3話 心真地ちゃん


  「心真地ちゃーん」


 アパートの一室のインタホーンを押しながら、友人の名前を呼ぶ。


 扉が開く。

 

 「やぁ、来たね」


 心真地ちゃんが迎え入れてくれる。


 「入らせてもらうよ」


 「おやおや、せっかちだねぇ」


 「乙女少女相手に、そんなに急いで事を進めるものじゃないよ」

 「ガールフレンドの紬君にも嫌われてしまうぞ」


 「嫌われるなんてものじゃないよ」

 「約束も守らず、逃げ出してきたんだから」

 「もう会う事もかもしれない」


 とにかく、急いで心真地ちゃんの家に入る。


 「そうかい」

 

 「まずは、おめでとう」

 「水守卿が上林月恵を殺したんだってね」


 「うん」

 「おかげで、死なずにすんだよ」

 

 「それは良かった」

 「僕も、虎松君がそろそろ無謀な死の特攻に向かっていく頃かと心配してたからね」

 

 「今日、2024年11月27日の19時までに」

 「私の家を訪ねてくれるんじゃないかとも思ってたんだよ」

 「当たったね」


 うん、当たった。

 もし、水守卿が上林月恵を殺していなくても。

 僕は、2024年11月27日の19時までに、心真地ちゃんの家を訪れていたかもしれない。

 これは、僕の運命なのかもしれない。

 僕はずっと、これを繰り返してるのかもしれない。

 これからも、ずっとこの選択を2024年11月27日に選択するのかもしれない。

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