85話  前世の記憶がなくても、服を掴むのはよくないという記憶はある気がする


  「はははは」

 「なんだよこれ」

 「ふざけんなよ」


 環希ちゃんは、私の胸倉を掴む。


 「止まらねぇぞ」

 「てめぇは、どうしてもそうなのかよ」

 「てめぇが上林月恵でもよ」

 「てめぇが違うのは嫌でもわかるぜ」

 「けどよ、やっぱりてめぇはてめぇなんだよ」


 「環希ちゃん」

 

 私は、前世の記憶がなくても、環希ちゃんに伝える事があります。


 「なんだよ」


 「服を掴むのはよくないわ」

 「記憶は残ってないけれど」

 「そんな記憶が残ってる気がするの」


 環希ちゃんが、私の頬に拳を入れる。


 「ちっ」

 「なんなんだよ」

 「なんなんだよてめぇはよ」


 環希ちゃんは、苛立ちを止められない。


 「ひぃぃ」

 「パーティー内での喧嘩よ」


 「ぷるぷる」

 「喧嘩になったら、実椿みたいな幼女はMMORPGの中でも不利なの」

 「そして、実椿はその喧嘩で殴られてる悪党の方の小脇に今も抱えられてるの」

 「巻き込まれるのはごめんなの」


 環希ちゃんは、規生君と同様に弓を装備している。

 まだ、環希ちゃんが弓を射った所を一度も見たことないけれどね。

 取っ組み合いになったようなこのような状況では、遠距離特化ではない私に利があるでしょう。

 たとえ、剣や盾を使わなくても。

 魔法を使わなくても。

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