閃きのカラクリ魔法印


グクテト村…宿屋テトラ、その向かいの居酒屋で…


ルルハ「わぁぁ、おじさんこれ食べていいのか?」


酒屋のおじさん「ああ!どんどん食べてくれ、お前さん達には大きな恩が出来たからな!」


この時、レイン達は村の居酒屋で店長のおじさんに朝食をご馳走してもらっていた。


レイン「なんかすみません、ご馳走頂かせてもらいます、」


ガブッ バクバク、


ルルハは遠慮など一切せずにご馳走に食らいついていた、主に肉に!


ルルハ「うまいぞっ!」


薬味の入ったウインナーにかぶりつく、


バリッポリッ


ルルハ「なんだこの肉!レイン!この肉無限に食べられそうだ!」


レインは美味しさに興奮してるルルハを見て苦笑いした、


レイン「急がなくてもいいからしっかり噛んで食べて、あと野菜もね!」


ルルハは食べるのに夢中で聞こえてない風に食べ続けていた。


パクバクバクガブッ


ルルハ「うッ!!!ゴホッゴホッ、のどに詰まった、水くれぇ!」


レイン「言わんこっちゃ無いよ……」


レインはルルハにお冷を渡した


レイン「はい、これ飲んで」


ルルハはレインから急いでお冷を受け取ると、勢いよく飲み干した。


ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ


ルルハ「ぷはーーっ、生き返ったぁーー!」


レインはルルハの様子に微笑んだ。


ルルハ「ん?なに笑ってんだ?」


レイン「いや、僕の師匠に似てるなって」


レインはルルハの行動と師匠と過ごした日常を重ねていた。


ルルハ「へ~、その師匠って人も食べるの好きなんだな!」


レイン「ルルハの妹助けて修行の旅が終わったら会わせてあげるよ」


そしてかなりがっつりした朝食を終えたレイン達は酒屋のおじさんに礼を言うとべーペックからの目撃証言のあったコトモロ街に行く為の準備を始めた。


レイン達は今ある予算で買える旅の道具を揃えるため村のガラクタ屋に訪れた。


レイン「街に行くのに必要なのは……ん?これなんだろ、筏…か?でもおもちゃだよな小さ過ぎるし……」


ガラクタ屋の店主「ああ、それかい?それはだいぶ昔にいた大魔法師が愛用してたらしい魔道具じゃよ」


ルルハ「じゃあこれ魔力込めると何か起きるのか?」


ガラクタ屋の店主「それが、分からないんだよ……その魔道具を手に取った魔法使いのお客さんは何人もいたんだが魔力に反応しないらしく使い道も分からない代物なんじゃよ」


レイン「これ、買わせてもらいます!」


ルルハ「レイン!マジで言ってんの?!」


ガラクタ屋の店主「君はこの魔道具の使い道知ってるのかい?」


レインは頭の中である推測を立てていた。


レイン(もし、僕の予想が正しければ………)


レイン「はい、あくまで推測ですが……それでこの魔道具は値段はいくらですか?」


ガラクタ屋の店主「値段ね……大魔法師がこの魔道具をこの店に持ち込んだ日、これを買う相手への最低条件を提示してきたらしいんじゃ……」


レイン「最低条件ですか、」


ガラクタ屋の店主「最低、2000万ガル以上出せる奴にしか売るな…とな」


ルルハ「に、にせんまんっ!?レイン!それってステーキ何個分だよ!?」


レイン「む、無理ですよ、そんな大金!2000万ガルって小さな島国なら買えちゃう額ですよ!?」


ガラクタ屋の店主「まぁまぁ、焦りなさんな、まだ条件には続きがある…その大魔法師はその条件に1つ例外を残していった……その例外とは力を持ちながら自分の利を帰り見づ他人の為に傷付く覚悟を持っている奴、その者には無償で渡してあげてくれ………つまりお主達じゃ」


レイン「そんな大層な人間じゃないですよ」


ガラクタ屋の店主「何を言っておる、皆お主達に救われた、この魔道具はお主達に相応しい…受け取ってくれ」


レインは店主から魔道具を受け取った。


レイン「大切に使わせていただきます!」


ガラクタ屋の店主「魔道具もまた晴れ舞台に立てると喜んどるわ、ハッハッハッ」


ガラクタ屋の店主(これで大魔法師コータス様からの御恩をようやく返せます…あの青年ならきっと、貴方の夢を叶えてみせるはずじゃ…)


