第2話
「おいおい、冗談も休み休み言えよ。」
「冗談だったらどれだけよかったか!貴方もさっきの爆発を聞いたでしょ!?」
マリオンのあまりの剣幕に、流石のジョセフも
「……悪かったよ。」
「あぁ、えっと、ジョセフ。なんて言ったらいいか、私も悪かったわ。こんな事になって、きっと気が動転してるのね。」
彼女は自分の胸に手を当て、自らの行いを反省しているようだった。
「それで?なんで核が落ちるってわかったの?」
「アラートがなったんじゃないのか?」
ジョセフのその言葉を、肯定も否定もせずにマリオンは口を開いた。
「私が外に出ようと扉を開けたら、隙間から見えた空に、落ちてくる何かが見えたのよ。明らかに、飛行機やヘリじゃなかったから、扉を閉めなおして、中に戻ったってワケ。ただ……。」
そこで、マリオンは言葉を詰まらせる。
「ただ……なんだい?」
ダニエルの言葉に、マリオンは覚悟を決めたように口を開いた。
「ジョセフ。さっきアラートっていったわよね?」
「あぁ。それがどうしたんだ?」
「……っ!まさか!」
私とジョセフが理解できていない中、ダニエルだけがマリオンの言わんとしていることを理解する。その手はブルブルと震えていた。
「……この中で、ウルフのアラートを受け取った人はいる?」
『
「いや、私には、なにも……。」
私も、徐々に事態の深刻さを理解していく。
「俺もだ。……いやまて、どうして誰にもアラートがなっていないんだ!?」
「それなのよ。やっぱり、私の勘違いで、あれは何かの事故で―。」
「いや、それはなさそうだよ。」
ダニエルがマリオンの言葉を遮る。
「これを見て。」
何かを突き止めたらしいダニエルはウルフを共有状態にして、ネットの情報を空中に映し出す。
画面を反転させ、私たちにも読みやすいようにしてくれた。
そこには、政府の緊急発表のニュースが映し出されている。
「『核が我が国に打ち込まれたことは誠に遺憾であり、アラートのシステムを乗っ取り国民の命を大量に奪うやり方は外道極まりない。我々は全力で報復する事をここに誓う。』……ハハッ、どうやら来世はなにに生まれ変わるか、考えておいた方がよさそうだね。」
ダニエルは、嘲笑混じりにそんな冗談を飛ばした。
「システム乗っ取り……国のシステムをハッキング出来るやつなんているのかよ。」
「散々専門家から脆弱性については指摘されていたからね。セキュリティ周りまでAIに任せてブラックボックスに……つまり、誰もメンテナンス出来ない状態にしちゃったら、そりゃ標的にもなるさ。」
ダニエルはかけていた眼鏡のブリッジを持ち上げながら、共有を解除した。
「ちょっとまってよ……!ママやパパはどうなったわけ!?」
「……。」
嫌な沈黙が流れる。
私だって、わかっている。
でも、それを誰かに否定してほしかった。
欲しかったのは『大丈夫』その一言だけだった。
……でも、今それは、ダイヤのネックレスやブランド物のバッグなんかよりも手が届かないもので。
無責任な言葉を吐き出すほど、愚かな人間は、ここにはいなかった。
「……今は自分たちが生きることの方が先決だ。不幸中の幸いだが、整理する前の物は表に出す前だったから、期限の怪しいものから処理していけば、4人でもそれなりの期間をしのぐことは出来る。」
ダニエルが在庫のリストに目を通しながら、そう告げる。
私は、まだ現実を受け入れることが出来ずにその場に
その背を、マリオンがさすってくれる。
「ベッドにいきましょう。少し気持ちを落ち着けるためにも、一度寝たほうがいいわ。」
マリオンに手を引かれ、私はベッドルームへと移動した。
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