87話 「ゲームクリアの条件はなんなのかしら」


  「小脇に抱えた実椿ちゃんと、主に小羽玖ちゃんがうるさいわ」


 「てめぇ、一旦実椿を離せ」

 「実椿が巻き込まれたらどうするんだよ」


 「それはそうなのよ」

 「でもね、実椿ちゃんを離したくないの」

 「実椿ちゃんを小脇に抱えていたいの」


 【射を歩む者のLVが6になりました】

 

 「ちくしょうが!」

 

 私達がパーティー内でもめてる間も、規生君のプレイヤーキルとレベルアップは止まらないようです。


 「今も、誰かが、プレイヤーが、人間が、射殺されてるってのかよ」

 「誰もこんな事望んじゃいないんだよ」

 「こんなの」

 「こんなのゲームじゃねぇよちくしょう」


 私達は、エタファンでの痛覚や現実世界での死のアナウンスを聞いて、誰もが思っていました。

 このゲームに、クリアはないのかと。

 それは、アナウンスされませんでした。

 それは、恐らくこのエタファンの中のどこにいるプレイヤーでも、同じでしょう。


 「クリア」


 「あぁ?」


 「ゲームクリア」

 「ゲームクリアの条件はなんなのかしら」


 「そんな事、アナウンスされてねぇ」

 「誰も知らねぇよ」

 「誰もが気にしていて、誰もわからねぇ」


 「環希ちゃん」

 「思考を高速化するのよ」


 「はぁぁ?」

 「んなことできるもんなら誰もがやってるつぅの」


 「出来るのよ」

 「だって、これはフルダイブ型VRMMORPGだもの」

 「出来ない事が出来るのよ」


 「てめぇ、まじで言ってんのか」


 「ええ、何せ私達はフルダイブしてるのよ」


 まぁ、私はフルダイブ装置を使ってフルダイブしてるわけではなく、このエタファン世界に転生してるんですけどね。

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