110話   「貴女の生き方次第で、貴女に多種多様なボーナスが発生するだろう」


  けれど、あれは正当防衛だったわ。

 あの時は、ああしなければ私が殺されるか、捉えられ拷問されていたかもしれないもの。

 しょうがない。

 仕方がないじゃないの。

 私は何もあるくありません。


  「1人、殺したわね」

 「正当防衛だったとはいえ」

 「1人殺したのは事実ね」

 「否定できないわ」


 けれど、1人殺したのは否定のしようがない事実。 

 

 「この世界で」

 「貴女はどう生きるか」

 

 この紳士、返事してくれませんね。

 こちらの言葉も聴こえてるのかどうか。


 「どう生きるかと言われてもね」


 そんなの、まだ決まっていませんよ。


 「貴女の生き方次第で」

 「貴女に多種多様なボーナスが発生するだろう」


 ボーナスですか。

 


 「ボーナスね」

 「プレイヤーからの好感度システムなんて」

 「私だけの特別チート仕様なのかしら」


 「全て、貴女次第だ」

 

 「私の言葉に答えてよ」

 

 「さぁ、再開してくれ」

 「私はここで、貴女を見ている」


 「あの、私、紳士に見ていられたくないんだけど」

 「紳士なら、目を逸らす所は目を逸らしておいてね」

 「音も聴かないで下さいね」

 「聞いてる?」

 「聴こえてますかー?」

 「私はここにいます」


 また、意識が薄れる。

 待ってください。

 そこは、ちゃんと返事をしてもらってからじゃないと困ります。


 「でかすぎてよ」

 「人の身に重すぎるんじゃねぇか」


 「ぷるぷる」

 「ぐんぐんみるこおいしいの」


 「ひぃ」

 「実椿ちゃんの小さい身に、どんどん吸い込まれてるわ」


 意識が戻り、環希ちゃん達の元に戻ってきました。

 

 一方通行なら、あんな演出必要ありませんよね。

 返事してくれないなら、こちらの言葉を聴く気がないのなら。

 次からは、この状況から勝手に直接話しかけてきてください。


 「でかすぎて」

 「特別すぎて」

 「人の身に重すぎるなら」

 「殺してやった方がてめぇのためにも」

 「誰のためにも」

 「その方がいいんじゃねぇか」


 これ、環希ちゃんからの好感度LV2になったんですよね。

 本当に、好感度LV2になってますか、これ。


 「てめぇは、生きたいか」


 突然そんな事を問われても、

 問われるまでもないんですが。


 「生きたいわね」


 私は生きたいです。


 「そっか」


 また、環希ちゃんは黙ってしまいました。

 環希ちゃんは、すぐに黙り込みますね。

 困りますよ、そういう所。

 言っても無駄なんでしょうけど。

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