口を抑えた


レイン「声デカいって…」


ルルハはグッジョブのジェスチャーで応えた


それから4時間後・・・

 

作戦実行前………


ルルハ「本当にやるのか?」


レイン「ダービーさんも街の皆に無事例の事伝えられたみたいだし…大丈夫だって、準備は完全に整ったから」


そう言いながらレイン達は、着込んだ海中装備の上に普段着てるローブと服を重ね着した


レイン「よしっ、起死回生を賭けた大博打の時間だ、気を引き締めて行こう!」


ルルハは少し落ち着きが無いながらもレインの後をついて行った


レイン達は街に囚われた人々の間を通ると、黄金で出来た博打の塔とやらに入っていた


そこにはボスの側近であろう柄の悪い魚人族だちが睨みをきかせていた


ボスの側近「ああ…お前らか、この国民達全員の労働と永住権さらに絶対服従までを賭て勝負するマヌケって奴わ…」


ルルハの拳が震えている

それに気が付いたレインはルルハの拳をギュッと握った。するとルルハに思いが伝わったのか、ルルハはグッと感情を抑えるとレインに目で合図を送った


レイン(ミッション…)

ルルハ(スタート…!)


レイン「賭けはまだなの?」

 

ボスの側近「まだか、だ…?そんなにボスに人生捧げたいのか、こりゃいい犬になりそうだ……ワッハッハハッハ」


レイン(ヤバイ!ルルハ大丈夫か!?)


しかしさっきの拳の震え以降ルルハは冷静を保てていた


ルルハ「ここは約束が大事な街、なんだろ?私達含めて国民全員の生涯を賭ける代わりにボスと賭けをさせてもらうって約束守ってくれねぇと…」


ボスの側近「なんだテメェ……ふざけた口の聞き方するな?今ここで……」


機械越しの声「まぁまぁ、そう焦るな…」


ボスの側近「ボス!大変失礼致しやした!」


魚人族のボス「その子達を私の元に招待して差し上げなさい……」


ボスの側近「ははっ!ボス!」


そうしてレイン達は長い廊下を渡りボスの部屋に辿り着いた


魚人族のボス「ようこそ、私の街へ……」


ボスと呼ばれる目元に傷がある魚人族のおじさんは一見とても優しそうに見えた


魚人族のボス「君たちは私と賭けをすると言ったね、しかし持ち掛けて来たのは君達だ常識から言って賭けの内容は私が決めるのが当然かと…」


レイン(このおじさん話の持っていき方が上手い…早くもトランプで時間を稼ぐ作戦が潰された………仕方ない、ここは長勝負になる賭けが来る事を…祈ろう……)


魚人族のボス「じゃあ…ジャンケンなんてのは、どうかな?」


レイン(ジャンケン!?よりによってそんなに短い勝負を賭けに出してくるとは……しかもおかしな点がある……ジャンケンとはイカサマ無用の真剣勝負万一にも負けた場合はどうするのだろう……)


ルルハ「どうすんだよっ……」


魚人族のボス「どうするんだい、やらないのかい?」

 

レイン「い、いやぁー…なんか最近突き指したばかりで指動かすのが痛いと言うか〜」 


魚人族のボス「じゃあ、私の不戦勝って事でいいのかな?」


レイン「いやだなぁ〜、なんか指が突然踊るように騒ぎ出しましてぇ〜この勝負、私に任せろって親指なんか張り切っちゃってぇ〜」


すると辺りの警備員が少しざわついた


レイン(まずい、流石にこれは怪し過ぎたか)


タッタッタッタッタ

警備員の魚人が走ってやってきた 


魚人族のボス「なんの騒ぎだね…」

  

警備の魚人「いえ、先程、裏口方面から大きな鯨がこちらに向かっているとの報告を受け確認した所この街を避け迂回した模様です」


魚人族のボス「はぁ、そんな事を騒ぎにしないでもらいたい」


警備員の魚人「申し訳御座いません!」


魚人族のボス「もういい…早く行ってくれ」


それを聞いた警備員はすぐさま去っていった


レイン(とりあえず、危機は脱した……例の魔法印決行の時間もそろそろ…)


突如街中に警告サイレンの様な音が鳴り響いた


ウゥーーーーッ


魚人族のボス「今度は何事だぁ!!」


ボスの側近「ボス!大変です!街中の人々が人っ子一人消え去りました!!」


レイン(少しの所で見つかってしまった!!ここからどうすれば……)


するとサイレンに続き、次は辺りにズシンとしたダムが決壊したような音が響き渡った


レイン(来た!!合図だ!)


