第78話  「小脇に抱えられて移動するのって、実椿の足で移動するより楽」


   流行りのヒットソングを4人で歌いながら走っていると、少女が見えてきました。


  「少女よ」

 「できれば、配下に加えたいわ」

 「規生君、貴方は相手が攻撃してこない限り」

 「射らないでね」

 「月恵ちゃんとの約束」


 「私とも約束だぜ、規生」


 「約束など、俺には関係ない」


 あ、だめですねこいつ。


 「約束まんまーん、嘘ついたらぽっきんちょー」


 私は、規生君の小指と小指を交じ合わせ、約束の合言葉を言います。


 「約束まんまーん、嘘ついたらぽっきんちょー」

 

 環希ちゃんも、規生君の小指と自分の小指を交じ合わせ、約束の合言葉を言います。


 「約束よ」

 「約束だぜ、規生」


 「うるさい」

 「しつこい」


 「はい、約束成立」

 「約束できてえらいねぇ規生君」


 私は、成人男性の規生君に、えらいえらいしてあげました。


 「えらいえらい」

 「えらいぜ規生」


 たいして可愛くもない少女の環希ちゃんも、だいぶ年もいってる規生君にえらいえらいしあげます。


 「ぷるっ」

 「実椿とも約束なの」


 私の小脇に抱えられたままの実椿ちゃんも、約束を口にします。


 「規生、約束まんまーん、嘘ついたらぽっきんちょー」


 しかし、実椿ちゃんの小指は、規生君に届きません。


 「ぷる。届かないの」


 「小脇に抱えられて移動するのって、実椿の足で移動するより楽」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る