レイン達はその他に今あるお金で買える店に置いてあったお古の水中装備を買うとその店を後にした。


ルルハ「なぁレイン、水中装備なんか買ってどうするんだ?」


レイン「なんたって今から向かうコトモロ街は水精霊の崇拝を元とした水の大都市モロトトにあるみたいだからね、噂によると家や店なんかが水中にも造られてるらしい。別名 水霊の都と呼ばれているくらいだ、って、あれ?」


気が付くとルルハが隣で震えていた。


ルルハ「私、水無理なんだよ………」


ブルブルブル


レイン「そういや、ルルハはネコ科寄りの獣人族だったね…」


レイン(トホホ………ふぅ、ルルハも辛いと思うけどここは頑張ってもらわないと)


震えているルルハを奮い立たせる為にレインは言った。


レイン「妹…助けるんだろ」


それを聞くとルルハの震えが止まった。


ルルハ「うん、そうだよ…私が、私が絶対に助けるんだ!」


レイン「おう、その意気だ!」


ルルハ「よし、じゃあ早速出発だ!」


レイン「おっと、それはちょっと待って欲しい…この村で最後にやっておきたいことがあるから」


ルルハ「って、ちょっとどこ行くんだよレイーン」


レインは村が全体的に見渡せる丘の中間辺りに向かうと荷物から手作りの本と魔法マーカーを取り出した。


ルルハ「その本って、レインが宿屋で遅くまで何か描いてたやつ」


レインは得意気な顔をして言った。


レイン「ヘッヘーン!ルルハ何か忘れてない?僕はルルハの妹を助ける為だけに旅をしてるんじゃない。そう!僕本来の旅の目的は修行なんだよ!」


ルルハ「本に何か描くのが修行なのか?」


レイン「まぁ、コレ見てみてよ…」


レインは不思議そうな顔をしているルルハに自作の本の1部を見せた。


ルルハ「これは…何かの印か?」


レイン「正解、印だよ、でもただの印じゃないこれは僕が自分で開発した魔法印なんだ」


ルルハ「自分で魔法を作ったのか!?」


レイン「まぁ、まだ試作段階なんだけどね……ハハハ…」


レインは魔法マーカーを手に取ると空に開発した魔法印を描き始めた。


レインが描き始めて1時間が経過した。


ルルハ「レイーン、まだ~」


レインはやっと魔法印を描き終えた。


レイン「ふぅ……やっと1つ目、完成した」


ルルハ「げっ、今1つ目って言った!?まさか………」


レイン「この魔法印は稼動するのに最低4種類必要なんだよね、へへへ…」


ルルハはそれを聞くと村の方に走って向かって行った。


ルルハ「レイーン、私 酒屋行ってご飯食べてるから終わったら言って~」


レイン「まぁ…流石にそうなるか、」


それから4時間が経った頃、


モグ モグ モグ


ルルハ「おかわりー!」


居酒屋の店主「ルルハちゃんまだ食べるの?ん?なんだ?外が明るいぞ!?」


驚いた村のみんな揃って空を見た。


村人達「あれは、魔光陽っ!!」


居酒屋の店主「でもなんで、この村に魔光陽が!あまづくりを雇えるお金なんてまだ無いはず!」


ルルハは居酒屋から出てくると言った。


ルルハ「完成したんだろ、レインの魔法が」


居酒屋の店主「レイン…ってまさか、ルルハちゃんの連れの人か!」


その頃、魔法印を完成させ自分の開発した魔法が成功した達成感に浸っていたレインはこの魔法の名前を考えていた。


レイン(スカイ、なんかそのまんまだな………天候は日々であり共にあるもの、デイ、デイズ!これだ!)


そんな事を考えていると、


ルルハ「レイーン、おーつーかーれー!」


レイン「お!ルルハーァァ?!」


ドタドタドタドタッ


なんとルルハの後ろから喜びに満ちた村人達が大勢走ってきている。


レイン「ど、どうしたんですか皆さん!?」


村のおばさん「どうしたじゃないよぉ!アンタ何回この村に恩を売る気だい?悪いけどあんたに払えるお金この村には残ってないよ」


レイン「いえ、これも修行の一環なのでお気になさらず」


ポツッ ポツッ ポツッ


村人達「これは…雨だ!!!どうなってるんだ!?」


レイン「これは僕が開発したカラクリ式の自立稼動型天気魔法です」


村人達「自立稼動型魔法だって!?そんな事可能なのか!?」


レイン「僕達はこれから旅に出るので、修行と最後の御礼を兼ねて印を描かせて頂きました」


村の農家「旅に出るのか、じゃあこれも今だけだな……」


レイン「そこは心配なさらず!この魔法印は魔法発動者が離れても関係なく稼動し続けます、」


村人達「一体どんな仕組みなんだ」


レイン「ちょっとした細工を施しただけですよ」


レイン(本当は無詠唱魔法師特有の大地の魔力を代わりに印を通して僕の経由無しで発動し続けるようにしただけなんだけどね……)