レイン「ルルハァ!頼む!」


ルルハ「よし来たっ!」


そう言うと、ルルハは鋭い蹴りと岩をも砕くパンチで一瞬にしてボス諸共殲滅してみせた


魚人族のボス「な、なぜ…解放の印は持っていないはず…」


ルルハ「それはだな!」


レイン「おっと!それ言ってる余裕無いよ!ルルハさんっ!」


ルルハ「あっ!そうだ!!」


そうしてレインは急いで、服の下に着込んでいた水中装備を装着した


レインが隣りを見るとそこには、まだ装備を装着出来ていないルルハの姿があった


ルルハ「レインッ!!これチャックが引っかかってて付けられない!!」


レイン「ルルハァァ!!!」


瞬間、レイン達は物凄い水の流れに押し出される


レイン「ルル、ルルハァァ!!」


大量の水に押し流されたレイン達、

気が付くと、息が出来ずに弱々しいながらもルルハはレインに必死にしがみついていた


街を覆っていたシャボン玉は決壊し、街は完全に沈みきっていた


そして自分達の筏は、レイン達から見てずっと上に浮かび上がっていた

 

レイン(どうする!ルルハは今すぐにでも衰弱していきそうだし……)


その時、ルルハのレインを弱々しく抱き締めていた腕がそっと離れた


レインはすぐさまそれに気付きルルハを抱き抱えると、ルルハの命を救える最後の手段を実行する賭けに出た


レイン(印を使わない無詠唱魔法応えてくれ海の自然魔法エネルギー!!!)


瞬間!レインは、異常なまでに速い水流を作り出すとルルハを大切に抱えて海中から海上へと飛び出した


ダービー「やった…!!やりやがった!!!兄ちゃんが賭けに勝ったんだぁ!!」


喜びに震えてるダービーが乗っている筏にレインは必死の思いでルルハを乗せた


レイン「どいて!!」


レインは少し乱暴にダービーを押しのけると衰弱しているルルハを艦内に運んだ


ダービーに知らせを受け、艦内に避難していた人々は一瞬レインが、戻ってきた途端沸き上がったがその手に抱えた衰弱した少女を目にしてすぐに場は凍りついた


レインは泣きながら必死に助けを求めた


レイン「おねがいしますっ!!誰か、ルルハを助けてください!今倒れてるのは貴方達の命の恩人です!!お願いです!!……」


すると一人の女性が人々を掻き分けて走ってきた


看護師「私、看護師です!」


レイン「!…お願いしますっ、ルルハは僕の大切な仲間なんです!」


看護師「これは海水を大量にのんだ事で溺水してるようです今から心肺蘇生を行います」


看護師は額に汗をかきながら力いっぱいルルハに心肺蘇生を施した


看護師「まだ息が吹き返さない!飲んだ水の量が多過ぎるんだわ…電気蘇生使います!」


そう言うとその看護師はルルハの胸に手を置いた


看護師「サンダー!」


看護師がそう唱えると、ルルハの体が一瞬飛び上がった


その時、


ルルハ「ゴホッゴホッ、オェーー」


その瞬間、パンパンに中身の詰まった瓶の蓋が吹き飛んだかのように辺りが大きな歓声で包まれた


救われた人々「わぁーー!!この子達本当にやりやがったぞぉ!!みんな無事だーー!」


ルルハ「なあ、どうしたんだこ……」


気が付くとレインは、号泣しながらルルハを抱き締めていた


ルルハ「うおっ、離れろよ!恥ずかしいだろ!」


レイン「本当に、よがっ…た…」


離そうとするルルハをレインはもっと強く抱き締めた 

 

ルルハ「もうー…………でも心配してくれてありがとな、助けてくれたんだろ……」


そう言うとルルハはそっとレインを抱き締め返した


それに鳴り止まぬ歓声はより大きさを増した

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