ガラクタ屋の店主「やっぱりか、お主…今使える魔法の数や質は劣るが、魔法の発想とセンスだけは超級魔法師を既に上回っとるかもしれん」


レイン「えぇ!?あの世界のあまづくり統一組織アラルテラ直々に選ばれた7人しか名乗る事を許されない超級魔法師をですか!?」


ルルハ「フ ハッハッハ、爺さん、それは無いよぉ!アッハッハッハ」


ガラクタ屋の店主「いや、そうも言っとられんかもしれんぞ…」


レイン「嬉しいお言葉です」


ルルハ「さて、村に明るい未来が約束された所で私達は出発する事にするよ」


レイン「おお、そうだね…そろそろ行こう」


そうしてレイン達は村の西門から出発した、無論、村人達に盛大に見送られながら


レイン「よしっ、次の目的地向かって出発だ!」


べーペックが黒ローブの男を目撃した場所、コトモロ街はここから南西約620km先の島国、ユルグノ国のユルグマ地方に位置しておりその島にあるユルグミア湖を中心に栄えた大都市モロトトにあるという


ルルハ「レイーン、620kmって遠いのか?」


レイン「ああ、かなり遠いよ…」


ルルハ「げーっ、何日ぐらいで着くの?」


レイン「ん?ルルハ、港までは歩きだけどそこからは船にのるんだよ」


ルルハ「船!?そんなの落ちたら死んじゃうよ!」


レイン「安心していいよ、その船大型で部屋もあるから」


ルルハ「部屋ぁ!凄いなその船ってやつ!」


ルルハ(ワクワク )


ルルハが嬉しそうにしっぽを振っている。


レイン(ルルハは忙しいやつだな、)


レイン「フッ」


ルルハ「何笑ってんだ?」


レイン「なんでもぉ」


そんなたわいも無い会話をしながら歩いていると、あっという間に港に着いた。


キョロキョロ


ルルハ「何探してるんだ?」


レイン「いや、港はここのはずなんだけど」


レイン(辺りを見渡しても船らしきものは1隻も見付からない……どういう事だろう?)


レイン「船無くないか……」


ルルハ「もう海に出てるんじゃないか?」


その時、船の管理所に人影を見付けた。


レイン「あ、あれ船の管理人かもしれない…ちょっと話を聞いてみよう」


レイン達は管理所に向かうと扉をノックした


レイン「すみませーん」


管理人「はーい、どうなさいましたか?」


レイン「あの僕達船に乗りたいんですけど…」


管理人「あー、お兄さんついてないねー……今まさに出航したばかりだよ…」


ルルハ「えーー!じゃあ次に船が来るのっていつなんだ?」


管理人は言いずらそうに口をひらいた。


管理人「それがね…最近海で船が謎の神隠しにあうという事例が発生していてね、ウチの船も被害に遭っちまって乗客諸共船は消えていった。残ってるのはさっき出航したばかりのその1隻だけさ……で、無事に戻って来たとしても8日後になるかな…」


レイン達「は、8日ぃぃぃぃ!?」


ルルハ「そんなに待ってられないよ、こっちは急を要するんだ!」


管理人「そんな事、言われてもねぇ」


結局レイン達は船に乗る事が出来ず、他に海に渡る方法を考えていた。


レイン(僕の予想が正しければあのガラクタ屋で貰った小さい筏の魔道具が役に立ちそうだ……)


レイン「ルルハ、もしかしたら船が手に入るかもしれない……いや、正確にはもう持っているかも、まぁあくまで推測なんだけど…」


ルルハ「なんの事言ってんだ?」


レインは荷物から筏のおもちゃの様な魔道具を取り出した。


ルルハ「それってガラクタ屋の人に貰ったやつじゃん」


レインは考えていた。


かつて大魔法師と言われていた元の持ち主は自分と同じ無詠唱魔法師だったのではないかと


ガラクタ屋の店主は店に来た魔法使いが魔力を込めて使おうとしたが反応しなかったとも言っていた


ならば自然から受けとったの魔力ではどうか


レイン「はぁぁぁぁぁぁ!!」


レインは全神経を集中させて魔道具に大地の魔力を注いだ


レイン達は果たして無事に大都市モロトトに辿り着けるのか、次回に続く!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る